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Board Game Analysis [Case of SUEZ’73 ] Part4

The Battle of Chinese Farm: October 15-19,1973

Analysis by military type Chapter 2

 前章では両軍の主力戦車の優劣を「火力」「防御力」の数値に「戦闘練度」という数値がどのように影響を及ぼすか、という視点で考察を行いました。以下、今章では歩兵部隊(非AFV)に焦点を当て、「装甲車両」とはまた違う視点からゲームに与える影響を考察して参ります。

Anti Tank / BRDM-Sagger

「装甲戦闘車両群」に属する一種である「戦車」というカテゴリーは厚い装甲を有し、高火力持つ陸戦最強の接敵兵器としてあらゆる標的を粉砕し、蹂躙し尽くしてきました。勿論、現代でもその立ち位置に変わりはありませんが、第四次中東戦争において本格的にその優位性が揺らぐ事態に直面します。

 その主な原因は、機動力のある対戦車部隊の編成ではないでしょうか。アラブ連合軍は、イスラエル軍が自信を持つ戦車戦術の優位性に対抗する為に対戦車支援兵器を主装備に持つ”対戦車部隊”を編制するに至ります。もちろん皆様もご存じのように対戦車部隊は第一次世界大戦以後から軍隊に正式編制されるようにもなってはいますが、機動性を有し、小規模で多大な戦果をもたらす火力を装備した対戦車部隊が強烈に認識された時期が1973年前後だと推察します。第四次中東戦争は、歩兵でも携帯可能な高火力対戦車ミサイルなどというゲームチェンジャーな支援兵器が東側諸国の戦術ドクトリンに影響を与えたことが伺える一端なのかもしれません。

 このシナイ半島における対戦車部隊の運用は、戦史に特筆されるほどの戦果を残しました。歩兵部隊が用いる対戦車兵装として従来から存在する「RPG-7」が対戦車兵器として本格的に組織運用され、それに併せてこちらも携帯可能な小型ミサイル「9M14」を主軸とし編成されたサガー中隊等を鑑みるに、兵器としての可能性と期待値は軽装備にかかわらず非常に大きかったのだろうと拝察します。

 対戦車兵装の支援部隊がアラブ連合軍にのみユニット化されている点、そしてその規模は中隊規模で運用されている点。この2点は、エジプト軍の部隊運用において戦術的に考慮が必要とされるところでしょう。SUEZ’73の魅力と言いますか、戦術的興味を強く惹くポイントだと私は考えます。

 先述しましたが、対戦車部隊はエジプト軍のみユニットが存在します。全て中隊規模の編成………軍事予算の効率化の観点からすれば、師団直属の一個大隊(ゲームでは3個中隊)の対戦車部隊を編成し、適宜各旅団に派遣するスタイルの方が費用対効果が良いのかも知れません。

 それでは、対戦車中隊とサガー中隊の各指数表とレーダーチャートをそれぞれ見ていくとしましょう。

Anti-tank company

 戦闘序列に旅団名が無いことから、対戦車部隊は師団司令部直轄の麾下中隊として、各師団に一個大隊(3個中隊)づつ配属されているのだろう、と推察しています。移動手段は「W」(Wheel『恐らくほぼ全ての車両が総輪駆動車でしょうか。)と機動力はあるのですが、被装甲ユニットに分類される為、防御力値は地形影響表に依存します。尚且つ通常射撃対象として遠距離からの射撃や被砲撃対象ユニットにもなりやすい点も考慮すべきユニットです。

BRDM-Sagger Company

 サガー中隊はAFV(装甲車両)ユニットに種別されており、第16歩兵師団にのみ3個中隊が(一個大隊相当)配属されています。シナイ半島における戦争は両軍共に数個師団が展開し覇を競いあいました。このような軍団規模で展開された戦争において高々4個中隊の特化部隊が強い影響を与える筈もありません。デザイナーの製作意図によってはゲーム作成段階において、省略やより大きな部隊に吸収されていても不思議では無いと感じます。が、わざわざ厚紙のユニットを作成し、指標値を与える労を割き、コンポーネントにサガー中隊を加えた点にデザイナーの製作意図が強く感じられるのも事実です。

  さて、話を戻しましょう。第一世代の対戦車ミサイル、と謳われた「9M14]の脅威を如何様にデザインしたのかでしょうか。まずは、他AFVユニットとの相違点を拾い上げてみました。

