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【キズナバレット】「キリング・ナイト」【仮想卓ログ】#4

「…なんだよ?」
 湯気を上げるラーメンをすくって、ふーふー、と息を吹く華音が、見られていることに気がついて顔を上げた。
 佐伯は、ふっと笑って応える。
「美味しそうだね」
 声が平坦にならないように注意する。
「あげないぞ! 一口もダメだからな!」
「ふふっ……」
 かつて、一人きりの食卓で感じた味気なさを思い出す。あの感覚を冷とするなら、これは暖だろうか?
 あの時の自分は、何も恐れていなかった。一人きりで過ごす時間も、静寂も、不理解も――。
 だが、あるとき気がついてしまった。自分はただ知らなかっただけで、胸中の獣は共感や理解に飢えている。ぬくもりを欲している、ということに。
 この温みを知らなければ、あの冷たい孤独を恐ろしく感じることも無かっただろう。

 思い出していたのは、昨日華音とラーメンを食べた時のことだった。
 広場の石畳に、赤と青のマーブル模様が走る。
 どんなにひどい傷を負っても、佐伯に痛みは無かった。リベルを投与してから、感覚が鈍くなったのだ。もともと、共感能力に乏しい自分のこと。他者の痛みを理解することすら難しくなった今、何を躊躇する必要があるだろう。
(…焼き肉か。財布の中身を確認しなかったな)
 リベルの活性化は、彼の心を蝕んだ。

・はじめに・

 こちらは、『キズナバレット』の仮想卓ログ#4です。#1は こちらからどうぞ。
 全部オレ状態なので、多少のぎこちなさはご容赦ください。
 基本ルールブックに掲載されているシナリオ「キリング・ナイト」を改変しております。

・前回のあらすじ・

 ついに戦闘開始!
 アタシ達は、仲が良いだけのバレットじゃない。そうだろ、相棒!

ハウンド
名前:世良華音 年齢:享年16歳
ネガイ:復讐(表)/善行(裏)
耐久値:33 作戦力:6
キズナ:
 【ピアノ】母が教えてくれた ←ヒビワレ
 【自宅】帰れないからこそ帰りたい
 【焼き肉】一緒に食べる約束した ←NEW!
キズアト:《善舞器官》
ヒトガラ:
 過去:小さな希望 遭遇:帰宅途中
 外見の特徴:おでこ ケージ:お洒落
 好きなもの:歌 嫌いなもの:音楽鑑賞
 得意なこと:ピアノ
 苦手なこと:騒がしい場所での会話
 喪失:聴力、ためらい
 リミッターの影響:不安定
 決意:戦う 所属:SID おもな武器:小太刀
ペアリングマーカー:
 位置:背中…興味 色:緑…安らぎ

オーナー
名前:佐伯蒼太 年齢:26歳
ネガイ:善行(表)/究明(裏)
耐久値:21 作戦力:11
キズナ:
 【菊地隼斗】親友、”人間”のお手本。今は居ない。
 【一人の食卓】過去に残る原風景。
 【世良華音】華音が居ればどうにかなる ←NEW!
ヒトガラ:
 過去:失踪 経緯:好奇心
 外見の特徴:張り付いた笑顔
 住居:同居
 好きなもの:水煙草 嫌いなもの:一人の食事
 得意なこと:知恵働き
 苦手なこと:本音で話す
 喪失:痛覚 ペアリングの副作用:依存症:煙草
 使命:問い 所属:SID おもな武器:グロック19
ペアリングマーカー:
 位置:首…執着 色:青…信頼

ラウンド2

佐伯 蒼太 : ここで[出力過多]を宣言。励起値の前借りをさせて貰う!
 ヒビを入れるのは、『一人の食卓』
 この4点を目一杯つかって、〈機動射撃〉を宣言 励起値 : 4 → 0 攻撃 2DM > [2,4] > 4
 さっき、削り損ねたスタック分の生命ダイスを破壊、その後スイッチして後衛に戻る。
[ 芥ハジメ ] 生命値 : 3 → 1
 ・生命ダイス・
  5

▽追加行動
芥ハジメ : 〈壊体連撃〉
 追加行動/単体/制限なし
 【生命値】が[PC人数]点以上減少している場合に使用可能。対象に[2D]点のダメージを与える。対象:佐伯
 2d6 (2D6) > 6[5,1] > 6
[ 佐伯 蒼太 ] 耐久値 : 12 → 6

