・はじめに・
こちらは、『虚構侵蝕TRPG』の仮想卓ログです。
以下の要素が含まれます。
・撮って出し…画像などはあまり用意していないが、文章は最低限整えてある
・CoCのメタシナリオで作った役者人格の移植
・通してやるのが初めてで、おぼつかないルール処理
これらのことが許せる、優しい方はどうぞ楽しんでください。
・PCのアイコンについて・
キャラクターアイコンはぴくるーのメーカーで製作しました。記事の最後に、クレジットを表記しております。
GM : 虚構侵蝕TRPGの世界へようこそ。
久保宗親くん。
久保 宗親 : そわそわするな。よろしくおねがいします。
GM : では、自己紹介をどうぞ。
名前は久保宗親。
年齢は31歳。職業は俳優。映画やドラマに出るようになったのは最近で、もっぱら舞台をホームにしているよ。
直近の仕事はCoCをテーマにした『探索者・乾雅臣』シリーズにて主人公を演じさせて貰っています。
※メタネタシナリオで作った役者人格がもったいなかったので、移植(?)したPCになります※
現実乖離は4で、スタンスは執着。しがらみは『職務』。
役者、俳優っていう仕事をしている以上、現実は現実/虚構は虚構でないと、僕は僕で居られなくなってしまう。

GM : 虚構…ひいては虚構侵蝕の世界を愛し執着しているけれど、それはそれとして現実を生きる人間だと自覚がある、ということですね。
久保 宗親 : 虚構に執着する理由だけどさ…かつて銀幕の向こうに見た初恋の女性を探している、というのを考えてる。けど、仮においてるだけだからセッションの中で変わったり、違う設定が生えたりするならそれに従います。
GM : 了解しました、そのつもりで。
GM : 今回通過するのは、公式サプリメント『フィクションオブセッション』に収録されている1PLシナリオ「親友(きみ)の”いく”セカイ」です。
久保 宗親 : 題材作品を知らないシナリオだ。
ちょっと軽くあらすじを読んできてもいい?
GM : どうぞ。
久保 宗親 : ……。
あらすじで泣きそうになっちゃった…。大きくは理解しました。
GM : …なんだけど、今回はこちらのシナリオを改変することになります。
導入HOが宗親くんの経歴と合致しないからね。
こちらがその、改変したHOになります。
▽導入HOの改変について
あなたは「[職務]:自分の舞台を楽しみにしている観客がいる」という[しがらみ]を取得します。
▽あなたの職業
・あなたは大舞台の公演を控える主演俳優です。
・あなたが役者を志したのは、幼少期の頃、親友・高森誠と共に見た小劇場の公演がきっかけでした。
・小学生の頃、あなたと親友はお小遣いを出し合い、親に内緒で夜分に家を抜け出して小劇場へ足を運びました。それから二人は、舞台上で繰り広げられる虚構の世界に夢中になりました。
あなたは役者として舞台に上がりたいと思うようになりましたが、親友はあくまでも観客として魅せられていたいと思っていたようです。
・その出来事から20年以上が過ぎ、あなたは役者に成る夢を叶えました。専門の学校に通うために、市民図書館にも足繁く通い勉強したものです。親友は「あそこには漫画がないから」という理由で同席を断られましたが、通う学校が別々になっても彼と縁が切れることはありませんでした。受験オーディションの前日に、親友から「合格祈願に行くぞ」と言われて地元の神社に連れ出されたのも、今では良い思い出です。
専門学校に入学し本格的に演劇の勉強をするため、生まれ育った故郷を離れましたが、親友とは大人になってからもずっと親しいままでした。
▽親友一家との思い出
・親友が結婚したのは、十年ほど前になります。
あなたが専門学校に入ったあたりで付き合い始めた相手がいたようです。あなたは結婚式にも参加し、二人を大いに祝福しました。
・その後、親友夫婦は子供にも恵まれ、”ちえり”という娘が産まれました。”ちえり”の誕生にはあなたも喜び、帰郷した際には必ず会いに行くようになりました。
・ちえりの四歳の誕生日も、あなたは親友の家族と一緒に過ごしています。親友は、誕生日にプレゼントとして”ガラス玉のチャーム”が着いた”赤いリボン”を首に付けた大きなウサギのぬいぐるみを買ったようですが、ちえりはあなたの持ってきた誕生日プレゼントの方が気に入ってしまったようで、親友から恨みがましい目で見られた思い出があります。
・また、ちえりが五歳の頃、あなたは親友一家と近所の公園に出かけて遊んだ記憶があります。転んで大泣きするちえりを見て、慰めようとわざと大げさに振る舞い彼女を空想世界のお姫様に仕立てたあなたに、親友は「変わらないな」と笑ってみせました。
この公園はあなたと親友が昔から遊んでいた思い出の場所でしたが、それ以来ちえりとの思い出の場所にもなりました。しかしその公園も、今は区画整理でなくなってしまったと聞いています。
・親友の実家には屋根裏部屋があり、そこはあなたと親友の幼少期からのお気に入りの場所でした。
小学生になったちえりもここが気に入ったらしく、訪れる度にあなたと親友は、この屋根裏部屋でちえりが空想した物語を聞かされて過ごしました。ちえりは空想したり、物に新しい名前や設定を付けたりするのが得意らしく、新しい知識を得ると自分の作った物語に取り込むため、物語の語り聞かせはいつまでも終わることがありませんでした。
▽努力と後悔の日々
・そんな幸せな日々に影が差したきっかけは、親友が難病を患ったことでした。男手である親友が動けなくなったことで、精神的にも沈みがちだった一家を慰めたいと思ったあなたは、舞台一筋というこだわりを捨てテレビ出演を決断しました。せめて経済的、精神的なサポートが出来たら、と思ってのことです。
・そして親友は病死しました。あなたは舞台公演があり、すぐに報せを受け取れませんでした。その日のことは、苦い思い出として今も心に残り続けています。それが2年前の今日です。
・あなたは葬儀の日にも、ちえりに会っています。その時に、ちえりがこれから母子二人暮らしになり、母親が働きに出ている間は一人で留守番することになるだろうと聞いています。また、その時のちえりは”ガラス玉のチャーム”がついた”赤色のリボン”を首に付けたウサギのぬいぐるみを持っていました。親友の遺品として、ちえりが引き取ることにしたそうです。
・あなたは親友の死に目に会えなかった後悔から、時間的な制約が厳しい舞台での仕事を遠ざけるようになりました。しかし、あなたの舞台を待っているファン――まさにかつての自分や親友のように舞台に魅せられたファンが、復帰を望んでいます。
今では、プロダクションからの強い押しもあり、大きな舞台公演の話が進行しつつあります。あなたの親友のエピソードをからめ、初回はチャリティーイベントでの公演となる予定です。
▽そして現在
・あなたは親友の三回忌のため、電車に乗り、しばらく戻っていなかった故郷に向かっています。あなたの家はもうこの町にはありませんし、泊まる予定もないので持ち物は最小限です。ただ、チャリティーイベントの報せを受けたファンの一人――奇しくも、親友と同じ病に罹り闘病の身――から貰った手紙は、不要な物だと思いつつも持ってきてしまいました。
「私が初めて見たお芝居は、久保さんが主演されていた『ジキル博士とハイド氏』でした。公式が販売している公演DVDでしたが。いつか元気になったら、自分で劇場に足を運んで、生のお芝居を浴びたいです」
彼らの心を支え救うことで、あなた自身も過去と向き合い後悔を雪ぐことが出来る、と信じています。
GM : 忙しい人のために、かいつまんで言うと、
「かつてあなたには親友がいた」
「彼が結婚し娘が産まれても交流は続いた」
「家族ぐるみの付き合いがあり、あなたも彼らを好ましく思っていた」
「2年前に親友が病死してしまう」
「彼が残した幼い娘を心配している」
「親友の三回忌に里帰りする」
この辺は大事なポイントだと思うから、結構抑えてあると思う。どうだろう?
