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【呪印感染】『最初の災い』 第弐幕【仮想卓ログ】

・はじめに・

 こちらは、『呪印感染』の仮想卓ログ#2です。#1はこちらから。
 以下の要素が含まれます。
 ・公式ルールブック掲載シナリオ「最初の災い」のネタバレ
 ・「俗」の字の間違いをなかなか見つけられない
 ・死体を含むホラーおよび、グロテスクな描写
 ・凡ミス祭り
 ・一人GM/PL多数役
画像について
 キャラクターのアイコンで使わせて頂いたピクルーのメーカー、並びに、ココフォリアで使用したマップについては、記事の最後でURLを掲載しています。

PC紹介

名前:加藤アラヤ 年齢:20 性別:男性
出自:職人 容姿:無面目・虚弱・不気味
職業:一般学生 経済力:4
アイテム:[道具]×1 [お祓い]×1
《過去と秘密》
《恐ろしい約束》《霊感》
[願い]《恐ろしい約束》を取り消す。
[大切な人]加藤アンゴ (間柄:従兄弟 職業:刑事)
××大学・民族学部に所属する大学生。
父方の家系は代々仏師を生業にしている。アラヤ自身、本来は家業を継ぐため美術の道を選ぶべきだったが、あまり興味が無かった。
好きな物/民俗学 オカルト フィールドワーク
嫌いな物/色恋沙汰


名前:石田ひより 年齢:19 性別:女性
出目:医師 容姿:可愛い・健康的・明るい
職業:優等生 経済力:3
アイテム:[道具]×1 [防具]×1
[願い]誰かを救いたい
[大切な人]松田アスカ (間柄:親友 職業:学生)
××大学・医学部に在籍する大学生。
両親ともに地元の病院に勤める医師で、自分も人を助けられる人間になりたいと思っている。
明るく純粋で清潔感があり、誰からも好かれる性格で、人との縁を大事にしている。おかげで、運命の出会い、のような物もうっすら信じていたりする。
好きな物/少女漫画
嫌いな物/道半ばで諦めること

▽解決フェイズ・2

 [シーン:邂逅]PC2 石田ひより
 知己表(4) > 「呪印について」
 『内容』PC同士が出会い、お互いの体に刻まれた[呪印]の正体について考える場面を演出せよ。
 『終了条件』いずれかのPCが、「……結局、謎だらけだということですね。また考えましょうか」と言う。
 場所表「都市」(9) > 「図書館」
 ここは街中にある公立の図書館だ。周囲には新旧の様々な書籍が並び、調べものをするにはうってつけだ。

