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【フタリソウサ】天野廿三の事件簿 エピソード1-7【プレイログ】

・はじめに・
 これは『フタリソウサ』のプレイログを整理したもの、の#7です。#1はこちら
 GM/PL両者私一人なので、多少のぎこちなさはご容赦ください。また、公式ルールブック掲載シナリオ『山の死体』の多大なネタバレを含みます。PLとして楽しみたい方は閲覧非推奨です。
 なお、同性同士のキャラクターがかなり近い距離で接触する描写が多々あります。苦手な方はお気をつけください。

・画像について・
 キャラクターアイコンについては、ぴくるーのメーカーで製作したものを使用しています。
 マップ画像は、フリーで配布されているものを使用しました。
 あわせて記事の最後に、クレジットを記載しております。

・プレイヤーキャラクター・

探偵:天野廿三
年齢:25歳
性別:男
探偵クラス:マニア
背景:暴走する知識欲
ファッション特徴:手入れしていない髪 
好きなもの:本
嫌いなもの:人間
職業:在宅プログラマー
感情:
 気に入っているところ・「ボクが居なくても」
 気に入らないところ・『信頼したい』『気にかけてくれる』『責任取らせてやる』『頼らなきゃいけない』『嫌わなきゃいけない』
「助けてくれる」「嫌わなきゃいけない」「イライラしてる」
技能:
 洞察>《嘘》《外見》
 鑑識>《情報》《科学》
 人間>《ビジネス》
 肉体>《追跡》

助手:牟田立夏
年齢:25歳
性別:男
助手クラス:情熱の人
背景:放っておけない
ファッション特徴:ノンフレーム眼鏡
好きなもの:天野廿三 嫌いなもの:天野廿三
職業:無職
感情:
 気に入っているところ・『やっぱりいじめたい』『弱いところ』『僕の…』「芝居上手」「被害者面」
 気に入らないところ・『もどかしい』『一人で何でもできる』「笑うところ」「説明不足」
技能:
 洞察>《現場》
 鑑識>
 人間>《社交》《説得》《流行》
 肉体>《根性》

・前回までのあらすじ・
 全てのカードは開かれた。

▶真相フェイズ 事件の振り返り/犯人はお前だ

 僕たちは加山林蔵の自宅に向かった。時刻は六時半頃。もう夜分と言って良い時間だ。
 天野がインターフォンを押すと、中から男性が出てきた。神谷も西口も、もちろん僕たちも知っている『加山林蔵』が。
「……どうも。こんな時間に、どうかしたんですか?」
 加山は、以前あったときと同じような具合で首をかしげた。
「先日の事件のことで、――桐山さんに話があるんですけど」
 天野が桐山の名前を出すと、玄関口に立った男は一瞬驚いたような表情を見せた。その後、僕ら四人を順繰りに見渡して、
「……――外で話すことでも無いでしょう。上がってください」

――◆――◆――◆――◆――◆――

「さて……」
 部屋に上がると、天野はテレビ前のソファーに陣取った。
「それじゃあまず、ボクたちが最初に遭遇した事件から――」
 祈るように指を組んで深く息を吸う。
「昨日の十二時前、ボクたちは林河山で『柊裕翔』の死体を発見しました。死亡時刻は前日の午後三時前後。現場に争った形跡はなく、知人ないしは身内の犯行でしょう。凶器もなく、後に『東山武』の家から発見されています。…二人は事件の直前に会っており、当初はもちろん東山武が疑われました。しかし翌日――今日ですね。東山宅から当人の自殺死体が発見され、事件の自白を思わせる遺書も見つかった」
 加山林蔵を名乗る男が頷いた。
「俺も警察から知らせを受けましたよ。すっきりはしませんけど、これで事件は終わった。それでいいはずだったでしょ」
「そう焦らないで。話はここからだ」