久保 宗親 : 舞台公演中に知らせを受けて親友の死に目に会えないっていうのは妙にリアル…。
GM : 舞台役者は親の死に目にも会えないと聞きますからね。
久保 宗親 : そうだね、例え何があろうと、僕たちは埋まった客席を無視するわけには行かない。シビアな世界だと思う。
GM : それでは、
「親友(きみ)の”いく”セカイ」
始めて行きます。
▽導入フェイズ
「親友の逝くセカイ」
2年前の今日、あなたは幼い頃から付き合いのあった親友を失いました。
今日は親友の三回忌法要。あなたは電車に乗って親友の実家に向かっています。
電車に揺られながら、あなたは親友との思い出を振り返っていることでしょう。
役者を志すきっかけになった小劇場、勉強に励んだ市民図書館、親友の家族と一緒に過ごした公園。目を閉じれば、彼と過ごした思い出が鮮やかに蘇ってきます。
しかし、あれから多くの時間が過ぎました。
親友の家族も、もちろんあなた自身も、思い出の日のままではありません。思い出の場所もきっと当時とは変わってしまっているでしょう。
あなたは時折、ポケットに入れておいたファンからの手紙にも目を落とします。それはつらい現実の中にあって、あなたが前に進むための数少ない希望でもあります。
三回忌の今日、ちえりちゃんもきっと親友の実家に来ているでしょう。親が働きに出ている間、彼女はずっと留守番をしていると聞きます。
寂しい思いをしているかもしれません。あなたは、短い間でも昔のように遊んであげられたら、と思うでしょう。
久保 宗親 : あ、そういえば所持品に「車」があるんだった。
電車での移動ってことは、結構遠いのかな。
GM : そうですね。車で日帰りだと、帰り途中で車中泊になる、ぐらいのイメージをしています。
もしかしたら、今乗車しているのは新幹線かもしれませんね。
――続けます。
そんなことを考えていたあなたは、電車の心地よい揺れによって、静かに眠りについてしまいました。
――――――――――――――――――――――
「夢の中の親友」
あなたは夢を見ています。
ランタンの光がぼんやりと照らす木造の室内で、あなたはウサギのぬいぐるみを持った親友と一緒にいました。
親友の姿は、まだ元気だった頃のままです。手にしているぬいぐるみは、彼の遺留品となり、今は娘のちえりちゃんが肌身離さず持っていた物でした。
「まこと?……え、誠…?」
「お、起きたか。……この屋根裏部屋に二人だけで話すのも、いつぶりかな。子供の頃はよく二人でここに隠れて、夜更かししたよな」
「びっ、くりしたぁ…なんだ、夢か……」
「『なんだ』とはなんだ。夢にまで会いに来てやったのに」
「……実はずっと恨まれてると思ってて。僕は結局君の最期に立ち会えなかったから。――ずっと君が背中を押してくれていたから、今の僕がある。恩を返したいと思っていながら、君の大事な人たちが一番苦しいときに側に居られなかった」
「えー、そんなこと気にしてたのか!? 相変わらずチカは気にしぃだなぁ。……――で、最近どうよ? 上手くやってる?」
「そんなことって…まぁいいけど。しばらく前まで、舞台の仕事を受けるの、辞めようと思ってたんだ。映画やテレビだけに絞って、もう少し自由に時間を使えたら良いと思って」
「確かに舞台は役者の拘束時間が長いよな。何ヶ月も稽古をしなきゃ行けないし、劇が始まったら三時間は抜けられない。だけど、昔のチカは舞台一筋だった。それを曲げさせたのは俺たちだ。地上波でお前が出てるドラマを放送したときは、病院のテレビの前に陣取って皆で見たよ。『これ俺の親友なんだぜ』って他の入院患者や先生達に自慢してさ」
「ありがとう、でもなんか恥ずかしいよ。普通にオンエア見るのとは別の恥ずかしさがあるよ」
「俺たち家族を元気づけるために、お前が無理してたのは知ってる。実際、来週も皆でドラマ見るために頑張ろう、って思えてたし。むしろ逆に、もう俺に気を遣う必要ないんだから、どんどん舞台の仕事増やせば良いのに」
「うん。……実は、僕は良いファンを持ってね。彼女からの手紙が、僕の気持ちを変えたんだ」 彼に手紙を見せようと思う。
「お、なんだ、ファンレターか!? 見せろ、見せろ!」
「君と同じ病と戦ってる少女から、『いつか自分で劇場まで足を運びたい』って。――とても嬉しかったな。彼女のような人たちが居るから、僕はまた舞台に立とうと思えた」
「良いじゃん、宗親! それでいいんだよ、お前は!」
「そうかな」
「お前は好きなことをやり続ければ良い。ファンはそのうち付いてくる。――そしたら今度は、そのファンがお前の心の支えになる。ただし、ファン第一号は俺! それは譲らん! 誰より早く実力を見出してたし、誰より長く応援してた!」
「……大げさだなぁ」
「――…俺も、今だから言える話をしても良いか?」
「どうぞ?」
「実はさ、初めて二人でここに集まった時、そこら中にある木目が人の顔に見えて、正直すごく恐かったんだ」
彼の言葉のせいか、もしくは薄暗い室内のせいか。あなたにも木造の床や壁、天井にある木目が、まるで人の顔のように見えます。
頭に思い描いた空想が、今にも現実に変わってしまいそうです。
「でも、一人じゃなかった。俺にはチカがいた。なぁ、宗親。お前がいたから、俺はこの部屋が好きになったんだ」
「やめてよ、気恥ずかしい。学生じゃあるまいし、今更そんな青いこと言われたら照れちゃうじゃないか」
「えー、お前だって散々青臭いこと言ってるくせに! ――実際、あの頃の俺は、二人なら乗り越えられないものは無いって思ってたんだ」
彼の笑い声で、屋根裏部屋はいつもの姿を取り戻しました。
「だから…宗親に頼むことにした」
そう言うと、親友は手に持っているウサギのぬいぐるみをあなたに投げ渡しました。
”ガラス玉のチャーム”がついた赤色の”リボン”を首に付けたウサギのぬいぐるみです。
「なぁ、これってちえりちゃんの……」
「俺を探してくれ」
その言葉を最後に、ランタンの明かりが消えました。
――――――――――――――――――――――
「10年後のセカイ」
あなたは目を覚ましました。しかし、あなたが目覚めたのは電車の車内ではなく、見知らぬ部屋のベッドの上です。
ベッドの枕元には見覚えのある「ウサギのぬいぐるみ」があり、床には「LEDランタン」、「棚」には本が一冊差してあり、”親友とあなた、それに見知らぬ20代の女性が一緒に写った写真”が写真立てに入っておかれていました。
どうやらここは現実で、夢の続きではないようです。
観測者は現実では起こりえない経験をしました。観測ロールをどうぞ。つづけて、フィクションカードも引いてください。
久保 宗親 : 観測ロール (KR(4,3)) > 8
侵蝕度 : 0 → 8
GM : さす高。
観測者の周囲の景色が刹那に揺らぐ。
虚構侵蝕により[歪み]が発生していることをはっきりと認識します。
久保 宗親 : トランプも引きますね。イデアをわりと使っちゃったから、二枚しか引けないけど…。
……10と、5。悪くない。
GM : しばらく、この部屋を自由に探索することが出来ます。気になる物はありますか?