「アラヤ先輩、あれから何か分かりましたか?」
 二人は休日の図書館で落ち合い、お互いが集めた情報を報告しあった。
「噂を収集し分類することで、この都市伝説の全体像は見えてきた。だけど、解呪方法はなんとも……」
 加藤アラヤが肩をすくめる。
「私の方も空振り続きです。――…それに、少し前から私も〈赤い影〉が見えるようになりました。扉の隙間とか、ベッドの下とか……。あれは、…あの夜ホームでみた〈なにか〉ですよね?……不安なんです。この、呪印っていうのも、だんだん赤くなってきていて」
「ふむ……メールの文面から見て、『不幸の手紙』のように他人に回せば逃れられる、というわけでもないようだし。どうしたものかな」
 例のメールの送り主を調べたいところだが、アドレスの表示がバグっていて、何度読み込んでも上手く表示されない。
「そういえば、『不幸の手紙』ってよく聞きますけど、どういうものなんですか?――都市伝説?それとも、定番の怪談みたいに、決まったお話があるんでしょうか?」
 アラヤが、軽く腕を組んで視線を寄越す。
「『不幸の手紙』が我が国で流行したのは、1960年あるいは70年頃のこと。当時は、郵便を使った悪戯の一種だったんだ」
「いたずら、ですか。都市伝説とかじゃなくて?」
「うん。…『不幸になりたくなければ、同じ文面の手紙をn人に送れ』というような内容の手紙が届く。悪戯と割り切って無視する人も居たが、一方で本気にして警察や寺社に相談する人も多く、ちょっとした社会問題に発展した。警察の働きかけで、ある程度沈静化はしたらしいけどね」
 唯の悪戯だったものが、周囲を巻き込んで大事になってしまっている。…今自分がよく知らない、ということはある程度下火になるぐらいには、収まったのだろう。
「でも、人騒がせな手紙ですよね。なんでそんなものが流行っちゃったんだろう」
「良い質問ですね」
 よくぞ聞いてくれたとばかりに青年がにやりと笑った。
「まずは『不幸の手紙』が実は、『幸運の手紙』だったことを説明しないと行けないな」
 ひよりは、彼の言葉に首をかしげる。
 『不幸の手紙』と『幸運の手紙』では、意味がまるっきり逆になってしまっている。
「ヨーロッパでは古く6世紀頃に書かれたと思われる『天国からの手紙』が現存している。送り主は神か、その代行者で、『宗教の教えを守り、この手紙を持っていれば不幸や魔の者を遠ざけてくれる』と記されているらしい。要は、良い子にしてなきゃお化けが出るぞ、と同じだね」
「御守の意味合いもあったのかな。――あれ?でも、『他の人に回せ』とは書いてなかったんですか?」
「そう、20世紀以降に内容が変わるんだよ。『同じ文面をn人に送ることで幸運が得られるが、出来なければ不幸になる』というように」
「急に馴染みのある文言になりましたね」
「そうやって時を経ることで、『幸運』の部分がそぎ落とされて『不幸の手紙』としての側面が残った。実は、ヨーロッパだけに限らず、日本にも江戸時代からチェーンメール的概念は存在していたんだ。大黒天が印刷された和紙を二枚一組とし、『一枚を保管し、もう一枚を100件の家に配れば幸運が訪れる』と書いて送ることが流行したが、弊害が出たので幕府から禁止されてる」
「えー、最近のヤツと一緒じゃないですか!日本人、全く成長が見られない!」
「ははっ。実は、こういう『不幸を避ける』『幸運が訪れる』と言うようなモノは、定期的に流行廃りがあってね。滅亡予言や、大きな凶兆なんかが現れると、決まって流行る定番のおまじないだったんだ。他にも、太平洋戦争中に『件』の噂や爆撃を避けるための験担ぎが流行ったり。1970年に『不幸の手紙』が流行ったのも、おそらくは高度経済成長期に人々の生活が大きく変わったことなどが背景に――」
 ひよりが、ほうほう、と相づちを打つがアラヤは何故かそこで言葉を止めてしまった。
「……なんか、関係ないこと喋り過ぎちゃったな。ウザかったね」
 アラヤは照れくさそうに自嘲気味に笑って、頬をかいた。
「え、とんでもない!全然大丈夫です!むしろ、私が『不幸の手紙』について聞きたかったんです」
 普段熱量の上がらないしゃべり方をするアラヤが、楽しそうなのでもっと見て居たくなった。なにより、袋小路に入りそうな現状、気分転換がしたかったのだ。
「…先輩の話は面白いです。まるで全く違う世界の話を聞いてるみたい。こんな状況じゃなければ、もっと聞きたかったです」
 こんな状況じゃなければ、と右手の甲に刻まれた奇妙な痣を撫でる。
「さらっと異世界人、て言われたかな?――…解呪についてはまた別だけど、俺たちと同じようにメールを受け取り、この痣が発現した人たちもいるはずだ。俺はそれを調べてみようと思う」
「私は、〈十の災い〉について、もっと噂を収集してみます。災いの内容はそれぞれ個人で違う様だけど、もしかしたら、同じく〈赤い影〉の災いに見舞われた人が居るかも知れない」
「次は良い結果が報告できると良いな」
「はい。私も、頑張りますっ!」

[シーン:邂逅]終了
【希望】+2
[ 加藤 アラヤ ] 希望 : 5 → 7
[ 石田 ひより ] 希望 : 6 → 8

――――――――――――――――――――――――――
[シーン:状況]
 状況表(6) > 「運が味方」
 状況は逼迫しつつある。だが、幸運にも状況がPCたちに味方し始めた。なんとしてでも、このチャンスを活かさねば……。
 『使用可能能力値』各PCの任意の【能力値】

