ルールが簡単。ユニット数が少ない。プレイ時間が短い。
三拍子揃った入門用の作戦級ウォーゲームです。
ゲームデザイナーはこのゲームを安易な入門用に創り上げていません。その辺りをブログで掘下げて行きたいところです。
まずは両軍とも簡単には勝てません。まあ、同クラスのゲーマーが対戦すればどちらかが必ず勝つのですが。(笑)これが結構考えさせられるのです。
Map(GameBoard)
まずはスエズ運河沿いのゴラン高原を模した臨場感たっぷりのマップをご覧ください。
中央にこの戦いの象徴ともいえるチャイニーズファームが据えられ、西側(左手端)にスエズ運河の青、茶の強いベージュに描かれた砂漠と濃くアクセントが付いた砂丘。
ゴラン高原の荒涼とした砂漠地帯が美麗に纏められています。
ゲームに重大な影響を与える道路が運河沿いに南北に一本、そして東西に交差して二本描かれています。
盤外には戦闘結果表(Combat Result Table,以後は略してCRTと表記)と地形による移動コストを示す表記や地形表。無駄無く機能美で溢れています。贔屓目です。(笑)
このマップ北(上部)から南下してくるエジプト軍をイスラエル軍は迎え撃ち、三つある勝利条件をクリアすれば、イスラエル軍の勝利、それを一つでも阻止することが出来ればエジプト軍の勝ち、となります。
その勝利条件とは、
1.”Matzmad”陣地から6ユニット以上をスエズ運河の西岸に渡河させる。
2.”Matzmad”陣地に”工兵橋ユニット”を設置し。ゲーム終了まで保持する。
3.”Matzmad”陣地から東端までの道路(補給路ですね。)の確保。
上記の三つをゲーム終了時にクリアしていれば、イスラエル軍は勝利です。
*”Matzmad”は、マップ中央、道路西端にある陣地へクス
以下のゲーム解析は、ウォーゲームに馴れたプレイヤーは経験で感じ取れる類のものです。それを敢えて数値(確率)で視える化するのが、狙いです。多少煩雑な感があるかもしれませんが、ご興味のある方は、お付合い下されば幸いです。
Unit’s 両軍の質を比較。
イスラエル兵(色が薄いユニット)は質が高く、エジプト兵(茶褐色のユニット)は質が低く表現されているのが、ユニットの戦力・移動力に現れています。
お互い、自由主義諸国と社会主義諸国から当時の最新兵器の供与を潤沢に受けていたそうです。(ここでは戦車や各種兵器の詳細は述べません。私にあまり兵器の知識がありませんので、悪しからず。)
ゲーム内ではざっくりと数値に置換えてありますので、最新兵器を使用した感、はありませんね。
では、戦闘序列による両軍の質の比較をご覧ください。
*クリックで拡大出来ます
両軍の大隊数(ユニット数)・戦力・移動力を表しています。色分けは初期配置と登場ターンを示しています。3ターンの援軍はイスラエル軍のみ。
ざっと見て、イスラエル軍が戦力・移動力ともに数値が大きいですね。(移動力に関しては後の章で解説)
大隊数は共に同じく22(イスラエル軍にはもう1ユニット存在します。後述)ですが、戦力合計はエジプト軍は60。対してイスラエル78、その戦力差は18。
平均、1大隊につき、1弱の戦力差のアドバンテージです。
もう少し詳細に戦力差を比較しましょう。平均値を割出しましたので、こちらもご覧ください。
*クリックで拡大出来ます。
「攻撃力(合計)」こちらは大隊戦力を増援が来るターン毎に合計した値です。
尚、この表は戦闘による損害値(戦力減少)は考慮してはいません。両軍戦力の積上げ値だけを表示し、増援ターン毎の大隊合計数から平均値・中央値・最頻値を表示しました。
イスラエル軍
4ターンまでの戦力値平均が3.3。5ターンの増援が来ると3.5に上昇しています。
戦力5の装甲大隊数は3(14%)。戦力4の装甲大隊は8(36%)。
戦力3は装甲・機械化歩兵大隊、合わせて9(41%)。戦力2は2(9%)。
エジプト軍
特徴的なのは増援の度に戦力値平均が0.1の微増になる事です。偶々なのでしょうが、デザイナーの意図的な微増かも、と勘繰ってしまいます。
戦力値4の装甲大隊数は5(約23%)戦力値3の機械化歩兵大隊数は6(約27%)
戦力値2の歩兵・機械化歩兵合わせて11大隊(50%)
エジプト軍は半数が最低戦力値の大隊です。デザイナーの意図を感じますね。エジプト軍は終始防御側ですよ、と言われているようなものです。
次章では、損害想定値を各ターン毎に算出し、ゲームの推移を戦力値のみで見てみます。
Across Suez考察〖2〗へ つづく。