 佐伯が引き金を引くのと、芥ハジメがナイフを投げ放つのは同時だった。ナイフと弾丸は互いの中間で火花を散らす。
 弾丸は芥の眉間に、ナイフは佐伯の肩口に深々と刺さった。しかし反動でよろめきはしたが、痛みに呻くことはなかった。

ラウンドの終了
励起値の調整・分配
[ 佐伯 蒼太 ] 励起値 : 0 → 3 → 4
[ 世良 華音 ] 励起値 : 0 → 3→ 5

ラウンド3

▽作戦判定
[ 佐伯 蒼太 ] 励起値 : 4 → 3
1DM > [4] > 4+11

▽エネミーアクション
芥ハジメ : 〈銀刃の一閃〉
 攻撃/単体(アタックPCのみ)/制限なし
 対象に[3D]点のダメージを与える。PCが[作戦判定]に失敗している場合、与えるダメージを[5D]に変更する。[アタックPC]のみ対象にできる。
 3d6 (3D6) > 9[4,2,3] > 9
世良 華音 : 〈遮蔽に入る〉宣言 (2D6) > 2[1,1] > 2  励起値 : 5 → 2
佐伯 蒼太 : 〈警告する〉宣言 ダメージ軽減 【励起値】1 (1D6) > 4 励起値 : 3 → 2
[ 世良 華音 ] 耐久値 : 11 → 8

▽PCアクション
世良 華音 : 〈ダブルタップ〉宣言 2DM > [2,3] > 3 励起値 : 2 → 0
佐伯 蒼太 : 〈追い撃ち〉宣言 対象の攻撃威力+2 励起値 : 2 → 0
[ 芥ハジメ ] 生命値 : 1 → 0

 華音の一撃により、致命傷を与えられた芥ハジメは、最後の力を振り絞ってその背中にナイフを突き立てようとしたが、それさえグロック19の弾丸に弾き飛ばされた。
 彼の指先はすでに崩壊が始まっていた。銀色に変色し、灰とも砂とも付かぬ塵と化している。
「そんな、馬鹿な…お、俺は選ばれた……!選ばれたんだ…テンシ、様に………――」

「……終わった」
「目標の抹消、完了だね。よく出来ました。軽く手当して、焼き肉でも食べて帰ろうか?」
 キセキ使いが塵となって消えるのを見届け、華音の背中に声をかける。
「は? 焼き肉? …何で焼き肉?」
 何でも無い顔で振り返った華音は、頭上に「?」を浮かべて首をかしげた。
「食べたいなら、行っても良いけど。佐伯、焼き肉すきだったの?」
「あぁ、そうか――…」
 佐伯蒼太は、何故自分がこんなにショックを受けているのか、さっぱり解らなかった。
 ハウンドは、リリースの度にリベルの影響を強く受ける。思い出せないことや、認識できない物が増えていく。
 理解できていたはずだ。それなのに、心臓に鉛を押し込まれたように重い。
 自分の呼吸が浅くなっているのに気づき、落ち着くためにポケットからゴーテックXを取り出す。
「…何でも無いよ。ちょっと遅いけど、晩ご飯食べて帰ろう」
「うん」

 二人が守ったコンサートホールでは、師走の代名詞とも言える歓喜の歌が、今まさに歌われていた。

 そうだ、地上にただ一人だけでも
 心を分かち合う魂があると言える者も歓呼せよ
 そしてそれがどうしてもできなかった者は
 この輪から泣く泣く立ち去るがよい

[終幕フェイズ]

世良 華音
▽キズナ
 『ピアノ』ヒビワレ
 『自宅』
 『焼き肉』ヒビワレ ←NEW!

佐伯 蒼太
▽キズナ
 『菊地隼斗』
 『一人の食卓』ヒビ ←NEW!
 『世良華音』

 202X年、12月31日。東京都霞ヶ関にある警察庁。
 庁舎の地下20階には、警察組織・SIDの本部が存在する。
 華音の隣に立っている佐伯は、相変わらず何を考えているのか解らない微笑を湛えていた。
 二人の目の前には、SIDの部長である織川楓が報告書をチェックしている。