 「対戦車力(1h)と対戦車力(2h)ともに数値は「4」」

「AFVユニットにおいて対戦車力(2h)「4」はゲーム内で最も高い数値」

 遠距離戦用の兵器をゲーム内でシミュレートする際、往々にして「射程」という概念をルールに盛り込むことが欠かせなくなります。Squad Leader(分隊級)やPanzerBlitz(小隊級)のような戦術級ウォーゲームがそのよい例でしょう。そして、それは作戦戦術級と謳われるSUEZ’73(大隊級)においても例外ではありません。部隊規模は2クラス程度大きくなるため、見た目は”作戦級”と呼ぶに相応しい広大な戦域がマップ上に展開されています。しかしゲームの根本的なスタイルは”射程”というルールにより、「敵部隊との相対的な距離感」や「彼我の部隊における地形の高低差」などの”戦術級”的思考がより強く求められるデザインとなっています。

 ざっくりAI検索で1973年当時の戦車射程を訪ねてみた処、このような回答を見ました。

 当時の戦車における有効射程は2000m前後の数値だそうです。SUEZ’73における1へクスの対辺距離が1500m。言わずもがな2へクス離れると対辺距離は3000m。対戦車火力(1h)から対戦車火力(2h)への火力値低減は物理的帰結としても相応、と思われます。

 イスラエル軍の主力戦車「M-48」の対戦車力(1h)は「5」の火力を有しますが、対戦車力(2h)では「3」にまでその火力は減衰します。ほぼ3キロ離れた敵部隊に投射する火力は40%減少するようにSUEZ’73では調整されています。 「敵部隊に対して敵間距離が長くなるほど、火力は分散され低減する」という一般的な感覚、「火力と射程」の反比例するこの関係は、ミサイルという「弾頭に爆薬を載せ自己推進装置を備えた兵器」の登場により、部分的に否定されることになります。

こちらもAI検索の結果ですが、9M14の有効射程距離は最長3000m。ゲーム内において2へクスの対辺距離をカバー可能な数値です。

 携帯型の対戦車兵装やV2ロケットなどに関して私は門外漢でもありここでは詳細を控えますが、ミサイルそのものの概念は当時はすでに世間一般に周知されていたとしても、その発展形として現れた携帯型のしかも誘導装置によって目標に命中させ得る「弾頭に爆薬を積み、自己推進装置を備えたミサイル」の登場はその常識を打ち砕くほどの最新兵器だったのでしょう。「距離が開いても破壊力が低下しない」という異常な効果はイスラエル兵に強い脅威を感じさせた事は想像に難くありません。イスラエル軍の主力戦車「M-48」の火力減衰については先述しましたが、対戦車力(1h)~(2h)の距離間において火力減衰が発生せず「4」火力を維持するサガー中隊の持つ「9M14」はまさしくSUEZ’73において対戦車兵器として突出した優位性を発揮したものと思われます。

 前章でもお話しましたように同程度規模部隊同士の戦闘ならば、火力「1」の違いは平均損害値「±0.5」の差異を生み出します。これはサガー中隊が同規模のM-48戦車中隊に対しても2へクスの戦闘距離を保ち得るならば、「押し勝てる」ことを意味しています。

 しかし残念ながら、ゲームにおいてその影響は局所的に描かれるのみです。瞬発的な破壊力は発揮され得るも戦車ほどの防御力は無いために、単発の戦闘でさえ損害を吸収出来ず、二の矢が継げない状況です。「SUGGESTIONS ON PLAY」にも言及されている通り、サガー&対戦車中隊は後方に控え、弱体化したイスラエル軍のAFVユニットを対象に「敗残兵狩り」(表現が少し悪いですね。)に投入されるべき、とデザイナーは提案しています。

Mechanized Infantry

 SUEZ’73に登場する兵種の中で、機械化歩兵は最も汎用性が高いユニットと言えます。APC(装甲兵員輸送車)からの”降車”または”乗車”とユニットの状態を切り替えることにより、AFVユニット(”乗車”状態)と非AFVユニット(”降車”状態)それぞれの長所を状況に応じ使い分けることが可能です。

 AFVと非AFVユニットの長所と短所をSUEZ’73ではどのように表現しているのでしょうか。軽く例を挙げるのみに留めますが、まずAFVユニットの長所として挙げるならば、敵からの遠距離(3へクス以上)攻撃がほぼ存在しない点です。

