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【フタリソウサ】天野廿三の事件簿 エピソード1-1【プレイログ】

・はじめに・
 これは『フタリソウサ』のプレイログを整理し小説風にまとめたもの、の#1です。
 GM/PL両者私一人なので、多少のぎこちなさはご容赦ください。
 また、同性同士のキャラクターがかなり近い距離で接触する描写が多々あります。苦手な方はお気をつけください。

・画像について・
 キャラクターアイコンについては、ぴくるーのメーカーで製作したものを使用しています。
 マップ画像は、フリーで配布されているものを使用しました。
 あわせて記事の最後に、クレジットを記載しております。

・プレイヤーキャラクター・

探偵:天野廿三
年齢:25歳 性別:男
探偵クラス:マニア
背景:暴走する知識欲
ファッション特徴:手入れしていない髪 
好きなもの:本
嫌いなもの:人間
職業:在宅プログラマー
詳細:
 引きこもりの延長で在宅プログラマーをしている。仕事関係者と直接会うことは少なく、リモートがメイン。
 地頭の良さが露見して少しずつ仕事と関係ない依頼を受けることが多くなってきた。
 過去のいじめ被害や複雑な家庭環境から、自己否定感たっぷりのひねくれ人間に成長した。しかし絶妙に性格が悪く擁護できない部分もある。
 笑い方が変。軽度のパニック障害あり。
技能:
 洞察>《嘘》《外見》
 鑑識>《情報》《科学》
 人間>《ビジネス》
 肉体>《追跡》

助手:牟田立夏
年齢:25歳 性別:男
助手クラス:情熱の人
背景:放っておけない
ファッション特徴:ノンフレーム眼鏡
好きなもの:天野廿三
嫌いなもの:天野廿三
職業:無職
詳細:
 高校を卒業した後、都会の一般的な大学を卒業し一般的な企業に勤める、かに思えたが、昨今の就職難で内定がもらえないまま二年が過ぎた。現在は都会での就職を諦め、地元に帰ってきた無職。
 学生時代、中高と天野いじめの主犯だったことを気にしていて、彼との再会は自分を見つめ直す良い機会だと思っている。
 最近の悩みは、当時見下していた天野には手に職があり、自分は無職なこと。
技能:
 洞察>《現場》
 鑑識>
 人間>《社交》《説得》《流行》
 肉体>《根性》

たまり場
 表向きの探偵:天野廿三
 たまり場の名前:『淡藤荘 202号室』
 どんなたまり場?
  二人がよく使っている通話アプリでテキストチャットも可能。
  天野が立てた部屋の名前が『淡藤荘 202号室』という。

▶たまり場フェイズ 思い出語り/思い出の品・感情決定

 僕の名前は牟田立夏。
 二年前までは、どこにでもいる”ちょっと”やんちゃで、ちょっと真面目なお上りの大学生、だった。
 さすがは就職氷河期と呼ばれる昨今。新卒なのにどこからも内定がもらえず、定職に就けないまま二年が過ぎた。
 おかげで妙にやる気が萎えて、早々に諦めるとすごすごと地方の田舎に引っ込んできた。

 実のところ、知り合いの多い田舎に帰るのはあまり気乗りしなかった。
 というのも、中学高校と僕はいじめの主犯だったことがあるからだ。もちろん当時は、そんな大層な自覚は無かった。ただみんなが盛り上がるからとか、その場のノリとか、相手の反応が面白いからとか……そういうくだらない理由で、一人の人間の人生をめちゃくちゃにした。
 今でこそ自覚もあるし、反省もしてる。苦い思い出だ。

 田舎に帰った僕を待っていたのは、そんな苦い思い出との再会だった。

 天野廿三。
 笑い方がキモいガリ勉の同級生。
 めちゃくちゃ頭がよくて筆記テストはほぼ満点。でもどんくさくて、実技は全部ダメ。いつも何かにおびえてて挙動がおかしかった。後から思うことだけど、あの頃からすでに何か、精神疾患や発達障害があったのかもしれない。
 そんな、ちょっと変なヤツ、を僕たちはよってたかって道化にした。
 もちろん許されないことだけど、そういうのが妙に楽しい時期ってあるじゃない?考えなしの僕たちは、ある日一線を越えてしまったようで、それから天野廿三は学校に来なくなった。
 教師からの説明は無くて、口々に馬鹿みたいな噂が立った。引っ越したとか自殺したんだとか…。実際はただの不登校で、近所のコンビニで偶然会った、なんて話も聞いた。
 不登校の癖にコンビニとか行ってんじゃねぇよ、とか言うヤツもいたけど、今にして思えば馬鹿みたいだ。天野にとって、学校にいることだけが苦痛だったんだから、それ以外の場所なら普通に出かけるだろ。
 つまり、そんなことを思い出しながら、地元のコンビニで昼食を選んでいたら、相変わらず挙動不審な天野廿三を見かけた。

