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【クトゥルフ神話TRPG】乾雅臣が行く『センテンティアエの誤』【仮想卓ログ】

・はじめに・

 こちらは『クトゥルフ神話TRPG』(通称CoC)の仮想卓ログです。
 ゲームブック形式のKPレスシナリオやソロシナリオを回りたくて作ったキャラクターの軌跡#2となります。
 #1はこちらからどうぞ。
 使用させていただいたシナリオのネタバレを含みます。PLとして通過したい方は観覧をご遠慮ください。
・画像について・
 キャラクターのアイコンはぴくるーのメーカーで作らせて頂きました。

前回からの通過シナリオ
首吊りアパート/荒木荘201号室様・ジャスミン様
 ネタバレに弱い推理メインのシナリオのため、ログ公開は控える。
ガバハウスルール
 発狂しやすさ、面白さを優先しSAN値チェックではファンブルのみを適応し、最大値+1を減少させる、という処理をしています。

名前:乾雅臣 年齢:27
HP:10 MP:17 SAN:73
幸運:85 知識:90
回避…27% 応急手当…80% 鍵開け…6%
聞き耳…45% 精神分析…45% 図書館…45%
目星…45% 運転:乗用車…30% 言いくるめ…50%
信用…20% 説得…30% 医学…86%
オカルト…15% 科学…10% 経理…15%
考古学…6% 心理学…20% 人類学…10%
生物学…20% 地質学…6% 電子工学…6%
天文学…6% 博物学…15% 物理学…6%
法律…10% 薬学…50% 歴史…25%

KP : この辺で一端、KPレスシナリオを挟んでおこうと思う。
雅臣 : 居るだろ、KP
KP : 実際には一人でやってるから、それは言いっこなし、ということで。
 それでは名前と職業をどうぞ。
雅臣 : 乾雅臣、27歳医者。

KP : 蒼井曲玉様制作、『センテンティアエの誤』
はじまりです。

・リプレイ本編・

 たしか自分は家に帰る途中だったはずだ。
 もう日も落ちた暗い道を歩いていたら、急に走ってきた男がバケツの中身を探索者にぶちまけたのだ。

 見覚えのない暗く冷たい空間にいる。
 床や壁、天井はゴツゴツとした石でできており、洞穴の中のように感じるだろう。
 空間の中央に置かれた蝋燭だけが辺りを照らしていた。

雅臣 : 「……ここは?どうして俺はこんな場所に…」

 たしか自分は家に帰る途中だったはずだ。
 もう日も落ちた暗い道を歩いていたら、急に走ってきた男がバケツの中身を探索者にぶちまけたのだ。
 服を濡らして肌に纏わりつく生温かい感触と、吐き気を催すような腐敗臭…糞尿の臭いにもどことなく似ていた…に呆然とする探索者に対し

「これでお前だ!お前だ!」

 と、狂ったように笑いながらバケツを投げ捨て男は走り去る。
 ……記憶はそこで途切れていた。
【SAN値チェック0/1】
【アイデア】

SANC (1D100<=73) > 49 > 成功
アイデア (1D100<=55) > 81 > 失敗

雅臣 : 「ひどい目に遭ったな…」
 ぶちまけられたモノが分からないからな。一応自身の服や身体を確認しておこう。
KP : 怪我などはしていないが着ていた服装は無く、代わりに麻のローブのようなものに着替えさせられている。繊維が太くゴワゴワとしていて着心地は悪い。当然持ち物もなくなっている。
【目星】
雅臣 : おい、俺は眼鏡ユーザーだぞ!?
KP : 眼鏡は側に落ちていたことにしていいよ。

目星  (1D100<=45) > 10 > 成功
 よく見れば自分の右脇腹に異国の文字のようなものが刻まれている。商品コードみたいで薄気味が悪く、擦っても消えない。
【SAN値チェック0/1】