久保 宗親 : 気になる物だらけだけどね。
まずは夢で渡された「ウサギのぬいぐるみ」を調べようかな。
夢で見たぬいぐるみと殆ど同じぬいぐるみです。
違いは”ガラス玉のチャーム”のついた赤い”リボン”を付けていないことと、あなたの記憶よりも古びていることです。
久保 宗親 : 「……このぬいぐるみって、そんなに古かったっけ?ちえりちゃんが四歳の頃に買った物だから…六年前か。お葬式で持っていたのを見たときは、こんなに汚れてなかったと思ったけど」
LEDランタンは夢で出てきた物?
夢で見たのと同じランタンです。
特殊な物ではなく、通販やキャンプ量販店で販売されている、ごく普通のものです。
壊れているのか、明かりは消えていて、再点灯もしません。
久保 宗親 : 振ってみます。
GM : 内部の部品かなにかが、カラカラと音を立てますが、明かりが付く様子はありません。
久保 宗親 : 仕方ないねぇ…。
写真立てを見ようかな。
写真に写っているのは「高森誠」と「高森誠に寄り添う見知らぬ20代前半の女性」、そして「久保宗親」です。
あなたも、親友も少し老けているような印象を受けます。
久保 宗親 : 老け…え?どういうこと?
近くに鏡はありますか?
GM : 鏡はありません。
しかしあなたは役者です。体型維持には人一倍気を遣いますね?
久保 宗親 : ……そうですね?
GM : あなたは、自分の体型が変わったと気がつきます。
端的に言って「ちょっと太ったかな?」という程度です。不健康な肉の付き方ではなく、年齢的な物に近いと感じます。
久保 宗親 : 「……え?」
それって、普通のおじさん体型ってこと、だよね?
まって。そんなはず無いよ、さっきまでそんなじゃなかったじゃん。
GM : 確かにさっきまでそんなじゃなかったです。
久保 宗親 : ……写真に写ってる誠も、同じぐらい老けて見えますか?
GM : 老けて見えます。
具体的には、十歳ほど老けていますね。
久保 宗親 : 「さっきのぬいぐるみといい、時間の感覚がおかしい、かも…?」
当然ながら、写真に写ってる女性は、誠の奥さんじゃないんだよね?
GM : 違いますね。しかし、どことなく面影は似ているような気がします。
久保 宗親 : え?
……うーん、流れ的にちえりちゃんなのかな?
分からないし、棚の本を調べます。
棚の中に、表紙に少女と巨大なウサギが描かれた本を見つけます。表紙の少女は、どことなく親友の娘に似ているきがしました。
巨大なウサギはアクセサリーのリボン以外は、枕元にあったウサギと同じデザインです。ぬいぐるみの元ネタなのかも知れません。
背表紙と裏表紙には、見覚えのある市民図書館のラベルが貼ってあります。
ページがのり付けされているように固く、本を開くことができません。
久保 宗親 : そういえば、一番最初に確認しなきゃ行けなかった。
ファンからの手紙は持ってる?自分が持っているものの中で、一番大切だと思うんだけど?
GM : ポケットを探っても、見当たりません。
久保 宗親 : 「あれ?…あれ???」
ベッドの下とかに落ちてないですか?
GM : 落ちていません。
あなたが這いつくばってベッドの下などを探していると、部屋の外の階段を、誰かが上がってくる音がします。
「チカさん? もう十時過ぎるけど、起きてる? お父さん、先に出発しちゃって――」
と言う声と共に、扉がノックされ、写真にも写っていた20代の女性が部屋に入ってきました。
初めて見る女性ですが、気心の知れた友人のように接してきます。
久保 宗親 : 「も、もしかしてだけど、ちえり…ちゃん?」
??? : 「そうだよ。なぁに? 宗親さん、寝ぼけてるの?」
久保 宗親 : 「う、嘘っ…! この間までこんなだったのに!?」
こう、膝の辺りで頭を撫でるような仕草をします。
ちえり : 「そんなにちっちゃくないよ!」
少し笑ってから、
「いつの話してるの? 半年前も会ったでしょ?」
久保 宗親 : 「な…なんか、急に大っきくなっちゃった気がして……えぇ…いくつになったの?」
ちえり : 「この間二十歳になったよ。って、前も言ったけどなぁ」
久保 宗親 : 「わぁ……十年跳んでる…」
ちえり : 「うん?何の話?」
久保 宗親 : 「なんでもない。…ええっと……じゃあ、ここは誠の家? だよね?」
ちえり : 「うん。チカさん、昨日到着して、そのままこの部屋に泊まったんだよ。リフォームしたから、見違えちゃった? ――お父さんが、誕生日に皆と思い出の場所を巡りたいって言い出して、今日約束してたでしょ? 本人は一人でさっさと出かけちゃったみたいだけど」
久保 宗親 : 「…………僕、ちえりちゃんの成長を見逃した様な気がする。ドキュメンタリーでもう一度みたいよ…」
ちえり : 「何言ってるの? ――とにかく、リビングに居るから、頭がはっきりしたら降りてきてね」
GM : 反応が親戚のおじさんすぎる。
久保 宗親 : だって、十歳だった子が急に二十歳って……。
『お父さんと結婚する』って言ってたあの子が……。
GM : へんなところで感極まらないでくださいね。
久保 宗親 : とにかく、十年の時間経過があり、誠が生きている、という異変は理解した。
リビングに降りる前に、スマホで少し調べ物をしたいんだけど、いい?
