【永い後日談のネクロニカ】ワガママ姫様と赤毛の従者【プレイログ】#1

・はじめに・
　こちらは『永い後日談のネクロニカ』のプレイログを整理したもの、の＃1です。
　NC/PL両者私一人なので、多少のぎこちなさはご容赦ください。
　またシステムの都合上、過度な暴力やグロテスクな描写があります。苦手な方は遠慮なくブラウザバックをお願いします。
・画像について・
　今回のキャラクター画像は、自前で用意しました。アナログのデフォルメですが、頑張ったのでよろしくお願いします。

人形設計図

前章

「こんなのいらない」

　物心つく前から、家の中で過ごすことが多かった。
　肌が弱くて、日の強い日は特に外に出られなかった。それに少し動くだけで、心臓がずきずきして息が苦しくなるから、ろくに運動もできない。
　でも、別にそれでかまわない。
　砂埃で服を汚すのはいやだし、草むらを這う芋虫も嫌い。

「こんなのもらっても、どうせ外なんて出ないし。そもそも見た目が気に入らないの」

　薄桃色のフリルがついた可愛い日傘を、あいつに突き返す。
　本当は、一目で気に入った。きっと、好きそうなのを選んでくれたんだろう。分かってる。
　本当に気に入らないのは、こいつなんだ。
　
　燃えるようなルビーの髪、緑深いエメラルドの瞳、鼻の頭にうっすら浮かぶそばかす。

　本当は、一目で気に入った。

　頭では分かっていても、心が受け入れられない。
　だから時々、ひどい言葉でいじめてやりたくなる。

「分かったらさっさと出て行ってよ、この……死に損ないっ」

　思わず口をついて出た言葉は、自分の声とは思えないほど冷たく、彼を突き放す。
　この家で唯一鼓動を止めた──アンデッドの使用人を。

目覚め

「起きて、起きなさい！」

　ヴィクターは乱暴な言葉に首をかしげる。
　瞼はまだ閉じている。

「生きてるの？死んでるの？――どっちでもいいから早く起きてってば！」

　何か棒のようなもので肩の辺りを突かれた。
　ようやく目をしばたかせると、毛足の長い絨毯の上に蹲っている。
　突いてきた方をみれば、天蓋付きの大きなベッドと、そこに座る少女が目に入る。閉じた日傘を剣のように持って、傘の先で突いたんだろう。

「おはよう寝ぼすけさん。主人よりも遅く起きてくるなんて、従者としての自覚が足りないんじゃない？」
「従者？」

　体を起こして訪ねると、少女は胸を張って「そう！」と答えた。

「私が主人である姫で、あなたがその従者。そんなの、私たちの服装を見れば一目瞭然でしょ。――ほら、私は綺麗なドレスを着てるし、あなたは襤褸のシャツとすり切れたベスト。さぁ、従者は従者らしく、朝食を持ってきてくださるー？」
「悪いけど、君の注文には応えられない。僕はここがどこかもわかってないんだ」
「あら、それは奇遇ね。私もよ」

　そこは豪華な屋敷の一室のようだ。
　子供部屋…ないし、十代の少女の部屋だったらしい。照明も割れて、部屋中埃だらけだが、可愛い小物や人形、おしゃれなアンティークなどが飾ってあるのがわかる。

「ところで君の名前は？」
「エリザベート、それがあなたの主人の名前よ。言いたいことは分かるわ、素敵な名前でしょ。うふふ、どうもありがとう」
「はぁ？」
「さぁ、あなたも名乗りなさい」
「……」
「…………えっ、ちょっと！名乗らないの？主人だけに名乗らせるのは不公平よ！」
「…ヴィクター」

―――――――――――――◆未練取得◆―――――――――――――

エリザベート : ヴィクターへの
未練表(8) ＞ 【保護】[発狂:常時密着]あなたが対象と別エリアにいるなら「移動以外の効果を持つマニューバ」を宣言できない。「自身と対象」以外を移動マニューバの対象にできない。
ヴィクター : エリザベートへの
未練表(6) ＞ 【対抗】[発狂:過剰競争]戦闘開始時と終了時に1つずつ、あなたは任意の未練に狂気点を追加で得る。

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　ヴィクターは、埃を払って立ち上がると部屋を出ようとドアへ向かった。
「あらー？何か忘れてない？私をベッドの上に置き去りにするつもり」
「自分で降りられるだろ。それとも、君は僕が手を貸さないと何もできないの？」
「まったく、なってない従者ね。エスコートしてって言ってるの。それぐらい言われなくてもやりなさい。……はい」
　と、彼女は当然のように右手を差し出した。
「僕は別に君を置いていってもいい」
「あー、わかった！危険がないか先に調べに行ってくれるのね！私はそれでもかまわないわ、後でちゃんと迎えに来てくれるのよね！」
　エリザベートがベッドの上で足をばたつかせる。
　板の打ち付けられた窓から、淡い光が差し込んで、舞い上がった埃をきらめかせた。
「……わかった。でも手には触るな、危ないから」
　しぶしぶと、ベッドの側へ戻り左腕を差し出す。
　ヴィクターの両の手には、鋭い刃物が連なり、触れるもの全てを傷つけるようだった。
「あきれた。あなたこの手でどうやってノブを握るつもりだったの？」
「指らしい動きはする」
　手を握るようにすると、対応する刃物がかしゃと動いた。関節はない。
「本気で言ってる？……仕方ないなぁ。仕方ないから、できないことは私が手伝ってあげる。感謝しなさい！」
　彼の腕に手を添えてベッドを降りる。
「別にいらない」
「はらたつ子」
「僕の方が年上だ」