SANC (1D100<=73) > 9 > スペシャル

雅臣 : とにかく、汚れていないならいい。
 だが以前状況はつかめないな。周囲を確認する。
KP : 立ち上がって手を伸ばせば天井の岩に届くほど小さな空間だ。出口のようなものは見当たらず、小窓すらない。……それを自覚するとなんとなく息苦しくなってくるかもしれない。
 一体どうやって自分はこの空間に入れられたのだろう。
【目星】

目星  (1D100<=45) > 41 > 成功

雅臣 : 今回の目星、良いな。
KP : 一箇所の岩に赤黒い文字が書かれている。
 「There is no hope(希望など無い)」
雅臣 : 「……」
 他に調べられるのは…蝋燭か。
KP : 部屋の中央で燃えている蝋燭だ。
 よく見ると一切蝋が垂れている様子がない。もし仮に消そうとしても消えないだろう。
雅臣 : 洞穴の蝋燭といえば、落語でそんなのがあったよな。
 …しかしそんなことを言うと消えたときに大事になりそうだ。
KP : などと考えていると…

 蝋燭の火が消えたのか、室内が完全な闇に落ちた。なにも見えない。

 ……誰か、探索者以外の足音がする。
 微かな少女の笑い声の後、鋭いものが肌の上をなぞりじわじわと痛みが広がる。
 何事かと傷口に手を当てようとすれば、鋭く空気を裂く音と別の箇所への痛みが走った。

「ごめんね、でもこれも約束でしょう?」

雅臣 : 「お、おい!止せ!話せばわかる!何の約束かは知らないが、とにかく俺は状況が全く分かっていないんだ!」

 謝りつつもどこか愉悦の滲んだ少女の声がして、さらに身体へのヒリヒリとした痛みが増える。まるで刃物で薄く切り弄ばれているかのようだった。
 鉄臭いぬるりとした体液がダラダラと肌を流れ落ちる。
【STR-1d3】

雅臣 : は?
 1d3 (1D3) > 1
「分かった!俺の話は聞かなくて良い!せめて質問に応えてくれ!」
KP : 「なぁに?」
雅臣 : 「お前は一体何者なんだ?何故こんなことをしてる?」
KP : 「私はマーテル。境界を超えた契約の対価を取り立てる者の一人。数多のネズミ達の名において、君はここから逃げられない」
 「死者を呼び戻す代償として君の肉体を譲り受けたわ」
雅臣 : 「譲り受けた?誰から??」
KP : それに対する回答は無い。
雅臣 : 「……じゃあ質問を変える。ここは一体どこなんだ?」
KP : 「ここは私達の園、どこへも繋がらず全てに繋がる場所」

問答の間にも、予測のできない間隔で襲い来る痛みに嬲られ続ける。その本能的な恐怖心は探索者を蝕んでいくだろう。
【SAN値チェック0/1d3】

SANC (1D100<=73) > 73 > 成功

雅臣 : あぶない…。

「後でまた逢いましょう」
 少女の声がコロコロと笑い、消える頃には探索者は疲弊しきり冷たい地面に倒れ伏して動くこともできなかった。

 ジジ…と蝋燭の燃える音と探索者のうめき声が聞こえる。
 だが、探索者の視界は相変わらず闇に包まれたままだ。

雅臣 : STRが減ったのが気になる。
 身体が無事か確認させてもらう。
KP : 自分の身体に触れれば、ドロリとした液体が手の平に付く。見えなくても血だということはわかるだろう。
 腕や足を幾重にも刃物で切り裂かれたらしい。
 下手に動くと乾いた体液が麻の繊維に引っかかり傷口を刺激してくる。
雅臣 : 「……っ」
 「…何故、見えないんだ?」
 周囲が暗いままなのか、物理的に視覚を奪われたのか…。少し周囲の様子も窺ってみよう。

 耳を澄ませば、微かに風の音が聞こえる。
 ……いや、風ではなく、これは先程の少女の囁き声だ。
 誰かと話しているのだろうか?それにしては聞こえる話し声は彼女のものだけだ。