GM : 何を調べますか?
久保 宗親 : これは僕がHOから感じた事なんだけど、誠が闘病生活を始めた辺りで、役者を続けるか、堅実な仕事について彼らを支えるか、という選択を迫られたんだと思うんだ。
結局僕は舞台を降りられなかったんだけど。
この虚構世界では、どうなってる?
GM : ふむ。では、〈調査〉を振って貰いましょう。
難易度は…4で。
久保 宗親 : 〈VER-TH〉は使えますか?
GM : どうぞ。
〈調査〉判定(専門技能あり) (KS(10,3)>=4) > 10[4,9,10] > 10 > クリティカル
GM : 幸先良いですね。
推定13年前の芸能記事がヒットします。
▽「久保宗親、電撃引退とその理由」
演技派の舞台俳優・久保宗親が、唐突に引退を発表した。その理由は極個人的な事情としているが、安定した職に就きたい、と話している。
今後表舞台に戻ってくる予定は無い、とインタビュアーにはっきりと宣言した。
GM : クリティカルですが、手札の交換はしますか?
久保 宗親 : 手札は交換しません。
「そうか、辞めたのか……」
GM : この世界のあなたは、自分の望む道よりも、親友を支える未来を選択したようです。
もはや”次の公演”や”撮影”を気にする必要はありません。代わりに、上司や同僚、部下…出勤や退勤の時間、有給の残りなどに、人並みに頭を悩ませています。
▽調査フェイズ「親友の娘」
窓からは太陽の光が差し込んでおり、外は良い天気のようです。
階段を降りていくと、あなたはこの家に見覚えが有るような気がしてきました。
リビングに向かうと、簡単な朝食が用意されています。先ほどの女性――ちえりちゃんもリビングで珈琲を飲みながら、あなたに話し掛けてきます。
ちえり : 「お父さんからの伝言は机の上に置いてるから、読んでおいてね」
久保 宗親 : 「ちえりちゃん、珈琲なんて飲むんだね…」
ちえり : 「もー、さっきから変なところで驚きすぎじゃない?」
久保 宗親 : 「ごめんね。なんか、すっごい昔の夢を見ててさ……」
とりあえず、席につきます。
リビングの机の上には、朝食の他に、新聞の下に挟まれるようにおかれた手紙が有ります。
久保 宗親 : 新聞で日付を確認します。
GM : 日付は、友人の三回忌から十年、高森誠の死からは都合12年経っています。
新聞を詳しく読みますか?読む場合は〈調査〉判定をどうぞ。
久保 宗親 : 難易度はいくつですか?
GM : 4です。
〈調査〉判定 (KS(10,2)>=4) > 10[2,10] > 10 > クリティカル
全国紙でありながら、扱われている記事の内容がこの町の出来事に偏っている印象を受けます。
一方で遠い外国の出来事は、”宇宙まで打ち上げられたペットボトルロケットの回収問題”、”工場のロボットが我慢出来ずにくしゃみをして喋れるのがバレたというトラブル”、”南極に大きな銭湯ができてペンギンたちが喜んだ”というような、一見するとフィクションニュースかと疑う記事が目立ちます。
また、政治、経済、為替などのページは文字が所々ぼやけ、読めなくなっていることに気がつきます。
GM : 手札の交換はしますか?
久保 宗親 : えっと…じゃあ、5を交換します。……エースだ。これは大事だな。
GM : 加えて、新聞内容に対し、観測ロールをどうぞ。
観測ロール (KR(4,3)) > 7
侵蝕度 : 8 → 15
GM : 観測者は虚構と現実の境目が曖昧になる。
フィクションカードを一枚引き、手札に加えてください。
久保 宗親 : 6だった。、三枚になりました。
ちえり : 「…チカさん、新聞凝視して、どうしたの?」
久保 宗親 : 「あぁ……やっぱりちょっと来てると思って。老眼が」
ちえり : 「やばい!おじいちゃんが言ってたよ、来てると思ったら見えなくなるのはすぐだ、って」
久保 宗親 : 「やだこわーい(笑)」
適当に笑い話にしつつ、誠からの書き置きを見ます。
親友の筆跡で書かれた手紙です。内容は以下の通り。
「思い出の場所を娘と巡ってくれ。それぞれの場所にヒントを残してる。そのヒントを元に俺を見つけ出してくれ」
久保 宗親 : 「これは、ちえりちゃんも読んだの?」
ちえり : 「うん。チカさんも、早くご飯たべちゃってよ。一緒にお父さん追いかけよう!」
久保 宗親 : 「…そうだね」
用意されてる朝食を食べて出かけましょうか。
うだうだしててもしょうが無いんでね。
GM : これ以降、町の変化について調べる場合は、いつでも宣言していただいて構いません。気が向いたときにどうぞ。
最初の行き先については、ちえりちゃんに心当たりがあるようです。
ちえり : 「最初は絶対あそこだと思うな!自然公園の敷地内にある、小劇場!お父さんいっつも言うんだ『あの劇場は俺たちの聖地だ。俺の観劇趣味はあそこから始まった』って。行ってみよう!」
久保 宗親 : それって、HOにも書いてあった小劇場だよね。
…今も存在するのかな? 存在するなら、現在なにが公演されてるか、調べても良い? 〈VER-TH〉使える?
GM : 〈調査〉で判定をどうぞ。難易度は4です。
〈VER-TH〉使えます。
〈調査〉判定(専門技能あり) (KS(10,3)>=4) > 10[3,5,10] > 10 > クリティカル
あなたが親友と過ごした思い出の場所は、どこも現在区画整理のため無くなっていることが分かります。もっと詳しく調べたいなら、市民図書館に行けば、町の資料があるかもしれません。
また、VER-THにて、この町の周辺で虚構侵蝕の観測が報告されていることに気づきます。境界線には時間の歪みも発生しており、境界を越えた一般人に10年分の年齢変化が起きています。観測者は出入りすら出来ないようです。
久保 宗親 : 虚構世界では存在するの? サイトはヒットする?