 遠距離から可能な唯一の攻撃方法は砲兵部隊の「弾幕射撃」しかありません。その為、AFV部隊同士の戦闘は2へクス以内の近接戦闘に終始しますし、またAFV対非AFV部隊という構図の戦闘は、3へクス以上の距離が空くと、非AFV部隊に攻撃手段が存在せず、一方的に攻撃を受ける、という事態が発生してしまいます。

 機械化歩兵もAFVユニットに分類される為、上記の恩恵を受ける点は強いアドバンテージと言えます。しかしながら、防御力が「2」というAFVユニットにおいて最も低い値は、対AFVユニットに対し決して有利に働かないのも事実です。

 それでは非AFVユニット(”降車”状態)の利点はどのようなものでしょうか。「AFVユニット時に比べ、防御力は地形影響表に沿って算出される状況が増え、結果的に防御力は高くなる」、この点は拠点防御において効果を発揮します。戦闘地形表の防御力(P欄)はAFVユニット時の防御値「2」を必ず上回るように設定されていますし、両軍共に歩兵部隊を投入したい地点が必ず存在します。これは歩兵部隊特有の回復性や抗湛性の高さを表現している、と私は浅慮しています。そして、欠点としては足が遅い。そして先述しましたが、決定的な弱点として対AFV戦闘において遠距離での戦闘が不可能な点が挙げられます。

 先述しましたように、機械化歩兵は汎用性の高い歩兵部隊である理由を軽く紹介をしました。以下では各々の軍における詳細を見て行くことと致しましょう。

Number of pieces : Egyptian vs. Israeli

 この章からエジプト軍・イスラエル軍の機械化歩兵に対する詳細な考察を行い、以降は「各種歩兵部隊」そして「砲兵部隊」と登場ユニットの解説を行う予定にしていましたが、取りやめることにしました。ここからは、未解説の各種部隊の説明を織り交ぜながら、SUEZ’73というゲームの最終考察に突入することと致します。

 突然の考察に対する方向性の変更をお許し下さい。簡単に釈明するに、こちらの考察スタイルの方が面白くなるのでは? と愚考したに過ぎません。もっとも、こちらの変更に私のモチベーションも上がってしまっています。改めて勝手ではありますが、考察者のわがままをお許し下さい。

 登場する各兵種別にカテゴライズした資料の精査を横軸。ゲームターン数を経過時間として縦軸と捉えます。そのようにデータを交差させることで今より面白く深堀出来る考察を完成させ得るかもしれない、と思っています。

 私の作る資料を基にしてお話することですので、とても「緻密」と言える考察ではありませんがユニットに関する複数の視点から様々な傾向を読み取ることが叶えばゲームをプレイする楽しみが少しでも増えるのではないか、と愚考しています。その為、愚考に愚考の末、今章からいきなり「まとめ」の章に突入することに致しました。

 更に謝辞を重ねることになりますが、「まとめ」の考察も今章だけで纏める分量ではありません。考察の続きは次回「考察4 最終回」に持ち越すことになること、と今回はその触りをお見せすることを次回の「予告編」とすることで考察3を区切り、と致します事をご了承下さい。

 まずは、ゲームに登場する全ユニット数を「各兵種別」「大隊/中隊規模」にカテゴライズしたグラフ「兵種別ユニット数(全ターン合算)」を参照下さい。中央から左右に開いた横棒グラフですが、左の青サイドはイスラエル軍。右の赤サイドはエジプト軍と色分けで表示しています。兵種別のデータ要素は、色の濃淡で大隊/中隊を色分けし、データ内の数値は部隊数です。

 グラフタイトル横にはユニット数を記載しています。エジプト軍のユニット数「164」は全数ですが、イスラエル軍は以下の理由により全数「81」から「78」に総数を変更しています。

 一目ご覧になれば、両軍の比較とそれぞれの個性が滲み出るような両軍の特徴がお分かりかと思います。

兵種別ユニット数(全ターン合算)