「なんだか奇妙な感じがするわ。前に会った時と人間の形が違うわ」
「そうかも知れない……けれど、そんな事が人間にできて?」
「もしもそうならば……」

雅臣 : やつら、多分人違いをしてるな。あの男が俺に何かをぶちまけることで、身代わり役を被せられたのかもしれない。

 時間の経過などわからない。
 一眠りか二眠りほどした頃に、再び出入り口のないこの空間に少女の足音が増えた。

「ごめんね、それでも決まりなの」

 少女の声が聞こえた瞬間、探索者の足に耐え難い激痛が走った。一体何をされたというのか。
 炭火に水を掛けたかのような音が探索者の足から立ち昇り、肉や筋が骨から剥がれて縮み萎んでいく。火が点いたような、なにかの装置でぎりぎりと締め付けられているような。
 あまりの苦痛に両腕が地面を引っ掻き、大きく仰け反り震える。
【CON-3】
【SAN値チェック0/1d3】

SANC (1D100<=73) > 73 > 成功

雅臣 : 「ぁ”あ”っ!!……まっ、待て待て!何かの、間違いだ!俺はこんなっ……」
KP : 痛みに喘ぎ咳き込む探索者の隣で、少女は「うーん……」と悩んだ声を出す。
 「やっぱり君、あの人とは違う人間?」
雅臣 : 「違う違う!お前が言う『あの人』が誰かは知らないが、絶対に違う人だ!」

「あの人……人間を生き返らせるために屍の主と契約したの」
「その代わりに自分は地獄に堕ちても構わない、だとか言っていたらしいのだけど」
「君、代わりに堕とされちゃったのかしら?」

 少女の声音には同情したような響きもあったが、だからといってこの拷問を止める気はなさそうだ。

「ごめんね、それでも誰かからは取り立てないといけないの」
「君はここで永遠に苦しむしかないね」

 バキバキと探索者の足から人間の体とは思えないような音が鳴る。乾いた木切れを束ねて折ればこういう音も出るかもしれない。乾き尖った骨の先端が股の肉に刺さり潰す。果ての見えない痛みは容易く探索者の意識を飛ばした。

――――――――――――――――――――――

 どこかの病院を夢に見る。
 病床の白いベットに対してはあまりに小さく、頼りなく見える少年。
 彼には何本も点滴の管が繋がっており、傍らでは祈るように手を組んで頭を下げている男性と、諦めた様子の看護師がいた。

 ……と、少年が微かに身動ぎする。
 男性は弾かれたように顔をあげ、声は聞こえないがおそらく何度も少年の名を呼んでいるのだろう。
 少年がゆっくりと目を開き、男性を見上げた。看護師が足早に医師を呼びに行く。
 ……少年の、息子の回復に涙を流している男性こそ、探索者にバケツの中身をぶち撒けた男、そのひとだった。
【MP-1d3】

1d3 (1D3) > 3 MP : 17 → 14

雅臣 : くそっ!もっとしょうも無い事情であれよ!恨みきれなくなるだろ!

 探索者が目を覚ます。
 相変わらず目は使い物にならないようで闇だけが広がっているが、元々暗い空間だ、そこまで違和感はなかった。
 暗いせいか自身の肉体の痛覚に敏感になってしまう。全身がズキズキと脈動に合わせて痛み、足は今なお少しでも動かすと、すり鉢で潰され続けているような不愉快な鈍痛を感じる。

 ふと、傍らに誰かがいるようだと分かる。
 声を掛けようと口を開いたとき、今度は自分の声さえも出ないことに気づいた。口も舌も動くが、喉が動かず、呼気は音を成さない。
【SAN値チェック0/1】

SANC (1D100<=73) > 75 > 失敗 SAN : 73 → 72

(私はマーテル。境界を超えた契約の対価を取り立てる者の一人)

 声ではない。頭の中に言葉を注がれるような奇妙な会話だ。
 その言葉は先程の少女よりも落ち着いていて、幾分か大人の女性のようだった。傍らにいる何者かが語りかけているらしい。

(数多の鳥達の名において、貴方はここから逃げられない)

 どことなく頭がフラフラする。
 なにかこの女性に質問しようにも、やはり発声の仕方を忘れたかのように喉は動いてくれなかった。

(どうやら貴方は人違いでここに来てしまったのだと聞きました)
(せっかくです、貴方に助かるチャンスを差し上げましょう)

雅臣 : 助かるチャンス!?
 そもそも人違いで巻き込まれたんだから、すっと帰してくれ!

