2022年10月

『ゴールデン・ノース・ホテルのブライド』

「ちょっと! アレはなんなの!?」
 朝露も乾かないうちに、一人の女性客がロビーに怒鳴り込んできた。クレームをつけられるのは初めてではないが、あまりの剣幕にたじろいでしまった。
「ど、どうされたんですの?」
 客への対応は給仕のウィドーのほうが上手なのだけれど、彼がロビーに入るのは六時半からだ。カウンターの置き時計をちらと見ると、今六時を回ったところだった。どうにかして私が彼女をなだめなければ……。