「今回の件に関する報告は以上になります」
「なるほど、了解した。――…改めて、二人ともご苦労だったな」
「バレットに正月休みは無い、とはいえもう今日ばかりはゆっくり過ごしたいですね」
 佐伯が、はは、と笑ってみせる。
 華音は手持ち無沙汰で、指を組んだり開いたりしていた。
「……」
 華音の傷はもうすっかり治っていた。これもリベルの影響だろう。佐伯はどうかわからないが、ハウンドと同等の回復スピードとは行かないだろう。
「じゃあ、僕たちはこれで失礼します。部長殿も、良いお年を」
「佐伯、お前は少し残れ。例の実験について、話がある」
 踵を返しかけた佐伯を、織川部長が呼び止める。
 ”例の実験”?
 佐伯はオーナーとなる以前、SIDの研究機関に居たと聞いている。その絡みだろうか。首をかしげながら、華音も部屋に残ろうとしたが、佐伯の手にやんわりと止められる。
「ん…? なんだよ」
「華音は、先に駐車場へ戻っててくれない?」
「なんで」
「ハウンドには聞かせずらい話」
 元々、”ハウンド”の技術自体、人道的とは言い難い代物だ。たしかに”聞かせづらい話”というのも、あるのかもしれない。
「わ、わかったよ……」
 華音は釈然としない思いで頷き、一人で部屋を出た。

――――――――――――――――――――――――――

「…別に、彼女に聞かせても良かったんじゃないか?」
「僕が嫌なんです。…あまり相棒に心配をかけたくないし」
 織川の言葉に、佐伯が首を振る。
 執務室には二人だけが残った。
「それでお前の調子はどうなんだ?」
「それはもう、綺麗に元通りです」
 佐伯は笑って肩を回した。あれだけ傷ついたのにもかかわらず、たった二日で殆ど完治している様子だ。
「元々、ナノマシン技術を医療分野に利用する話も出ていた程だし、おかげさまで傷も残らず――」
「傷のことじゃない。――『デッドロックブルー・プロジェクト』についてだ」
「…ああ、やっぱりそっちでしたか」
 ハウンドに投与されるリベル21グラムに対し、オーナーに投与できるリベルは基本的に2~3グラム程度とされている。活性化しても体内で過度に増加しないよう、慎重に計算されているのだ。
 しかし、リベルの本当の許容量は個人によって差があり、より多くのリベルを投与することが可能な人間も存在する。この点に着目し、リベル解析の一環として行われているのが『デッドロックブルー実験プロジェクト』である。
 志願したオーナーを対象とし、リベルを許容量限界まで追加投与。その経過を観察する、というもの。対象者はリベルの出力を強制的に引き上げ、一定時間だけ通常の何倍もの速度と精度で戦闘が可能になることが確認されている。
 佐伯は、織川ににっこりと笑って見せた。
「今のところ、自己治癒能力の向上以外に、大きな変化はありません。経過は良好…寒野先生のお墨付きですよ」
「ふ、あまり楽観的に考えすぎるなよ。お前が立っているのは、なんの保証も無い未開の地なんだからな」
「ワクワクしませんか、未開の地って」
 目を細めて笑う。その緑がかった灰色の瞳が、光の加減か一瞬青く光って見えた。
「有史以来、人間はその技術を発展させることで、フロンティアを押し広げてきた。ここはまさにその際先端。僕はさらにその一歩先にいるんです。――すごく、わくわくしませんか?」
「……全く、お前は。3年前ウチに転がり込んできてから、何も変わってないな。分かったから、もう帰っていいぞ」
 佐伯は少し心外そうに「変わってないかな?」と呟きながら、部屋の扉を開けた。
「…それでは改めて、良いお年を」

――――――――――――――――――――――――――

 庁舎地下1階、関係者専用駐車場。
 世良華音は白いステーションワゴンに近づき、佐伯から預かったスイッチキーを押した。一瞬ライトが点灯し、ぴ、と電子音がなる。
 もう勝手知ったる人の車なので、我が物顔で助手席に乗り込んだ。
「はぁ……」
 深く座席に沈み込んでため息を吐く。
 ――後部座席に座って居る男と、ルームミラー越しに目が合った。

「やぁ、こんにちは」

 相手の人相を見るより前に、悲鳴を上げるために喉が空気を吸い込もうとする。…が、背後から男の腕が伸びてきて、口を押さえられた。彼の右手が首にナイフを突き立てているのが解る。
「しー…。落ち着いてくれるか? 騒ぎを起こしたいわけじゃ無い。少し挨拶に寄っただけなんだよ」
 短い銀髪、赤い目。敵意の見えない表情。
 華音の生前最後の記憶がフラッシュバックする。
 
 あの日、世良華音が乗った電車が脱線事故を起こした。車両は爆発、炎上。同じ車両に乗っていた乗客は殆ど助からなかったらしい。
 だが、華音は目の前の男に見覚えがある。あの車両に乗っていたはずだ。幽霊で無いのなら、この男があの事故を起こしたキセキ使いに違いない。