 探索者がなにかと首を傾げれば彼女は続ける。

(誰かに運命を押し付ければ、貴方をこの空間から戻すことができます)
(もう一度、あの夢の中へと貴方を送りますから手掛かりを探して下さい)

(私ができるのはここまでです。本来ならばこんなことはないのですから)
(……ですが、どうか上手くいくことを願っています)

 最後に付け足されたその言葉には、どことなく人間らしい温もりを感じるかもしれない。
 その言葉が終わるかどうかという所で、探索者の意識が眠りに落ちていく。
【MP-1d3】

1d3 (1D3) > 3 MP : 14 → 11

雅臣 : 運命を押しつける、か……。嫌な言葉だ。

――――――――――――――――――――――

 探索者は病院にいる。
 その姿は幽霊のように透き通っており、わずかに床から浮いているようだった。
 他の人物に気づかれる様子もない……夢の中だろうか。

 目の前にはあの男がおり、これから帰るつもりのようだ。
 笑顔で病室の息子と別れ、出口へ向かっていく。頻りに

「これで祥太は助かった、間違ったことなんてしてないんだ…」

と呟いているようだ。

雅臣 : ……うーん…。心苦しくはあるんだよなぁ……。

 タクシーに乗り帰宅する男を追って、辿り着いたのは平凡な一軒家だ。
 探索者は自分が彼に襲われた場所とも近いと分かるだろう。
 室内は酷く荒れており、家具の退かされた床には奇怪な禍々しい魔法陣が描かれている。
 男性はため息を付いて家の掃除を始めた。

雅臣 : ……。
 とりあえず、調べられるモノを上から行こう。

・男
 探索者が見ていると男は携帯を取り出し誰かに連絡を始める。
「……もしもし、アミ?少しいいかな」
「分かってるよ、そうじゃないんだ。祥太が目を覚ましたんだよ……本当だって!お医者様も検査の後は退院できるかもって……」
「だから一度で良い、祥太に顔見せてやってくれよ。母親だろ」
「うん……うん」
「……分かった。それじゃ」
【心理学】

雅臣 : 無理だろうが、振ってみる。
 心理学 (1D100<=20) > 48 > 失敗

・魔方陣
 不気味な魔法陣だ。なにかの動物の血を使って描かれたらしく、赤黒くへばり付いていて掃除が大変そうだ。
【オカルト】

オカルト (1D100<=15) > 79 > 失敗

・机
 よくわからない乾いた植物や鉱石、なにかの骨や内臓、コップ一杯の生臭い液体、手鏡、汚れた紙片が置いてある。なにかの本をさらに翻訳したもののようで、所々に書き足しや文章が前後している部分がある。

「古き死霊秘法(古の書物か?)に記されていた死の砂漠……絶えず忌まわしい咆哮の響く(呪われた?)地の果てに。人間の誰もが忘れ去った言語の彫り遺された(判読不明3フレーズ)的廃墟の塁壁(砦?)の奥に。石棺に遺棄された呪われし文字板をここに訳し書き記す。この筆に呪いあれ。読むものに呪いあれ。これは人道を越えた(人間ならざる・狂気に取り憑かれた)行いと知り、尚も実行するならば。納骨堂の王の規則に触れ、死の臭気と永劫の冷気の地獄にその全ては囚われ苦しみ続けるだろう」

雅臣 : 何らかの呪術により、息子を生き返らせたが、その代償を払う覚悟が無かったと見える。
 しかしそれを責めるのも、なんだか心が狭いような気がしてしまうし……。
KP : あれだけのことをされて、他人の事情をおもんばかって同情するなんて、雅臣せんせは底なしの優しさを持ってるのかな。
雅臣 : 馬鹿いえ!どんな事情があれ絶対許さねぇからな!
 だが、その気持ちは分からなくもない。