 僕は窓硝子に背中を預け、女性二人は玄関近くに立って静かに話を聞いていた。
「今は九月の半ば。もうピークは過ぎたといっても、まだまだ残暑が厳しく暑苦しい日が続いていますよね。午後三時から翌日の十二時まで、単純計算で約20時間。まるごと熱帯夜に放置されていたにしては、現場が綺麗だったし、なおかつあの死体は冷たすぎた」
 そう、あの死体は鍾乳洞の冷気を利用してかなりの時間、冷却されていた。だから、警察も死亡時刻を絞りきれなかったはずだ。そして、時折吹き付ける強風によって、斜面の下へ転がり落ちてきた。
「もちろんこれは犯人による偽装工作です。ならば『一昨日、午後三時前後』に明確な不在証明ができ、被害者の知人である人物が犯人、ということ」
 この時点で、事件の容疑者は二名に絞られる。加山林蔵と神谷樹里だ。彼らは、被害者と同じ登山サークルに所属しており、午後三時前後、僕たちと一緒にしゃべっていた、という明らかなアリバイがある。
「二人のうち、事件発生と同時刻に林河山へ行っていたのは一人。あなたですよ、桐山さん」
 誰とも無く息をのむ。

「林河山の洞窟付近は、鍾乳洞から吹く冷風に影響されて植生が少し変わっているんです。具体的には、季節感に若干のズレがある。まるで春の残り香のように、まだスギの花粉が舞っていた。――桐山さん、あなたはひどい花粉症持ちでしょう」
「ご明察です。どうして分かりました?」
 良い質問だ。
 リモートで僕たちと会話する以前に、桐山は林河山へ行っていた。それは彼の鼻炎症状が証拠になる。しかし、何故わかったのかは、僕も知りたいところだった。
「一瞬画面の外へ離席したとき、あなたが目薬をさしていたからです。ただの風邪に目薬は要らないでしょう」
「……素晴らしい洞察力ですね。たしかにそれなら、犯行が可能だったのは俺だけのようだ。だが、動機という観点で言えば、今ひとつ説得力に欠けるとは思いませんか?」
 不在証明の謎は暴いた。次は動機だ。
「あなたが『桐山省吾』ということが、一番の動機になるんです」
 そう。この男は三年間『加山林蔵』を名乗ってきたが、全くの別人なのだ。
「神谷さんに確認したんですが、加山さんは花粉が気にならない体質だったらしいですね。逆に、桐山省吾はシーズンになると外出を控えるほど、ひどい花粉症だったとか。……加山林蔵を名乗るあなたは、一体何者か。それは三年前に行方不明になった『桐山省吾』その人に違いない。柊裕翔は、些細な違和感からあなたを疑い始めた。……彼と東山さんは頭が良かったですよ。あなたが加山さんの死体を埋めた地点まであらかた予想が付いていたんですから」
 それを厄介に思った加山――桐山は二人の殺害計画を立てた。
「ここからはボクの推測だが…三年前、あなたと加山さんの間で何かトラブルがあったんでしょう。原因はおそらく、桐山省吾が過去に刑事事件を起こしていることについて」
「もうすべてはお見通しらしい。――お話ししましょう」
 桐山省吾は目を伏せると、覚悟は出来ている、というように一つ頷いた。

「三年前、俺の過去を知った加山は、最初こそ気を遣ってくれていたけど、だんだんと高圧的に接してくるようになったんです。しまいには、金銭まで要求してくるしまつ」
 桐山は呆れたようにため息を吐いた。
「……そんな時、計画を思いついたんです。厄介な加山から逃れられて、自分の過去もチャラにできる。魔法のような計画だ、と」
「――なるほど。あなたと加山さんは、背格好がよく似ていた。だから成り代わりも可能かもしれないと」
「もちろん、チャンスが無ければ諦めるつもりでした。ははっ、だけど運は俺に味方した。少なくともあの時はそう思ったんです」
 背格好が似ているだけで、周囲を欺しおおせるわけが無い。きっと顔面も似るように整形したのだろう。それには時間が必要だったはずだ。
 僕の疑問に答えたのは天野だった。
「『遭難しかけ仲間を無くし、傷心している』という風を装えば、知り合いと会うことは避けられた。周囲へのカモフラージュも完璧だったはずですね」
「最初の一月は、いつバレるかと気が気じゃなかったですよ。…でもそこからは夢のような時間だった。煩わしい隣人も、影のようにこびりついた過ちも、全てが無かったことになったんだから」
 加山林蔵を名乗っていた男は、心底嬉しそうに破顔してから、次の瞬間にはすっと虚しさが残る表情へと落ちて、天野の向かいのソファーへ、深く沈んだ。
「――……三年です。俺が人を殺して手に入れた時間はたったの三年。どう思いますか?」
「割に合わない」
 天野は静かに、首を横に振った。