GM : クリティカルですからね。いいでしょう。
子供がクレヨンで描いたようなフォーマットで妙なサイトがヒットします。
とても見づらく、読み取れる情報はありません。
久保 宗親 : 「……まぁ、行ってみよう。行けば分かるでしょ」
虚構世界の町については、調べることを諦めて出かける準備をします。
GM : では出発ですね。
▽調査フェイズ「憧れの小劇場」
あなたとちえりは、広い自然公園の中に設置された小劇場にやってきました。
美術館や博物館などと併設されている市民劇場で、習い事の発表会や合唱コンクールなどでも使用されている施設です。
建物の前に張り出されているポスターによると、現在は社会人の劇団が『銀河鉄道の夜』を公演しているようです。
小さい頃、高森誠となけなしのお小遣いを出し合って、夜の部を見に行った思い出があります。今なら、チケット代ぐらい安い物でしょう。
ちえり : 「ねぇねぇ、チカさん。チケット代を賭けて、何か勝負しない?」
久保 宗親 : 「チケット代ぐらい僕が出すけど?」
ちえり : 「それじゃあつまんないじゃん。私だってもう自分のお財布ぐらい持ってますから。…学生の頃、よくお父さんとやったんでしょ?『飯代か、席代か。勝負に勝った方が決めて良い』って聞いたよ」
久保 宗親 : 「あーね、思い出したよ」
GM : では、そうですね……指スマなどどうでしょうか。
判定は対決で〈機知〉vs〈機知〉。宗親は受動側です。
久保 宗親 : 〈機知〉なら勝ち目があるかも。
〈演技〉でブラフをしかけることは出来ますか?
GM : 大人げねぇな! いいよ!
では、ちえりちゃんから振ります。
ちえり : 対決→〈機知〉判定 (KS(8,2)) > 6[4,6] > 6
久保 宗親 : 対決→〈機知〉判定(専門技能あり) (KS(10,2)) > 6[4,6] > 6
ちえり : 「えー!! 今の狡い! チカさん、大人げない! 嫌い!」
久保 宗親 : 「勝ったのになぁ。じゃあ、三回勝負にしますか?」
ちえり : 「いいの? やったー! もう同じ手には引っかかりませんからねー!」
GM : ちえりちゃんは、勝負よりもあなたと遊ぶのが楽しいようです。三回勝負しますか?
久保 宗親 : ポスターに書いてある公演開始時刻は、何時なの? 時間を見てから決めようかな。
ポスターに書かれた開演時間の表示が、おかしな数字になっています。いえ、数字が変わり続けています。デジタルポスターでもなく、掲示板に画鋲で止めてある紙面の内容が、見る間にデタラメに変わっていきます。
現実ではあり得ない虚構を”観測”したあなたは観測ロールをどうぞ。
観測ロール (KR(4,3)) > 5
侵蝕度 : 15 → 20
GM : 観測者は虚構と現実の境目が一瞬分からなくなる。
[手札の交換:1枚以上]を行う。
久保 宗親 : えー…じゃあ6を交換します……。
あ、二枚目の10だ。だったら10を交換すれば良かったな。
劇場入りはいつでもいいんだろうね。ちえりちゃんに付き合って、指スマ勝負します。
あと一回勝てば、僕の勝ちなんだよね。頑張ります。〈演技〉は変わらず組み合わせて良い?
GM : 良いでしょう。
では、能動側のちえりちゃんから振ります。指スマ勝負、スタート。
ちえり : 対決→〈機知〉判定 (KS(8,2)) > 8[2,8] > 8
久保 宗親 : お、高いねぇ。 対決→〈機知〉判定(専門技能あり) (KS(10,2)) > 6[6,6] > 6
ちえり : 「へっへーん! チカさんから一本取りましたよー! これで同点だね」
久保 宗親 : 「僕は年上だからね。勝たせて上げたんだよ」
GM : いい大人二人がベンチに座って「いっせっせーの、3!」などとやっています。面白い光景ですね。
では、ちえりちゃんの最後の一振り。
ちえり : 対決→〈機知〉判定 (KS(8,2)) > 2[2,2] > 2
久保 宗親 : 対決→〈機知〉判定(専門技能あり) (KS(10,2)) > 6[6,6] > 6
久保 宗親 : 「勝ち申した。ではちえり姐さんに驕って頂きましょうか。ごちそうさまでーす」
ちえり : 「ずるいずるーい!! チカさん、すぐフェイントかけるじゃん! 大人げないよ! 年下にムキになって、恥ずかしいと思わないの!?」
久保 宗親 : 「……多少はね。でもちえりちゃんが言い出したんじゃない。『私だって、お財布ぐらい持ってるもん!』って」
ちえり : 「私そんなんじゃないもん! まねしーなーいーでー!!!」
久保 宗親 : 「ごめん、ごめん。――…変わんないなぁ、ちえりちゃんは」
では、ちえりがチケット代を出し、あなた達は劇場へ足を踏み入れます。
演目は『銀河鉄道の夜に』。少年ジョバンニとその友人のカムパネルラは、夜空を駆ける鉄道に乗って、不思議な旅をする。おなじみ、宮沢賢治の名作ですね。
久保 宗親 : ポスターを見たときも思ったけどさ、重ねてくるよね。
銀河鉄道の旅は、死と生を巡る旅。カムパネルラはすでに死んでいて、ジョバンニは友と別れなければならない。
……泣いちゃうけど?