・本棚
 魔術やオカルト、宗教などの胡散臭い本が並んでいる本棚だ。
 探索者が本を取り出そうと手を伸ばせば、本が微かに動く。頑張れば本を落とせるかもしれない。
【POW×5】

POW×5 (1D100<=85) > 23 > 成功

 その本はぐらりと本棚から落ちて音を立て開き癖の付いているページが開かれた。いくつか呪文が書かれている部分のようだ。

「罪の移動
自分以外の存在を身代わりにしあらゆる危機から身を守る術。
身代わりの対象は小さなお守りから別の生きた人間まで、移したい危機の大きさによって異なる。
使う際には1d4のMP消費が必要であり、また、危機の発生する原因が生じた時間から3分(15ラウンド)以内でなければならない。
術者は危機の原因となる物や要素を身代わりの対象に渡し、自分よりも深い接続を結ばせる。
これにより異界の神その他外宇宙の存在と結んだ契約の代価をも移すことが可能だが、その場合呪文発動後に直ちに術者とそれらの存在との繋がりを一切断たなければ見つかる恐れがある」

探索者がそこまで読んだ所で、怯えた表情の男がやって来て震える手で本を本棚へと戻す。
その後警戒するように周囲を見回し再び逃げるように部屋を出ていく。
【アイデア】

雅臣 : 今、人が読んでるでしょうが!
 アイデア (1D100<=55) > 1 > 決定的成功/スペシャル
KP : 成功情報…時間が経ち男が魔法陣を完全に掃除してしまうと関与できなくなるのではないか?【★を獲得する】

★ : 0 → 1 クリチケ : 0 → 1

 探索者はポルターガイストとして机の上のものを床にばら撒くことができる。効果があるかは分からないが、やらないよりは時間稼ぎになるかもしれない。

雅臣 : もうこうなったらやってやるさ!

 ガラガラ、ベチャベチャと大きな音が鳴り、駆けつけた男はその有り様を見て青ざめた顔で頭を抱えて蹲った。呟くように謝罪を繰り返す声が聞こえたのを最後に意識が途切れる。

――――――――――――――――――――――

 暗く冷たい石の小部屋の中だ。
 肌に触れる岩の感触や吸い込む空気の冷たさでそれと分かる。
 まだ全身は痛むが、足はもはや腐りきったのか感覚がない。立とうとしても上手く力が入らずしゃがみ込んでしまう。
 煙の匂いが微かにすることから、視界が真っ暗でもあの蝋燭の火は灯っているのだろう。

雅臣 : この様子じゃ、やっぱり目は潰れてるんだろうな。

 ……なにか違和感がある。
 音だ。
 ずっと聞こえていた火の燃える音が聞こえない。
 試しに手を叩いてみるなら、それさえ音を発しない。目と口に続いて耳までおかしくなってしまったようだった。

 その時不意に探索者のローブが持ち上げられ、なにか枝のようなものに右脇腹をなぞられる。得体のしれない不安に思わず飛び退き、背が岩壁に当たった。

雅臣 : うわっ、今度はなんだ!?やめろ!セクハラで訴えるぞ!

 枝のような何かがそっと探索者の手を取り、落ち着けるように撫でる。
 ……これは誰かの手だ。
 歳を取り、皺が多くある事がわかる。老人だろうか?

 その手はゆっくりと探索者の手の平に文字を書いていく。

『私はマーテル。境界を超えた契約の対価を取り立てる者の一人』
『数多の蛇達の名において、お前はここから逃げられない』

 慣れない方法で理解に時間がかかるかも知れないが、老人……おそらく老婆は指を続ける。

『話は聞いているよ。お前はどうするんだい?』
『このまま身代わりになり続けるのか。それともあいつに運命を押し付けるのか』
『このままでいいなら、頷けばいい。押し付けたいなら首を振ればいい』

雅臣 : ……。
 くっ……最初からあの男が自分の運命を受け入れていれば、こんな…。
 ……長く熟考したあと、仕方なく首を振ろう。
KP : 雅臣せんせって、掃除当番とか押しつけられるタイプだったでしょ。
雅臣 : やかましい!