加藤 アラヤ : 状況が好転しそうな予感…あんまりしないな。宿命に4が帰ってきてるの嫌過ぎる。
 今回も《恐ろしい約束》を使うよ。
石田 ひより : なんだかんだ言っていつも励まされてる気がする。好きんなっちゃいます、先輩。
加藤 アラヤ : ありがとう。でも苦手なんだ、そういうの。

[ 加藤 アラヤ ] 希望 : 7 → 6 ダイス : 0 → 3
[ 石田 ひより ] 希望 : 8 → 9
 ダイス : 0 → 2

[シーン:判明]

加藤 アラヤ : 振れるダイス多いし、今回、俺は[待機]させて貰う。
石田 ひより : 私の手番からですね!

 手番:ひより
石田 ひより : C-2を[名前記入マス]にして、D-2のキーワード「呪印」を開きます!

・呪印・
 [呪印]とは、〈呪印感染〉の犠牲者に刻まれる呪いの刻印だ。
 噂によると、[呪印]はそれを持つ者にしか視認できない。
 また、[呪印]は自らに降りかかる死の宿命を退ければ黒色に、死の宿命から逃れられなければ真紅に変色する。
 なお、全員の[呪印]は箸から赤く変色し始めている。

石田 ひより : 結ぶ関係性は《相談者》にします。
 イベントは、そうだな…「手がかり」でどうでしょう。
加藤 アラヤ : 問題ないよ

 手番:アラヤ
加藤 アラヤ : 俺が使う能力値は、【精神】。「手がかり」の【命運】は27か。厳しいか?
 [効果減少]のために一個はダイスを取っておきたいな。
 希望を三つ使って、5d…前回のイベントのクリア特典も加えて6dか。

[ 加藤 アラヤ ] ダイス : 3 → 1
 希望 : 6 → 3

GM : 《正体》使用
 《恐怖が好物》6・4
 判定ダイス-2dです
 [宿命]:3・2

加藤 アラヤ : ほらね。
 4dか。27には届かないが、振ってみようか。
4D6 [2,4,2,3] > 11

加藤 アラヤ : ……。
石田 ひより : は、早まらないでください、アラヤ先輩!希望が0になると本当に死んじゃいます!
加藤 アラヤ : ごめん、能力値が1高いぐらいで、調子に乗ったみたい。
 今回は何の成果も得られなかった……。
 ただ、連番が揃うの恐いから……宿命の「2」と俺の「3」を入れ替える。
 最終的な数値は10。
 イベントの【命運】は27だから、17残しになっちゃったか。

[宿命]:3・3

[シーン:恐怖]

 恐怖表(2) > 「不気味なモノ」
 血液、人骨のようなもの、大量の粘液など……奇妙なモノが突如、足元に落ちてきた。
 [効果算出]PC全員に5+[呪印÷2]d。
 6D6 [2,4,2,1,5,6] > 20

加藤 アラヤ : もしかして、これは美味しいどころか?
 ……希望を1点使って、2dで振ります。
 《霊感》もコストなしで使えるので、「1」は自動的に「6」に。
 2D6 > 7[3,4] > 7
  宿命の「3」と俺の「4」を入れ替えます。最終的な軽減数値は6で、【命運】で14点受ける。
  せっかく連番阻止したのに。裏目に出てしまったかな…?

[宿命]:3・4
[ 加藤 アラヤ ] 希望 : 3 → 2
 命運 : 10 → -4

GM : ここで、《正体》をもう一つ明かします。
 《肉体》使用出目4・3
 [効果算出]+2d つまり、ダメージ+2dです。
 2D6 (2D6) > 7[3,4] > 7

石田 ひより : 合計、に、27点も……。
 残ってるダイスと、希望を3点使って、5dで振ります。

[ 石田 ひより ] 希望 : 9 → 6
5D6 [3,4,2,6,5] > 20

石田 ひより : よ、よし!七点に抑えましたよ!
加藤 アラヤ : ここは振り足しどころだと思うよ。
石田 ひより : は、そうか!今、宿命が無いから振ったもん勝ちなんだ!
 希望を2点使って振り足します!