GM : 隣の座席に座るちえりちゃんからも、時折鼻を啜るような音が聞こえます。
久保 宗親 : ハンカチを渡します。
ちえり : 「チカさん、あ”り”がと”う”……(泣)」
ちーん、と鼻をかんで返しますね。
久保 宗親 : 「……はい」
いつの間にか、あなたが握っていたチケットの半券は消え、代わりに赤い”リボン”が手の中にあります。
▽一回目の回想
突然あなたの脳裏に、自分の物ではない記憶が走馬灯のように流れ込みました。
「視点の主は、ウサギのぬいぐるみからリボンを解いた。リボンからガラス玉のチャームも外し、その2つをポケットにしまう。それから忍び足で”あの部屋”に向かい、ベッドで寝ているあなたの枕元にウサギのぬいぐるみを置いた」
観測ロール:不思議な幻覚を見た。
観測ロール (KR(4,3)) > 5
侵蝕度 : 20 → 25
白昼夢はそこで途切れ、公演もいつの間にか終わっていて、あなた達二人は、撤収の済んだがらんとした舞台を眺めていました。客席には他の観客も存在しません。
ちえり : 「勝負には負けちゃったけど、すっごい良い公演を見られたなぁ。――…結局、お父さんは居なかったね?」
久保 宗親 : 「あ、あぁ……」
ちえり : 「ねぇ、チカさん。手に持ってるのはなに? リボン? もしかして、それがお父さんが言ってたヒントなの?」
久保 宗親 : 「そうみたい。…ちえりちゃん、このリボン、何のリボンか覚えてない?」
ちえり : 「うん? なんのこと?」
久保 宗親 : 「もしかして、忘れちゃった?」
ちえり : 「そんなことより、ヒントが手に入ったなら、次の場所にも行ってみようよ!」
GM : どうやら、ちえりちゃんはそのリボンがなんなのか、忘れてしまっているようですね。
久保 宗親 : ……虚構世界のちえりちゃんにとっては、十何年前の誕生日に父親から貰ったぬいぐるみ、だもんな。
なんで僕がへこんでるんだろう…。
GM : 一足早く劇場を出たちえりちゃんが、「チカさん、早くー!」と呼んでいますね。
久保 宗親 : 「はいはい、行くから。走ると転びますよ」と言いつつ、追いかけます。
▽調査フェイズ「午後の公園」
次にやって来たのは、幼い頃には親友と、ちえりが産まれてからは彼女とも一緒に遊んだ公園でした。
あなたの記憶通りなら、すでに区画整理でなくなっているはずです。しかし、何故か公園はそのままで、しかもあなたが親友と遊んでいた頃と同じ遊具が全て設置されています。
また、近くには岩のジャングルジムを備えた人工池もあり、そちらでも水切りやザリガニ釣りなどであそぶことが出来るようです。
ちえり : 「懐かしい! お父さんとチカさんと、よく遊んで貰ったよねぇ。――見る限り、またお父さんは居ないけど、どっかにヒントを隠して行ったのかな? お父さんのことだから、昔と同じように遊んでみたら、何か見つかるかも知れないよ?」
GM : ここで遊べる遊具は以下
・クライミング遊具を登る
〈運動〉判定:難易度6
・ロッキング遊具を真剣に遊ぶ
〈表現〉判定:難易度4
・滑り台/ブランコで真剣に遊ぶ
〈運動〉判定:難易度4
・水切りで勝負
〈射撃〉vs〈射撃〉
・岩場で鬼ごっこ
〈運動〉(子)vs〈探知〉(鬼)
・ザリガニ釣りをする
〈操作〉判定:難易度4
久保 宗親 : 実は、フィクションカードを使ってみたいっていうのが少しあるんですよね。
10を交換するか、使うかしたい。
…一番難易度の高いクライミング遊具に挑戦してみるかな。
「一番上まで競争、っていうのはよくやったな。学年が上がってからは、ごっこ遊びに使ったりもしたし。あれは”城”で”壁”で、”巨大な敵”だった」
ちえり : 「なにそれ、面白そう!ちえりもやりたい!」
久保 宗親 : 〈運動〉は人並みだけど、やってみましょう。
難易度 : 4 → 6
〈運動〉判定 (KS(6,1)>=6) > 1 > ファンブル
うぶっ……。
GM : カードを使いますか?
久保 宗親 : ……10のカードを使います!
フィクションの登場人物がかっこ悪く落ちたりなんかするはずないでしょ!? 見間違いですよ! 壁走りします!
GM : はい、では…あなたはアクションスターさながらの動きを見せて、見事登り切りました。
ダイスの最大値以上の数での成功になりますので、クリティカルですね。カードを交換しますか?
久保 宗親 : 10を、交換します。…2を貰いました。まぁ、いいでしょう。
GM : 続いて、カードを使って[現象の上書き]を行いましたので、侵蝕度が上昇。30になりました。
侵蝕度 : 25 → 30
観測者は虚構からの拒絶の意思を感じる。
観測ダイスを1個振り、いずれかを選択する。
①手目に等しいダメージを受ける ②手目に等しい値だけ[侵蝕度]を上げる。
久保 宗親 : 観測ロール (KR(4,3)) > 1
……最終的に、侵蝕度が99を下回っていれば良いんだよね。
侵蝕度を上げてください。
侵蝕度 : 30 → 31
あなたは運動音痴で、子供の頃も今も、登るだけで一苦労です。しかし、ここは虚構世界。何をやっても良い、あなたが主役なのです。ならば、それほど高くも感じません。
ちえりは驚いたのか一瞬ぽかんと口をあけ、「わぁ、すごい!」と小さく拍手をします。しかし、あなたはどこか虚しさも感じています。あくまでリアルでは無いからでしょうか?
ふと手に”ガラス玉のチャーム”を握っているのに気づきました。二人が降りるとクライミング遊具は、いつの間にか消えて無くなります。
▽二回目の回想
瞬間、あなたの脳裏に再び自分の物ではない記憶が走馬灯のように流れ込みました。一回目に見た白昼夢よりも少し前の出来事のようです。
「ベッドに横たわっている小学生のちえりが見える。ちえりの枕元にはウサギのぬいぐるみ。視点の主は、慎重にウサギのぬいぐるみを取り上げる。視点の主が顔を上げると、いつの間にか大人のちえりが横に立っていた。視点を戻すと、ベッドに寝ていたちえりは消えていた」
観測ロール:不思議な幻覚を見た。
観測ロール (KR(4,3)) > 3
侵蝕度 : 31 → 34
気がつくと、あなたは別の場所に居ました。周囲は年輪を重ねた木々に囲まれており、静寂に包まれています。
あなたは10年以上が過ぎても変わらない風景を見て、ここがかつて親友と共に合格祈願に訪れた地元の神社の森の中であることに気づくでしょう。
久保 宗親 : 「え、…ちえりちゃんは?」
探しながら森を出ます。
GM : ちえりちゃんは見つかりませんが、神社の境内で、あなたが目覚めたときになくした”ファンからの手紙”を見つけます。
久保 宗親 : 「あぁ、良かった!」
GM : ただし、その手紙はあなたの記憶よりも古びており、文面も違っています。
久保 宗親 : なん、だと……。
詳しく確認します。
”ファンの少女からの手紙”ではなく、”ファンだった少女の家族からの手紙”のようです。
消印は、この世界のあなたが引退を表明した数年後です。
残念ながら、彼女は亡くなってしまったようですが、娘が好きだったあなたの舞台を、自分たちも見て見たい、という内容です。もし役者として活動を再開するのなら、是非知らせて欲しい。絶対に見に行く、と書いてあります。
とある少女にとって、苦しい闘病生活の中での”推し活”というのは、強い心の支えだったのでしょう。
久保 宗親 : ご……ごめんなさい…。
……そうか、虚構世界に[しがらみ]は存在しない。そういうことか…。ちょっと泣きそう。
なんでこの世界の僕は役者を辞めてしまったんだろう。いつだってフィクションは誰かの心を支えていたんだって、自分が一番よく分かっていたはずなのに。
GM : あなたが、手紙を片手に動けずに居ると、向こうからちえりが駆けてきます。
ちえり : 「宗親さーん! 急に居なくなるから、探したよ! 神社に行くなら、言ってくれないと」
久保 宗親 : 「……」
ちえり : 「悲しそうな顔…。どうかしたの?」
久保 宗親 : 「――いや、何でも無いよ。多分だけど、お父さんからのヒントは全部見つけられたと思う」
ちえり : 「ほんとう? でも、お父さんは見つからなかったね。入れ違いになったのかも知れないし、一旦家に帰ってみる?」
久保 宗親 : 「あぁ、それはあるかも。……そうだね、帰ろうか」
それでは、二人は誠の実家へ足を向けます。
自宅に戻ると、解決フェイズに進みますが、いいですか?