 探索者が首を振り、ここから出たいという意思を示せば老婆は
『分かった。ならば手を貸そう』

 空気が少し動いた気がする。老婆以外にも誰かが来たのだろうか。

 次の瞬間、なにか小さな生き物が身体を駆け上り顔面に張り付く。
 振り払おうにも全身がピクリとも動かない。
 ネズミの鳴き声が聞こえる。

 両目に激痛が走った。
 その小さな生き物が探索者の眼球に歯を立てて破いたのだ。
 ぐしょぐしょとした液体が顔を汚していく。これが涙なのか血なのかすらわからない。
 眼球を食い破り、代わりに眼窩にその小さな身を潜り込ませてくる。
 悲鳴をあげようにも喉はなんの音も発さなかった。
 ネズミに両眼を喰われた探索者は
【SAN値チェック1/1d6】
【一時や不定で発狂した場合、内容は「永遠に拷問され続けることへの恐怖心」になる。技能のマイナスは無いがPOW−1】

SANC (1D100<=72) > 45 > 成功 SAN : 72 → 71

 痛みにえづいていると、その開けた口の中にもなにか毛羽立った大きなものが無理矢理入り込んでくる。
 口内でそれはバタバタと暴れ、咳き込むことさえ許してくれない。口を閉じようにも顎が外れたのか自由が効かない。

 その生き物……鳥だろうか、鳥は探索者の体内のさらに奥、喉へと侵入していく。
 気道を塞がれて呼吸がうまくできず、胸の奥が重く痛くなる。
 開いたままの口からボタボタと唾液が垂れ、おそらく流しているだろう血と涙に混ざった。
 鳥に気道を塞がれた探索者は
【SAN値チェック1/1d6】
【一時や不定で発狂した場合、内容は「永遠に拷問され続けることへの恐怖心」になる。技能のマイナスは無いがPOW−1】

SANC (1D100<=71) > 31 > 成功 SAN : 71 → 70

 激痛と呼吸困難で思考がグラグラする。
 どうして未だに気絶していないのか不思議なほどだった。

 こんな苦しみの中でも、感覚を奪われて敏感になっている肌はシュルシュルと冷たいものが腕を這い上がって来るのを感じ取る。
 次は何だと言うんだ。
 探索者の左耳にチロチロと何かが当たる。もうなにも考えたくなかったが理解するしかない。
 蛇が左耳を覗き込んでいる。

 酸素不足からかゴボゴボと胸が泡立つ感じがして刺されたような痛みが走る。
 探索者がカクンと姿勢を崩すと、それを合図としたように蛇が耳の中へとその冷たい身体をくねらせて侵入した。ズキン、と大きな傷みの後もうねうね、ぐねぐねと蛇は身をのたくっている。
 このまま脳まで行く気なのだろうか、なんてどこか他人事のように思うかもしれない。
 蛇に鼓膜を破られた探索者は
【SAN値チェック1/1d6】
【一時や不定で発狂した場合、内容は「永遠に拷問され続けることへの恐怖心」になる。技能のマイナスは無いがPOW−1】

SANC (1D100<=70) > 43 > 成功 SAN : 70 → 69

 ぐちゃぐちゃ、ずきずきと頭部を蹂躙され、意識が朦朧として現実と昏睡の間を揺らぎ始めた頃に
 突然プツンと糸が切れる感覚がしてなにも考えずに済む眠りの中に落ちた。

雅臣 : ……おわった、のか? 何が、おきた??