 1973年当時、エジプト・アラブ共和国の人口は約3700万人。産油国でもあり軍事費に回す予算も潤沢だったことでしょう。では、当時のイスラエルの人口はいかほどだったのでしょうか。AIに尋ねてみた処、明確な資料は出て来ませんでしたが、1960年代にはイスラエルに約210万人の国民が生活していたそうです。20世紀終盤の世界の人口増加率は年平均2%程度だとだったそうですからざっくりと概算で、240~250万人という処でしょうか。250万人と仮定して、両国の人口比はだいたい15:1……中東戦争と名付けられた戦争に参加したアラブ連合軍諸国の国力を含めると想像しがたい比率になってしまうのではないでしょうか。

シナイ半島のこの状況に加え、ゴラン高原でもシリア軍と戦火の火蓋は切られています。四面楚歌の状況の中、アメリカの後押しがあったとはいえ、この袋叩きに合うような中東戦争をイスラエルは良く生き延びたものです。

 話が逸れました。ではグラフから読み取れる兵数を見てみましょう。エジプト軍のユニット数「152」。大隊規模部隊数が「116」、中隊規模部隊数が「36」(三個中隊で一個大隊と算定して12個大隊程度。)

 対してイスラエル軍ユニット数は「68」。大隊規模部隊「54」、中隊規模部隊数「14」(三個中隊で一個大隊と算定して5個大隊に僅かに届かない程度。)……エジプト軍との比率は1:2以上の数値です。やはり、人口規模も含めて国力の差は大きい、と言えるでしょう。

 このグラフだけを参照すると、エジプト軍はシナイ半島に展開するイスラエル軍の抵抗を抑え込むに十分な部隊数を維持している、との結論を出しても間違いないように思えます。

 それでは、両国の兵種別部隊数に目を移してみましょう。各兵種がどのような比率で構成されているか、という点は両国の軍事ドクトリンの方向性の一端を垣間見ることが出来ると愚考します。この視点は、プレイヤーの戦略的・戦術的思考の方向性に影響を与える要素とも言えるでしょう。SUEZ’73では、AFV(装甲戦闘車両)化された部隊と通常部隊「非AFV」(一部歩兵部隊は移動に際し車両を利用可の部隊もあるが、装甲化された車両ではない。)の二種類に戦闘ユニットを大別しています。まずは、エジプト軍部隊の各中隊数を、三個中隊で一個大隊と算定し、概算を大隊規模数で紹介してゆきましょう。

Egyptian unit’s 

 エジプト軍の軍容は、AFV(装甲戦闘車両)に該当する部隊が61個大隊強(戦車部隊「34個大隊強」・機械化歩兵「26個大隊」・BRDMサガー【グラフでは「対戦車」に含む】「1個大隊強」)。装甲戦闘車両という”盾”を装備した部隊であるがゆえに、敵部隊と最前線で対峙する部隊たちと言えるでしょう。

 非AFVに該当する部隊は62個大隊(各歩兵部隊「37個大隊」・砲兵大隊「25個大隊」)とAFVとやや近似の数値のユニット数となっています。非AFVユニットは、地形と射程に強く影響を受ける部隊である、とも言えます。コマンド・降下兵・工兵・歩兵の4種の歩兵部隊は機械化歩兵と異なりイスラエル軍の「戦闘における通常射撃と砲兵部隊の間接射撃」の恰好の獲物です。防衛線を歩兵により構築する状況が発生した場合、可能な限り、防御値を有利にし得る地形に拠点を築くべき部隊です。戦車部隊との戦闘は極力避けるべきですし、決して野外決戦に投入して良い部隊ではありません。

 イスラエル軍の砲兵部隊のほとんどがAFV化した砲兵部隊であるのに対し、残念なことにエジプト軍砲兵部隊は全て非AFVの砲兵部隊としてゲームに登場します。この差は非常に大きく、常に敵砲兵との距離を勘案していないと、一方的な砲撃を受ける事態を招きます。起動性を犠牲にしてはいますが”乗車”していない歩兵種は比較的防御値が高くなりますが、”装甲”を持たない装輪車両を移動の軸としているエジプト軍砲兵部隊は地形戦闘表の恩恵を受け難く、敵砲兵の間接射撃(支援射撃・弾幕射撃)の対象ともなり、”攻撃を受け易い”部隊言えます。

 Israeli unit’s

  イスラエル軍はエジプト軍に比べ圧倒的にユニット数が足りていない現状です。グラフを一見しただけで、歪さがお分かりになるかと思います。

 イスラエル軍の歩兵部隊は12ユニット(8個大隊、2個中隊、2個ジープ中隊)で編制されていますが、ジープ中隊以外の歩兵部隊は機動力向上のため、ハーフトラック使用していたようです。