―――――――――――――◆対話判定◆―――――――――――――

エリザベート : NC　対話判定 (NC) ＞ [9] ＞ 9[9] ＞ 成功
ヴィクター : NC＋1　対話判定＋【おとこのこ】 (NC+1) ＞ [1]+1 ＞ 2[2] ＞ 失敗

[ エリザベート ] ヴィクターへの【保護】 : 3 → 2

――――――――――――――――――――――――――――――――――――

　廊下に出ると、どこかから音が聞こえてくることに気がつく。
　それはぶつぶつと途切れながら、屋敷の一階から響いてくる。何かの音楽のようにも聞こえるが……。

カルマ『音楽の発生源にたどり着く』

―――――――――――――◆行動判定◆―――――――――――――

『この音は？』

エリザベート : NC (NC) ＞ [5] ＞ 5[5] ＞ 失敗
ヴィクター : NC (NC) ＞ [10] ＞ 10[10] ＞ 成功

――――――――――――――――――――――――――

「この音はどこから聞こえるの？」
「多分、一階だ。誰かがピアノを弾いてるか…レコード……」
「レコード…」

　その言葉に、カケラにも満たない記憶が引っかかった気がして、口の中で繰り返す。

『これは？…ちょぴん？』
『もー、馬鹿ね。ショパンて読むの。わかってるくせにふざけないでよ』
『ははっ』
　エリザベートの笑い声につられて、彼も笑った。

（あの時…私の隣で笑っていたのは誰だっけ？何でだっけ…？）

「エリザベート？」
「えっ。う、ううん、なんでもない。……ねぇ、あなたちょっと笑ってみせて」
「は？面白くもないのに笑えない」
「それもそうね。でもニコッとぐらいしてくれていんじゃない？主人の私が、笑って見せて、って言ってるのよ」
　ヴィクターは煩わしげに眉間にしわを寄せてから、それでも軽く微笑んで見せた。
「はい、もういい？」
「うん、悪くないわ。私、あなたのこと結構好きよ、ヴィッキー」
「どうも。僕も別に嫌いじゃないよ、エリザ」

―――――――――――――◆対話判定◆―――――――――――――

エリザベート : NC　対話判定 (NC) ＞ [6] ＞ 6[6] ＞ 成功
ヴィクター : NC＋1　対話判定＋【おとこのこ】 (NC+1) ＞ [6]+1 ＞ 7[7] ＞ 成功
[ エリザベート ] ヴィクターへの【保護】 : 2 → 1
[ ヴィクター ] エリザベートへの【対抗】 : 3 → 2

――――――――――――――――――――――――――――――

　廊下は所々が崩れていて、入れる部屋もほとんどなかった。ようやく見つけた階段も、一歩踏み出すごとにひどく軋んで今にも崩れそうだった。
　階段を降りていくと、次第に音楽ははっきりと聞こえるようになり、それがレコードで再生されていることがわかる。ピアノのワルツが、ぷつぷつと音飛びしながら、途切れることなく流れている。

　ひときわ大きな階段を降りると、大きく開けた部屋へたどり着いた。
　磨かれた床、高い天井、ビロードのカーテンが引かれた大きな窓……。
　部屋の中心には、蓄音機がぽつんと一つだけ置かれている。そこから流れる音楽が、この部屋を完成させた。
　ここはダンスホール。もの悲しいショパンのワルツが、華やかなりし時を思い起こさせる。

「…私、ここ知ってる……かも」

　現在の光景と、記憶の中の過去が、二重になって視界に映る。

―――――――――――――◆狂気判定◆―――――――――――――

エリザベートのみ
エリザベート : NC　狂気判定 (NC) ＞ [6] ＞ 6[6] ＞ 成功

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α77【触れた指】
　一度だけこの場所で踊ったことがある。
　ショパンのワルツ19番を。悲しい響きだけど、素敵な曲。
　夜だった。昼は日当たりがよすぎて来られないから。大きな窓はカーテンが開いていて、月明かりが差し込んでいた。
　練習相手なんていないし、じゃあ仕方ないからあなたでいいわよ、なんてわざとつれないことを言った。

　指が触れた。手を握った。

　あの頃のあなたの手も、今と同じように冷たかった。けれど決して私の手を切り裂いたりはしなかったのに……。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――to be continued・・・