「一体いつから俺のことを疑っていたんです?」
「いつから、と言われれば、最初から。――リモート通話の時、『風邪ですか』と聞いたボクに合わせて、あなたは同意した。その奇妙な嘘がずっと引っかかっていました」
「そんなに前から…」
「……加山林蔵は花粉症にならない。部外者のボクや牟田くんはともかく、神谷樹里はそれを知っていた。だからあの場では嘘を吐くしか無かった。そうでしょう」
 桐山省吾は頷いた。
「天野さんは、随分疑り深いな」
「これは、ボクが今までの人生の中で学んだ一つの答えなんだけど、『人間は人間故に、嘘を吐き、欲をかき、間違える』。……――だから人間は嫌い」
「お互い、なかなかに壮絶な過去だったらしい」
「ボクの人生は、あなたほど捨てたもんじゃ無いようだよ。…そうだね、牟田くん?」
 天野が肩越しに僕を振り返った。
「そうあることを願って、鋭意努力はしてますけどね」
 窓の外から、サイレンの音が近づいてくる。それは次第に大きくなり、この家の前で止まった。
 警察が踏み込んできた時、リビングに集まった関係者たちは一様に言葉を失い、静かだった。
 桐谷省吾も、おとなしく警察に連行され事件は幕を閉じる。

 帰路につくタクシーの後部座席。
 天野は、僕の膝に頭を預けて少しの間目をつぶっていた。車窓から外を見ると、色んな物が目に入って気が休まらないようだ。
 僕は天野の蓬髪を少しなでながら、今回の事件を反芻する。何故、柊は桐山が生きていると気づけたんだろうか。
「……どんなに外見を繕っても、過去の過ちは消えない、か」
「…それって自分の話?」
「天野、お前ほんとマジでムカつく」
「ふへへっ……」
 車窓の外を、すっかり暗くなった田舎の繁華街が流れていく。

▶真相フェイズ 終了

▶終了フェイズ 開始

 桐谷省吾は、殺人と死体遺棄、公文書偽造などの疑いで送検されるらし。
 結局全ては警察の手柄になって、僕たちの名前はどの報道機関にも出なかった。
 僕は少し不服だったが、天野はそれでいいんだ、と言った。たくさんの人間と話さなきゃいけなくなったら困る、らしい。

 後日、天野と僕が利用しているチャットアプリへ、神谷樹里から長文のチャットと共に画像データが届いた。
 事件の後、登山サークル『凛々』の状態に、彼女はひどく心を痛めていた。それからどうなったろう、と画面をスクロールする。
 そのテキストは、彼女らしい文体で、これからどうしていきたいか、という旨が一生懸命に綴られている。