久保 宗親 : 割と全部解決したんじゃないかな?
あ、強いて言えば開けなかった本が気になるか。
帰る前に、図書館に寄っても良いですか?
GM : 良いですね。情報はできるだけ拾っていきましょう。
▽調査フェイズ「市民図書館」
記憶を頼りにやってきたのは、小さな市民図書館でした。
小さいとは言っても、児童書から専門書まで多種多様な本が置かれており、町の規模からいえば十分と言えるでしょう。置かれていないのは漫画くらいのものです。
中学時代には、あなたもここで勉強をした記憶があります。この市民図書館は、地域の子供のための読み聞かせの活動を行っていたりと、大勢の人たちが利用する環境が整えられていたはずです。しかし、今は司書も含めて人の姿が一切みあたりません。
久保 宗親 : 最初の屋根裏部屋にあった本を探すことはできますか?
GM : 〈調査〉判定をどうぞ。難易度は3です。
難易度 : 6 → 3
久保 宗親 : 〈調査〉判定 (KS(10,2)>=3) > 4[4,4] > 4 > 成功
表紙に少女と巨大なウサギが描かれた本を見つけます。表紙の少女はどことなく小学生の頃のちえりに似ている気もします。
巨大なウサギはアクセサリーのリボン以外は、屋根裏部屋のウサギのぬいぐるみと同じデザインです。
それは、父を失って悲しんでいる空想好きの少女と巨大なウサギの物語で、1ページ目には「There is no fact or fiction in this world(この世界には現実も虚構もない)」と書かれていました。
ちえり : 「あ、これ、同じ本をお父さんが借りてたような…」
久保 宗親 : 「うん、あの屋根裏部屋で見たのが気になってね」
他に調べられる物はありますか?
GM : 新しい情報を出せるのは…自習スペースぐらいかな。
久保 宗親 : かつては自分も利用していたであろう、自習スペースね。
軽く見て帰ろうかな。
GM : 〈調査〉判定が振れます。難易度は同じく3です。
久保 宗親 : 〈調査〉判定 (KS(10,2)>=3) > 10[7,10] > 10 > クリティカル
GM : 宗親さんはクリティカラーですね。
高校生や大学生が勉強のために使っていたらしき本が、机の上に残っているのを見つけます。
それはワニと猿のような生き物の物語で、一ページ目には「God does not draw the line between true and false.(神は真と偽を判断しない)」と書かれています。
ちえり : 「あ。この本、読んだことある! 気に入ってるんだ。ウチにもあったと思う」
久保 宗親 : 「随分、哲学的なことが書いてあるけど……ちえりちゃんも、もう二十歳だもんね。これぐらい読むのかな」
って言いながら、本当は絵本だったりして。なんてね。帰りますよ。
GM : クリティカルの手札交換はしますか?
久保 宗親 : 貰います。2を交換します。……6を貰いました。
▽解決フェイズ「親友との再会」
あなたはいつの間にか意識を失っていたようでした。
気がつくと、高森誠の実家に帰ってきています。
玄関にはちえりが立っており、品定めするかのような、冷ややかな目であなたを見て居ます。先ほどまでの気の知れた雰囲気はどこにもありません。
久保 宗親 : 「…ちえりちゃん?どうしたの?」
ちえり : 「さて。思い出の場所を巡ったわけだけど、そろそろ彼がどこに居るのか分かった?」
久保 宗親 : 「――……まぁね。アタリは付いてるかな」
ちえり : 「うん、話が早くて助かるよ。彼を見つけたら、あるべきモノをあるべき場所へ戻して。そこであなたの答えを聞かせて」
言うが早いか、ちえりの身体は背景に溶けるように透けて、消えてしまいました。
久保 宗親 : お家探索パートっぽいけど…。あのウサギのぬいぐるみに、手に入れた”ガラス玉のチャーム”と”赤色のリボン”を付ければ良いんだよね。
二回目の白昼夢に出てきたのは、ちえりちゃんの部屋かな。
一応、調べていきたい気もするんだけど、40歳のおじさんが、親友の娘とは言え女児の部屋を勝手に漁るのは流石にキモすぎる。
GM : 確かに気持ち悪いですね。
久保 宗親 : 僕が生理的に無理。
なので、まっすぐ屋根裏部屋へ向かおうと思います。
GM : 屋根裏部屋には、ランタン、写真立て、棚に本、ウサギのぬいぐるみ…。出たときと何も変わりはありません。
久保 宗親 : 「大人しく待っててくれてありがとう。待たせたね」
と言いながら、”ガラス玉のチャーム”と”赤色のリボン”をぬいぐるみに付けます。
あなたがウサギのぬいぐるみに”ガラス玉のチャーム”と”リボン”を付けると、ぬいぐるみから高森誠の声が聞こえました。
高森誠 : 「また会えたな」
ちえり : 「こんな見た目だけどね。このぬいぐるみの中に、彼がいるのよ」
いつのまにか、部屋のベッドには、ぬいぐるみを抱えたちえりも居ました。
久保 宗親 : 「久しぶりだね。……また会えて嬉しい」
高森誠 : 「残念ながら、試すのはこれからかもしれないな。――今度こそ、本当の願い事を伝えたい。チカ、虚構侵蝕って言葉を聞いたことはあるか?」
久保 宗親 : 「知ってる。…なんならわりとおなじみかもね」
高森誠 : 「そうか?なら、話は早い。この虚構世界を維持するのか、消滅させるのか。その選択を、お前に委ねたいんだ。それが、俺たちの本当の願いだ」
久保 宗親 : 「責任重大だ。……二人では決められないの?」
高森誠 : 「俺たちは、虚構核がこの世界の守り手として生み出した存在だ。だけど、ずっと迷ってる。この虚構世界を維持すべきなのか、収束させるべきなのか」
ちえり : 「人はみな、自分の経験に基づいて世界を認識しているわ。だから視点や立場によってそれぞれの感じる世界は変わっていて当然でしょ? つまり、世界には真も偽も無いの。虚構侵蝕だって、ひとつの視点や立場が反映された世界に過ぎないわ」
高森誠 : 「俺たちの二人の意思は平行線だ。どちらも、真にちえりの事を想うからこそ譲れない。俺たちには、全く別の視野を持ってる意思決定者が必要だった。……だから、宗親に託すことにした」
久保 宗親 : 「うーん。…真も偽も無い、っていう意見には、ひとまず賛成かな。僕自身も、虚構が必ずしも偽物だなんて思ってない」
ちえり : 「だったら……!」