――――――――――――――――――――――

 探索者は薄暗い路地裏で目を覚ます。
 空は橙色に染まっている、夕方だろうか。
 何があったのかまるで思い出せないが、なんとなく頭が重い。

 服装……当然ながらいつもの自分の服だ…のポケットに何かが入っている。
 一通の手紙と3つの口紅が入っていた。
 手紙を開こうとするとなぜだか酷く嫌な予感がする。嫌なことを思い出しそうな……

雅臣 : 何故ここまで来て選択を迫るんだ。
 ……読む。

 探索者が意を決して手紙を開く。

「時間には限りがある。
昼の世界を照らす星が落ちるまでの間に相手の身体に口紅を残して。
口紅はどれでも大丈夫、好きなものを選んで。

君の視界は私のネズミたちが照らし
貴方の声は私の鳥が歌い
お前の聴覚は私の蛇が代わりに伝えてくれる。

もし暗い夢の入口に追いつかれたなら
あなたが相手に印を残せなかったら
また会いましょう、次は無い」

 手紙を読むと探索者は今までのことを全て思い出した。それと同時に、自分の両眼、喉、両耳に不快な違和感を感じる。
【SAN値チェック0/1d3】
【不定で発狂した場合、内容は「永遠に拷問され続けることへの恐怖心」になる。技能のマイナスは無いがPOW−1】

SANC (1D100<=69) > 34 > 成功

雅臣 : 嫌な予感がするんだけど。あえて、どうなってるかは、確認しないでおく。
KP : 探索者は【目星】【ナビゲート+20】または【追跡+20】であの男の家を探すことができる。
 この判定はどれか1回のみ行える。
 ★がある場合は3回行える。
雅臣 : さっきのクリティカルで、成功にしてくれないか?
KP : いいよ。

 探索者は夕暮れの街を歩く。誰かとすれ違うことはなかったが、風に乗って街のにぎやかさを感じる。
やがて、前に夢で見たような目当ての家へ辿り着いた。表札には「銛下(もりした)」と書かれている。
扉に鍵は掛かっていないようだった。

雅臣 : 「何で俺の手でこんなこと…気が重い……」
 逃がす気があるなら、自動でやってくれよ。

 探索者が玄関の扉を開いた音に気が付いたのか、部屋の奥から小さな悲鳴が聞こえる。
 床の魔法陣やその他魔術的な道具たちはどれも片付けられており、本棚の本にも全てブックカバーが掛けられている。誰か客人でも入れるのだろうか?

 部屋の隅ではあの男が、護身用なのか包丁を持ったまま身を縮こまらせて震えており、探索者を見ると「化け物」と呻いた。
 机上に置かれていた手鏡に探索者が自分の姿を映せば、両目の穴からネズミが顔を出し、口からは鳥が、耳からは蛇がはみ出している今の姿が映る。なるほど、化け物かもしれない。

雅臣 : これにSANチェックが入らないのは何かの間違いじゃないのか?
KP : 1/1d3をふらせてあげよう。

SANC (1D100<=69) > 84 > 失敗 1d3 (1D3) > 3 SAN : 69 → 66

「ゆ、許してくれ! どうしても俺は息子を助けたかったんだ……」
「だから…だからだから色々さが、調べて、それでやっと見つけて」

「そしたら」
 自分の命が惜しくなった。

「また元気な祥太に会えると思ったら、一緒に生きられると思ったら……」

「お、お前には悪いと思ってるよ、でも仕方なかったんだ! ……う、運が悪かったんだって」
「なぁ、分かるだろ……? ここまで俺がどんだけ苦労したか……!」

 初めは罪悪感で俯いていた男は、やがて同情を誘うように請い、開き直ったのかふてぶてしい態度になった。
 ……この男も恐怖で混乱しているのだろう、目の焦点はあっていない。

雅臣 : 「わかってる、わかってるよ。だけど、やっぱり代償は自分で支払うべきだった。……その覚悟が無いなら、こんなモノに手を出すべきじゃ無かったんだ。お前も本心ではそう思ってるんだろ。――…運が良ければ、来世で会おうぜ」