[ 石田 ひより ] 希望 : 6 → 4
 2D6 [3,6] > 9

石田 ひより : ありがとうございます、先輩!おかげで命運減少0に抑えられました!
 だけど、状況表の「運が味方」ってなんだったんでしょうか……。
加藤 アラヤ : ソレは知らん…。
GM : では、アラヤだけ、狂気チェックですね。どうぞ。
石田 ひより : アラヤ先輩の情緒、終了のお知らせ…?

 最初は、雨が降ってきたのだと思った。

 その日、加藤アラヤは人と会う約束をしていた。自分たち以外の呪印者と連絡を取り、情報を得るために直接話を聞く算段だった。
 名前は工藤聡。男性、25歳。オカルト雑誌の記者をしているらしい。きっと向こうも、なにか利益があると思ったのだろう。
 野外にテラス席があるカフェで、落ち合う手はず。待ち合わせの時間までまだ余裕がある、と椅子に腰掛けて本を開いた。
 少し本のページが進んだところで、腕時計を見る。約束の時間を三分ほど過ぎたあたりだ。周りにそれらしい人物はいない。
 最初は、雨が降ってきたのだと思った。
 ぱた、と音がしたので、急な雨でも降ってきて、雨粒がテーブルの天板を打った音がしたのだと。
 しかし、それは違うとすぐに理解することになる。
 また、ぱた、と音がした。
 今度は、開いていた本の上に落ちてきた。
 文字の上に落ちたそれは、粘性のある液体で、……赤く生臭かった。
 釣られるように頭上を見上げる。
 空は、雲一つ無く晴れていた。――いや、遙か高みからなにかが降ってくる。
 慌てて席を立ち後退りすると、それを追いかけるようにテーブルが大きな音を立てる。さっきのおかしな雨粒のように、なにかがテーブルの天板を打ち付けた。
「……?!」
 それは、『足』だった。
 脳が理解を拒んでいるのに、視線はじっくりとその『足』を観察してしまう。それは『左足』だった。
 その左足を皮切りに、左手、頭、右足、胴体と、足元にバラバラの人間が降ってきた。
 恐らくその身体は、成人男性の物で、身につけていた洋服ごと、何者かに引きちぎられていた。
 重量のある肉体が、地上何百メートルという高さから、地面にたたきつけられるのだ。いくつかは中身が弾け、側に立っていたアラヤの上着や顔を汚した。まるでケチャップか、粉々になったジンジャーブレッドマンのようだ。
 最後に、右手が落ちてきて、その「奇妙な雨」は終わった。
 右手の甲に、自分と同じような〈痣〉があったおかげで、落下してきたのが、待ち合わせをしていた呪印者、工藤聡だったことに、ようやく気がついた。
 彼に刻まれた〈呪印〉は三画。内二つは艶やかな黒だったが、一画だけ、血を流したような赤に染まっていた。
 当然、周囲の人たちにも見えていたので、場は騒然となった。救急を呼ぶべきか、警察を呼ぶべきか、と混乱した人々の声がそこかしこで聞こえてくる。
 運が良かったのは、アラヤの頭上にはなにも落ちてこなかったことだろう。バラバラにされているとは言え、これだけの重さだ。直撃されていたなら、怪我では済まないかも知れない。
 しかし、果たしてそれは本当に「運が良かった」からなのか?