 良い機会だから、謝罪もかねて話をしようと、僕から声をかけた。
 天野は、何かを堪えるように顔を歪めて口角を上げると「ひ、ひひ…」と小さく笑った。
 ……相変わらずちょっとキモい。

 驚いたことに、天野は立派に定職についていた。在宅のプログラマーで、細々とだが一人暮らしできるぐらいには稼いでいるらしい。
 ――そのとき僕は、これは何かの天罰なんだと思った。
 馬鹿にして見下しきっていた天野が、不器用ながらも自立して全うに生きている。比べて僕は、定職にも就けず、親の脛をかじりに田舎へ帰ってきた。

 頭の良い天野だから、プログラマーとしての仕事以外にも、いろいろと周囲から頼られるらしい。仕事とは無関係な”頼み事”を受けてしまうこともあるとか。

 僕は再会をきっかけに、天野が引き受けてしまった妙な案件を手伝う”助手”のようなことをやり始めた。全然足りないけれど、せめて何かの罪滅ぼしになればいい、と思ってのことだ。

牟田 : MIT 思い出の品決定表(56) > お気に入りの料理

 天野は、何かに夢中になると周りが見えなくなるたちで、何日も寝食を忘れることがある。
 これはヤバいな、と思って僕手ずから料理を作ってやった。といっても、インスタントに毛が生えた程度の炒飯だけど。

 天野の目の前に炒飯を差し出すと、過去の経験からかあいつはやたらと炒飯を混ぜっ返した。妙なものが入っていないと分かると、ようやく少量ずつ口をつけ始める。
 中学の頃、あいつの給食にゴキブリの玩具を入れたことがある。ゴム性の妙にリアルな玩具で、天野は胃が空っぽになるまで吐いた。結局、その日一日何も食べられなかったらしい。
 今になって、ひどくひもじくて眠れなかった、と恨み言を言われた。
 しおらしく謝る僕をみて天野は、けひっけひっ、と咳き込むみたいに笑っていた。

牟田 : 【やっぱりいじめたい】というのを強い感情として獲得します。気に入ってるところで。
天野 : 牟田さんは生粋のサディストなの?
牟田 : 愛故に。弱ってる天野を見ると、なんかこう……おバカな子犬を見てるような気持ちになる。
天野 : ボクはそんなことつゆ知らず、【信頼したい】という感情を獲得しようと思う。……気に入らないところ、に入れようか。ボクは牟田さんを信頼したいんだよ、それを裏切らないでね。
牟田 : わかってるよ。ということで、思い出の料理は炒飯でいいの?
天野 : ゴキブリでもいいよ。
牟田 : あまりイジりすぎると僕の心に刺さる。こう見えても気にしてるんだから。
天野 : わかった、じゃあ炒飯で。牟田さんがつくってくれた何も入ってない炒飯は美味しかったよ。
牟田 : それじゃあ具も入ってないみたいだろ。

GM/フェイズ管理 : 助手は【余裕】を3点獲得 たまり場フェイズ 終了

▶事件発生フェイズ

 残暑厳しい九月。
 その日、僕と天野はリモートで人と会う約束をしていた。
 神谷樹里と加山林蔵。以前、少しお世話になった登山サークル『凛々』の二人。
 僕も天野も、アウトドアに関してはまるっきり門外漢なので、実際の山歩きについて話を聞かせてもらったことがある。それ以来、神谷樹里とは度々話をするようになった。
 天野が、直接会って話をするのは苦手だというので、彼の部屋でパソコンの画面越しに会うことに。

 基本的に天野はしゃべらず、僕と二人のやりとりがメインに。
「神谷さんは、相変わらず山登りを?」
『はい、もちろん!ゴリゴリに装備を固めた登山も良いんですが、最近はカジュアルに楽しむアウトドアも流行っていて、初心者を集めてそういう催しをするのも悪くないね、って話してるところなんです』
『お二人も、休日に日帰りのデイキャンプなんていかがですか?』
 僕の横で、天野があからさまに難色を示す。
「いいですね、僕は悪くないと思います」
「牟田さん?」
 正気か、と言いたげに天野が目を見開く。
「お前もたまには外に出なよ。今月、コンビニと図書館以外でどこか出かけた?」
「…………ほ、本屋には行ったさ」
「わかったわかった」
『あはは。敷居が高く感じたり、苦手意識があったりするのは仕方ないですよ。でもデイキャンプはお手軽なので、初心者にも楽しみやすいと思います』
『なんなら、明日一緒にどうですか?ちょうど林河山に行く予定なんですよ』
「明日ぁ…?」
「いいじゃん、明日。何か納期厳しい仕事でもあるの?」
「なっ…ないですぅ………」
 天野は、強く推されると断れない。悪意が無ければなおさら。
 無理強いが通るヤツは、どうしても立場が弱くなる。
 もう一押しかな。
「どうせ一日でしょ。夜には帰れる。…それにバーベキューは悪くないよ」
「…………へ、へっへへへ……わ、わかった…」
 何がおかしいのか唇を歪ませて笑いながら、了承の意を伝えてくる。
 ……ちょっとキモいな。
 しかし、友達とキャンプか。大学の頃は時々行ったけど、あんまり親しいヤツもいなかったし、そんなに楽しくなかったんだよな。
「楽しみだね」
「……う、ん」
『キャンプ場は懇意にしてるところなんで、こちらから連絡しておきます。準備してもらうのは最低限の荷物だけで……――』
 加山さんの説明を聞きながら、明日の準備をする。
 大きな道具なんかは現地で借りられるそうなので、お客さんの僕らは本当に最低限の荷物で参加することに。
 天野は終始、何か文句でも言いたげだった。それでも準備をしていたのは、友達と出かけること自体は嬉しかったかららしい。