・口紅で印をつける
口紅は
 ネズミの模様の付いた黒色
 鳥の模様の付いた赤色
 蛇の模様の付いた紫色
の3色がある。どれを使ってもいいらしい。

雅臣 : そうだな……紫にするか。

 探索者がその男の肌に口紅を走らせると

「な、なにをする!?」

と男は慌てて口紅を取ろうと擦る。だが、取れない。
窓の外がだんだん暗くなってきた。
なにかを察した男が「助けてくれ」と口を動かす。
だが、探索者がそれに対して反応するより先に男はびくりと身体を硬直させる。

雅臣 : 「婆さんによろしくな」

 その時、玄関の扉が開く音がして一人の女性が家に入ってきた。

「……ちょっと、呼ばれたから来たのに…え?」

 女性は見覚えのない探索者の姿に怪訝な顔をし……やがてその異形な顔に気がついて悲鳴を上げる。

「な、何!?どういうことなのよ!なんで化け物が……」

 見知った男の方へと駆け寄った女性の腹部には深々と男の包丁が刺さっていた。

「ふ、へへ……あはははぁ!」

 呆然とする女性から男は包丁を引き抜くと、完全に正気をなくした笑顔のまま何度も何度も女性の身体に振り下ろしていた。
【SAN値チェック1/1d3】

 女性の悲鳴に紛れて蛇が嗤う。頭の中にまとわり付くような感覚がある。

「少し心を弄っただけでこの始末。だが後でちゃんと正気に戻してあげようねぇ」
「……確かに、代わりにコイツをいただいたよ。安心しとくれ、お前のことは悪いようにはしないさ」

 探索者は再び意識を失った。
【無かった場合は○を獲得する。】

SANC (1D100<=66) > 57 > 成功 SAN : 66 → 65
★〇 : 1 → 2

 探索者は自室のベッドで目を覚ました。
 窓から明るい朝日が差し込んでいる。
【探索者のステータスを元に戻す】

雅臣 : 一番気になるのは、顔が元に戻っているかどうかだな。
 ただでさえAPPが低くて人相が悪いのに、あんな化け物みたいなままだったら困る。
KP : 【探索者のSAN値を−5する】
 自分の顔を確認するのであれば、そこにはいつもと変わりない探索者の顔が映っている。
 全身を確認した場合もあの空間で付けられただろう痕跡や傷跡は全く残っていなかった。

「なぜだか、その事が酷く残念であると感じた」
「あの美しき女神達から戴いたものが全てこの肌の上に残っていればよかったのに、と」

 ……何故だろう、酷く頭が痛い。自分のものじゃない思考がぐるぐると渦巻いている気がする。

「もう一度だけでもあの女神達にお会いしたい。例え苦痛の中でも彼女たちに与えられるならこれほど甘美なものはない」

 ただ洗面所に来るだけでも辛いほどに頭がクラクラする。今日一日は大人しく寝ていたほうがいいかもしれない。

SAN : 65 → 60

生還報酬 SAN値+1d10
地獄から逃れた SAN値+1d6
後遺症【蛇の囁き】
 探索者は老婆にこっそり洗脳され、潜在的に「嘆きの聖母たち(マレモンP.195)」の信者になってしまう。
 クトゥルフ神話技能に+10。

生還報酬 (1D10) > 2
地獄から逃れた (1D6) > 5
[ 雅臣 ] SAN : 60 → 62 → 67

雅臣 : やっちまったかもしれん。
 今回のシナリオ、結構好きだったな。『世にも奇妙な』とか『笑ウせぇるすまん』みたいな雰囲気があった。
 しかし、そろそろマレモン買うべきかな。……潜在的信者になってしまったし。
KP : ようやく常人並のSANになってきたね。
 今回も成長ロールしようか。クリファンした技能、ピックアップしてね。
雅臣 : アイデア、だけ、だな……。
KP : じゃあまた技能は成長ならずか。残念でした。
 以上を持って、
 蒼井曲玉様制作・KPレスシナリオ
センテンティアエの誤
 をお終いとします。お疲れ様でした。

・おわりに・

キャラクターアイコン……立ち絵風男子メーカー
使用シナリオ……蒼井曲玉様制作KPレスシナリオ『センテンティアエの誤

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