『悲しいこともつらいことも、いっぱいあるけど、それでも、――私たちは山が好き』

 続く画像データには、秋の色が濃くなった林河山と神谷樹里、それから西口涼子が映っていた。
「今度こそちゃんとピクニックに誘いたい、だってさ」
「……善処します」
「行かない奴じゃん」
 それから、天野にはもう一つ報告しなければならないことがある。
「……そうだった。今日は良いお知らせがあるんですよ。――先日、めでたく就職が決まりました」
 顔の横でピースサインを作る。
「あ、そう。…よかった、ね?」
「地元の小さい不動産会社だけどな。でもだからこそ、優秀な若い人が入ってくれるだけでも助かる、って」
「これからは社畜として忙しくするんだ」
「それでも週に二、三度は顔見に来るよ。……心配だしね」
「君って、嘘つきだね」
 その言葉は何故か、僕の心の柔らかい部分に刺さり冷たく光った。
「……嘘?」
「心配してるとか、すごいそれっぽい嘘。――…そのうちハシゴ外して、右往左往してるボクを指さしてみんなで嗤うんでしょ。それが君たちのやり方じゃない」
「……」
 心の深いところから、急激に冷気が駆け上がってくる。
 あぁ、そうか。と、何かが腑に落ちる。天野廿三は、感情のタイムカプセルだ。
 過去に表出されなかった感情が、今になって一つずつ掘り起こされている。今の言葉は明らかに、怒りによる当てつけなのに、天野はうっすら笑っている様にも見えた。
 治りかけた瘡蓋に爪を立てて、グロテスクな薄紅色のケロイドが見えてしまった。僕は僕自身の過去故に、それから目を背けることが出来ない。
 過去はどこまでも追いかけてくる。どんなに逃げても、逃げおおせる、なんてことは無いのだ。
「――…嘘つきかどうかは、お前が好きに決めれば良い。僕はお前に対して、ただ出来ることをするだけ」
 僕の言葉に、天野は虚を突かれたように目を丸くした。
「…………ずるいな」
 天野廿三は、長いこと言葉を考えてから、たったそれだけを呟いた。

▶終了フェイズ 終了

GM/フェイズ管理 : 以上をもちまして、シナリオ『山の死体』クランクアップです。

牟田 : おつかれさまでした
天野 : おつかれさま。

▷思い出の品の獲得、ゲストの獲得、異常な癖の変更

天野 : 思い出の品は、最後の写真でいいんじゃない?
牟田 : そうだな。他に無いし。
 ゲストは神谷樹里と西口涼子、どっちがいい?
天野 : 決めちゃっていいの?
 じゃあ、西口涼子。技能は《噂話》で。
牟田 : 次は異常な癖…異常な癖か……。『へへへ笑い』とか。他にある?
天野 : 特にないし、それにしようか。
 1番の『自分で言った自虐ネタで一人だけ大受けして引かれる』と入れ替えていい?
 結局使わなかったし、最後までRPしたらキャラクターに合わない感じがしたんだよね。

▷リセットと持ち越し

牟田 : 【余裕】の数値はここでリセット。
 幸いなことに、今回は変調も無かったし、【余裕】は結構あったから、レベルアップではもう少し複数回使えるアクションを獲得しようと思う。
天野 : 次。”感情”。
 ボクは【嫌わなきゃいけない】【信頼したい】【責任取らせてやる】の三つを残して、後を廃棄しようかと思うよ。
牟田 : こっちも【僕の…】と【もどかしい】を残して、後は廃棄かな……。

▷レベルアップ

天野 : 思い出の品が増えたからアクションなにかとれるんだっけ。
 じゃあボクは【アクション:奥手】を取ろう。
 助手への感情が取りづらい気がしたからね。良い感じのタイミングで感情がとれるほうがいいかと思って。
牟田 : 僕は【アクション:独占欲】にしよう。上手くいけば【余裕】が確保できる。

GM/フェイズ管理 : 各種整理・成長 終了
 以上でセッションを終わります お疲れ様でした。

・エンドクレジット・
マップ……おばけの神秘堂
キャラクターアイコン……海ひつじ屋めーかー
NPCアイコン……ユーザーアイコンさんメーカー

・おわりに・
本作は、「平野累次」「冒険支援株式会社」及び「株式会社新紀元社」が権利を有する『バディサスペンスTRPG フタリソウサ』の二次創作物です。
(C)平野累次/冒険企画局

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