「持って行くものは、本当にこれだけでいいんですね?」
『おっけーです』
『いやー、明日が楽しみだな』
「……あの」
「どうした?」
「…えっ、んん…えと…………ボクの勘違いかもしれないですけど、加山さん、もしかして風邪をひかれてませんか」
『あー、はははっ!すみません、その通りです。最近夜間に急に冷え込むでしょ。油断して身体を冷やしましてね。――安心してください、キャンプには行けますよ!』
「あ、あぁ…まぁ、季節柄、ね。そういうこともありますよね」
 天野は妙に歯切れ悪く納得しかねる様子だったが、それ以上の追求はしなかった。
 それから僕たちは、待ち合わせ場所と時間を決めてリモート通話を終えた。

「さっきの何?」
「なっ、なんでも……いや、あれは風邪じゃない気がしたけど…んー、気のせい、だと思う。深い意味は無いんだ。まだ何も起きてないしね…」
「不吉なこと言うなぁ…。天野みたいなヤツがそういうこと言うと絶対なんか起きるじゃん。やめろよな」
「はへへへへっ……ごめん」
 それから天野は、僕が帰るまでずっと「林河山…林河山…」とつぶやきながら、地図アプリでその山を調べていた。たぶん、夜中もずっと調べていたと思う。ストリートビューの世界なら、登山サークルの二人よりもずっと歩き慣れていそうだが、さすがに山の中は表示されないんじゃないかな。

 翌日、待ち合わせの駅にやってきた天野は、出発する前からへろへろに草臥れていた。眠れなかったんだと思う。
 天野は軽度のパニック障害を持っているから、登山サークルの二人にも軽く説明して適宜休憩を挟んでもらった。
 案の定、電車で移動している間はきょろきょろと落ち着きが無く、終始変な汗をかいていた。人の少ない山道に入ると、それも落ち着いてきて、ようやく神谷や加山としゃべる元気が出てきたようだった。

 こういう風に、生活に影響が出ているのを目の当たりにすると、いたたまれない気持ちでいっぱいになる。
 当時、天野をいじめていた奴らは他にもいる。なのに結局僕だけがここにたどり着いてしまった。
 こういう巡り合わせと割り切って、僕だけでもあいつの負った物と向き合ってやらないといけない。

 僕たちが林河山のキャンプ場についたのは昼前。
 朝七時前後から動いていたから、都合二時間弱の旅だった。
 僕も少し疲れていたけど、神谷樹里が言うには水をくんでこないとコーヒーも入れられない。ということで、キャンプの設営を加山林蔵に任せて、神谷さんを筆頭に僕ら三人は水くみへ。

「空気がおいしいですねー!」
 僕は、歩き慣れない山道に足を取られている天野を、半分引きずるようにして彼女について歩いた。
「車でも一時間かからないぐらいかな。……都心からはちょっと離れてるけど、それでも日帰りできる範囲か」
 他愛ない話をしながら歩いていると、前方を歩く神谷さんが突然立ち止まった。
「どうか、したん…です、か……」
 横に立って気がつく。

 死体だ。
 彼女の視線の先には、”死体”があった。

 野山に放置されているにしては妙に小綺麗で、アウトドア用のレインウェアを羽織っている。その明るいカラーと対照的に、腹部には黒い穴が開いてそこから赤黒い液体が流れていた。
 あまりにも現実感が薄れていて、神谷樹里が悲鳴を上げるまで、僕はただそこに突っ立って死体を眺めていた。

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・エンドクレジット・
マップ……おばけの神秘堂
キャラクターアイコン……海ひつじ屋めーかー
NPCアイコン……ユーザーアイコンさんメーカー

・おわりに・
本作は、「平野累次」「冒険支援株式会社」及び「株式会社新紀元社」が権利を有する『バディサスペンスTRPG フタリソウサ』の二次創作物です。
(C)平野累次/冒険企画局

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