 目の前にいるこの男が、全部を台無しにした。待ち望んだ未来を、平穏な日々を。華音から全てを奪ったのだ。怒りで脳が焼けるようだった。
 ナイフの切っ先が、首の皮を引っ掻き青い血液が、胸元へ流れ落ちる。
「蒼太は元気? 今は君がアイツの相棒なの?」
「――っ、お前、あの時の! なにもんだ!? 佐伯を知ってるのか!?」
 口から彼の左手を剥がし、背後を睨み付ける。
「菊地隼斗。アイツの親友。――だった」
「嘘だ! そんなはずない! アイツの親友は、五年前ハイジャックを起こしたキセキ使いの福音汚染で、遺体ごと消えた! SIDの倉庫には当時の捜査資料が、確かな証拠と一緒に保管されてた、って佐伯が――っ」
 だからこそ彼は、親友を追うことを諦め、研究者としてSIDに在籍するようになった。
「飼い主の言うことは絶対か。お利口なワンちゃんだ。俺のことは信じられなくても、相棒が優秀だってことは信じられる。そうだよな?」
「…なにがいいたい?」
「佐伯蒼太は、研究者としても調査員としても非常に優秀だ。SIDがそんな人材に、一つの事件だけを追わせておくかな? オーナー敵性すら持ち合わせているんだから、なおのこと遊ばせて置くわけには行かない。証拠をねつ造してでも、俺のことを諦めさせるとは思わないか?」
「……」
 そんなはずは無い、とは思うがSIDはいつだって人手不足だ。とくにオーナー敵性のある人材は貴重なはず。
 絶対に無い、と言い切れるだろうか?
 これ以上騒ぐ意志がない、と見たのか、男はナイフを下げた。
「SIDの奴らは、別組織にさえ協力を仰ぎ血眼になって俺を探させてる。なんたって、蒼太が勘づく前に俺を始末しなきゃいけないからな。――コープス・コーの奴らは何を隠してると思う? 何故、蒼太の動向を監視するんだ?」
 菊地隼斗がわざとらしく囁く。
「そ、それは……」
「……さて、挨拶はこれぐらいにしておこう。長居は禁物」
 そう言って男は華音の耳に口を寄せる。
「じゃあ、蒼太によろしく。また会える日を楽しみにしてるよ、わんわん♪」
「ま、待てっ……!」
 言葉の後、すぐに後部座席からドアの開閉音が聞こえる。華音もそれを追って車を降りたが、そこには無人の地下駐車場が広がるばかりで、男の姿は忽然と消えていた。
「……くそっ! どこだ…どこに行った!?」
 コンクリートの壁に、華音の声だけが空虚に響いた。

――――――――――――――――――――――――――

GM/プロンプター : お疲れ様でした。
 以上でシナリオ終了となります。
世良華音 : これがドラマだったら、かっこいいエンディングが流れるやつだな。
GM/プロンプター : テレテテッテッテ!\ぱらぱぱっぱーぱらぱぱー/
 逃げ出したい夜の往来 行方は未だ不明(バディ物はこれでいいだろ、というGMの絵文字)

 では、それぞれ成長して終わりましょう。
 1、キズアトの取得
 2、PCの成長(【耐久】+2or【作戦】+1)

世良華音 : 私は【怨焼】を取得しようかな。
佐伯蒼太 : 僕は、傷号の【デッドロックブルー】を取得します。
 ヒビ状態の『一人の食卓』を完全にヒビワレにするよ。
世良華音 : 最後に部長と二人で話してたヤツか。
佐伯蒼太 : 傷号採るならどれがいい、って話してたときの発言を拾って貰ったんだ。
世良華音 : ……もしかしてだけど、SIDが佐伯個人に拘ってるのって、その『デッドロックブルー』実験に関係あったりする?
GM/プロンプター : ふっ…。(ただそれっぽくしただけで何も考えていないが意味深に笑っておくGMの絵文字)
世良華音 : 今後明かされるかどうかは、わからないと。
 で、アタシは耐久値を上げる。
佐伯蒼太 : 僕は作戦力を上げて、成長処理は完了ですね。

GM/プロンプター : それでは、セッションの全行程が終了しました。
 改めて、おつかれさまでした。また次回。
佐伯蒼太 : お疲れ様でした。次回はあるのかな?
世良華音 : 大分怪しいよな。おつかれでした。

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