AFV(装甲戦闘車両)に該当する部隊が43個大隊弱(戦車部隊「27個大隊強」・機械化歩兵「7個大隊」)、準AFV「9個大隊弱」(大隊運搬用ハーフトラック隊「8」・中隊用HT「2」)。 非AFVに該当する部隊16個大隊(歩兵部隊「1個大隊」・砲兵大隊「15個大隊」)。合計で59個大隊弱の部隊編成です。

 特筆すべき点は、一個歩兵大隊の例外を除き、他の全ての部隊が機動化されているという兵員輸送車両の配備率っです。「総機械化」と呼べるほどには装甲戦闘車の配備は進んでいないにせよ、機械化歩兵以外の歩兵部隊にはハーフトラックが配備されています。敵対するアラブ連合諸国との圧倒的な国力差(人口差)の違いはエジプト軍の兵役動員数を見ても明らかです。イスラエルは、軍人に対して戦場からの生還率を高める努力に非常に注力している、とよく耳にします。敵対国家との国力差を必死で埋める為の政策の一環と言えるものなのでしょう。

 まずは両軍のユニット数差のグラフを見て頂きました。同種のグラフをもう一つご覧ください。こちらはもユニットが持つ「戦力」値を兵種別に集計した表となります。

Combat power : Egyptian vs. Israeli

兵種別「戦力」(全ターン合算)

 基本的な解説は、「ユニット数」集計表に基づいて上述したものと同じです。今回ご覧頂きたいのは、グラフ下部に記載した基礎集計表の「戦力」値の兵種割合です。

 エジプト軍は、やはりオールラウンドの戦況に対応可能に思えます。理由は兵種比の50%(一般歩兵種+機械化歩兵)を超える潤沢な歩兵部隊にあります。非人道的な表現をお許し頂ければ、私の稚拙な軍事的知識でも歩兵部隊が戦闘において、最も汎用性が高く、コストパフォーマンスに優れ、比較的交代要員を確保し易い戦闘力であることは明瞭な事実に思えます。エジプト軍はその点において、イスラエル軍よりも汎用性の高い軍隊と言えるのではないでしょうか。

 反面、狂気に満ちているように感じるのがイスラエル軍の兵種割合です。総「戦力」値の50%以上を戦車部隊に振り分けています。歩兵部隊の「戦力」値は20%超に過ぎません。動員数の少なさを高火力の兵装で補う……このスタイルは豊かな経済力を有する国家にしか具現化出来ないスタイルです。建国当時のイスラエルの人口は80万人超とされています。四方の国家を敵に回した建国間もない国家の軍事組織にとって圧倒的な人員不足解消は喫緊の課題だったでしょう。短期間での人口増加は望めません。不足な部分は潤沢な資金に頼らざる得ない………ですが、エジプトにも資金源は存在します。潤沢なエネルギー資源により生まれるオイルマネーは、イスラエルが支援を受けているユダヤ資本に決して引けを取らないだろうとも考えます。やはり、エジプト軍は人的資源に資本を投入し、人的資源の確保が不可能なイスラエルは、兵器・装備など火力の底上げを強引に推し進めるような物的資源に多くの資本を投下したのでしょう。私の愚考は結局の処、両国の政治的立場を含め、両軍が採用した軍事ドクトリンのありように左右されてしまう問題なのかもしれません。

 少々、私個人の勝手な憶測や妄想が文面に滲み出てしまいました。ご容赦下さい。

  今回は、この辺りで紙数が尽きた、ことと致します。

 次回の考察は「各ターン毎のユニット数と「戦力」値の比較」そして、「戦闘射撃における各兵種別の射程の影響」を考察の材料にして、可能な限り戦略的視点からSUEZ’73の考察に挑みたいと考えています。

  予定を急に変更しました謝辞を含め、考察対象として用意した両軍における機械化歩兵の各指標値集計と主だった部隊のレーダーチャートを最後に記載いたします。

ご興味のあるゲーマーを趣味とする皆様。宜しかったらご査収下さい。

最後までお付き合い下さり、誠に有り難う御座います。

Board Game Analysis [Case of SUEZ’73 ] 最終回 Part5に続く。

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