久保 宗親 : 「まぁ、聞いてくれる?――この世界では誠は生きてて、ちえりちゃんも元気に成長してる。喜ばしいことだね。…僕はこの世界で、当時自分が悩んでいた”もう一つの選択”の行く末を垣間見ることが出来た。二人の未来と、特別な因果関係はないけどね」
高森誠 : 「見つけたんだな、あの“手紙”…」
久保 宗親 : 「うん、だから僕はもう、結論は決めてる。でも、1つだけ分かって欲しいのは、僕はこの世界を否定したいわけじゃ無いってこと。ただ個人的な”お気持ち”で、僕は現実に居場所を求めてる」
ちえり : 「……なんで?消えちゃうんだよ? お父さんも、思い出の場所も、全部…」
久保 宗親 : 「…誠は太陽みたいなヤツだった。きっと家族の中でもそうだったろうと思う。だから、失った時にはとても辛かった。最期の時も一緒には居られなかったし。僕はずっと自分を、太陽に照らされる月だと思ってきたんだ。――だけどあるとき、そうじゃない、って気づかせてくれる出来事があった。……案外僕も、誰かの心を照らせるんだって。僕はそれがとても誇らしかった」
高森誠 : 「宗親……」
久保 宗親 : 「ちえりちゃん、ごめんね。…この世界では、僕は自分を愛せない。――それに、『消えちゃう』んじゃない。ただ目に見えなくなるだけだ」
ちょっとくさいセリフを言おうか。笑わないでね。左胸の辺りを軽くたたいて。
「大切な人も思い出も、全部”ここ”にあって、前に進むための勇気をくれる。僕はそうやって、ようやく少しずつ現実を受け入れ始めたよ」
GM : この虚構世界を消滅させる、という選択でよろしいですね。
久保 宗親 : ファイナルアンサー。
「この虚構侵蝕を消滅させる。これが、僕の答えです」
GM : それでは[虚構の収束]を行った後、終了フェイズに入ります。
久保 宗親 : [しがらみ]の数は1つ?
GM : 2つ振って貰いましょう。キャラメイク時の[しがらみ]と、シナリオ固有の[しがらみ]とは別に扱います。
久保 宗親 : [虚構の収束]の侵蝕度減少ロール (KRS(4,2)) > 15[7,8] > 15
で、残ったカード二枚を捨て札へ。計17点の減少値です。
侵蝕度 : 34 → 17
▽終了フェイズ「親友の往くセカイ」
あなたが回答すると、虚構核の化身である二人は消えていきました。
そして夜の帳が降りるように世界は暗転し――。
意識が戻ったとき、あなたは親友の実家の前にいました。
ファンからの手紙も、変わらずポケットに入っています。
そして玄関には、10歳のちえりがウサギのぬいぐるみを抱えて立っていました。
ちえり : 「夢の中で、このウサギさんが、パパが生きてるセカイを見せてくれたの。チカちゃんも居たんだよ? ……ちえり、とっても嬉しくて…このまま、ずっとここにいたい、って思ったの」
久保 宗親 : 「…うん、ごめんね」
ちえり : 「ちえり、しってるよ。チカちゃんが、パパのこと一番の友達だから大好きなの。だから、チカちゃんだってパパといっしょのほうが、嬉しいとおもって……」
幼いちえりは、声を詰まらせて、瞳に大粒の涙をいっぱいに浮かべる。
ちえり : 「……チカちゃん、パパのこと嫌いになったの? だから、さいごの時も、来てくれなかったの? …パパ、ずっとチカちゃんのこと、まってたのに……っ」
久保 宗親 : 「ごめんね……ごめんね、ちえりちゃん」
抱きしめます。
「嫌いになったりなんかしてない。僕は、パパのこと嫌いになったりなんてしないよ」
ちえり : 「――…っ………チカちゃん、これからもずっと、パパとお友達で居てくれる…?」
久保 宗親 : 「もちろん! …これまでもこれからも、僕にとって誠は、もったいないぐらいの大親友だよ」
その答えを聞いたちえりは、堰を切ったように――抑えていた感情が溢れるように、声を上げて泣き出してしまいます。
ちえり : 「夢の中でパパが言ってたの…チカちゃんは、俳優さん? だから、どこにでもいるんだよ、って。寂しくなったら、テレビを付けてごらんって。それって、ほんと?」
久保 宗親 : 「えっ、どこにでも、は……まぁ、うん…………どこにでも居ます。…僕はどこにでも居るよ。映画館にも、テレビにも、舞台にも。ホラーやミステリ、ラブロマンス、ジャンル問わずどこにだって。…ちえりちゃんがもし、もうひとふり勇気が欲しかったなら、物語の中にきっと僕を見つけられる」
僕が、ちえりちゃんの心を支える”推し”になります(ガンギマり役者顔)
GM : そう、君は売れっ子になるしか無い。
久保 宗親 : それ以外の道を閉ざしたんだよ、今、あなたが。
あなたは無事に親友の三回忌法要を終え、舞台の稽古に戻ることでしょう。
後日、墨東区の劇場街にて、チャリティーイベントの一環として、とある舞台が上演されました。
演目は『銀河鉄道の夜』。収益の全ては、孤児院や難病支援団体に寄付されるようです。
ジョバンニを演じたのは、かつて病で親友と呼べる人を亡くした久保宗親でした。成人男性とは思われぬ、純心無垢な少年の様相に、観客は心を打たれたと言います。
あなたはこれからもフィクションを演じ続けます。
かつて自分が受け取った光を、誰かの心に届けるために。いつしかそれは、蠍の火のように夜空を照らすでしょう。
「僕もうあんな大きな暗の中だってこわくない。きっとみんなのほんとうのさいわいをさがしに行く。どこまでもどこまでも僕たち一緒に進んで行こう。」
――――――――――――――――――――――
GM : お疲れ様でした。
これにて
「親友(きみ)の”いく”セカイ」
シナリオクリアとなります。
久保 宗親 : テレビでも売れるしか無くなってしまった。ちえりちゃんを初め、僕の活躍を待ってくれてる数少ないファンの為に。
GM : これから売れたい君に、イデアを授けようじゃないか。
虚構侵蝕を解除した:5点
SNSで発信した:1 ※これについてはログを公開予定なので、その分を加味。
計6点だね。
久保 宗親 : 〈魅了〉や〈対話〉の専門技能が欲しいです。
GM : いいですね。あなたは遅咲きながら、苦難を乗り越えた実力派俳優として大成することでしょう。
それでは、改めてセッションの全行程が終了となります。おつかれさまでした。
久保 宗親 : おつかれさまでしたー。
・おわり・
キャラクターアイコン……立ち絵風男子メーカー
イメージエンディング…『カムパネルラ』sasakure.UK