狂気表(3) > 「興奮状態」
 次[フェイズ]の終了を迎えるまで、PCは恐怖のあまり、些細なことでイライラし、PCに辛くあたった後、「……ごめんなさい」と、後悔する状況を演出せよ。

「――…あんなモノ、俺の手には負えない」
 留置所から出てきたアラヤは、最初にそう言った。
 本日正午過ぎ、とあるカフェテラスの前で、バラバラ死体が発見された。『発見された』というのは少し違うかもしれない。その場に居合わせた加藤アラヤの周囲に、雨のように死体が降ってきた。
 当然ながら、彼は関係者として聴取を受けることになった。石田ひよりがようやくアラヤと会えたのは、もう夕方も遅くなってからだった。
「話は聞きました。ずいぶん…酷いことが起きたみたい」
「酷い?はは、それ以上だね。俺もあんな風に死ぬのか。あんな、子供に壊された玩具みたいに……」
 ひよりは、想像することしか出来ないが、いかに酷い惨状だったのか、アラヤの憔悴しきった表情を見ればわかる。彼の手や外套には、飛び散った血が付着して黒く変色していた。
「わ、私たちなら、大丈夫です。きっと、何もかも上手くいきますよ。そうなるように、頑張ります」
「頑張るって何?無責任なこと言うなよ。分かってんだ、どうせ二人とも死ぬんだって。…でも一つだけ、まともな死に方を選ぶ方法がある」
 それ以上言わせたくなくて、咄嗟にアラヤの袖を掴んだ。
「変なこと考えないで。辞めてください、先輩」
「うるさいっ、うるさい…!こんなの何の解決にもならないって言うんだろ。でもひよりさんはアレを見てないから、楽観的で居られるんだ。俺は、この命が自分の物である内に、決着を付けたい。どうせ死ぬなら、死に方ぐらい自分で選ばせ――」
「や、やめてよっ!!」
 彼の正面に立ち、半ばすがるように掴みかかる。アラヤは、ようやくはっとして言葉を途切れさせた。
「……」
 ひよりは、気休めでも何か言うべきと思ったが、口を開いても言葉が出てこなかった。
 申し訳なさそうに目を伏せたアラヤが、彼女の手をそっと解き、ひよりを置いて歩き始めた。
「――…ごめん。今日はもう、一人で帰りたい」

解決フェイズ・2 終了
制限時間5⇒4
[宿命]補充
4D6 [5・6・2・6]

▽解決フェイズ・3

 [シーン:邂逅]PC1 加藤アラヤ
 知己表(7) > 「過去と秘密」
 『内容』PC同士が出会い、事件の相談を行った際、いずれかのPCが[関係性]を結んだ≪過去や秘密≫について語る。
 『終了条件』≪過去や秘密≫を語ったPCが「巻き込んでしまって、すいません」と言う。
 場所表「都市」(8) > 「神社仏閣」
 ここは街のなかにある神社・寺社だ。頼めばお祓いをしてくれるという話だが、ご利益があるかは不明だ。

 石田ひよりは、修行僧に並んで座禅を組む加藤アラヤに声をかける。
「探しました。オカ研の人たちが、アラヤ先輩ならここだろうって。――隣良いですか?」
 アラヤは静かに目を閉じたまま、軽く頷いた。
「もしかして、怒ってます?」
 ひよりは彼の隣に座り、見よう見まねであぐらをかいてみる。
「何故?」
「あれきり会ってないですし、資料室にも来てないみたい。私、避けられてるのかと思って」
「避けてはいたかも知れない。少し、何も考えない時間が必要だった。だからむしろ、怒られるべきは俺じゃないかな。…ひよりさんには謝らないといけない。君にあんなこと言うべきじゃ無かった。後、君に言いたいことと言えば――結跏趺坐はあぐらじゃないです」
「えっ。ケ、ケッカフ…?」
「難しければ、右足を左腿に乗せるだけで良い。これが半跏趺坐」
「ハンカフザ…なるほど」
 改めて足を組み直し、アラヤと同じように目を閉じる。
「…何かあったの?」
 雑念が消えかけたところで、真隣から声が聞こえる。
「実は、私が呪印者になる少し前、『変なメールを貰った』って相談を受けたことがあったんです。それがすごく、例の[呪印感染]のメールに似ていて」
 呪印者になってからは、ばたついていたせいか、直接会うことも無かった。だが、昨日偶然直接話しをする機会があった。
「彼女の手の甲には、呪印が刻まれていなかったんです。話を聞いてみると、たちの悪い悪戯メールだったんだって。SNSの噂話でも、そういう『偽物』が横行してます。正直私には…区別が付きません。ただでさえ噂話の収集なんて慣れていないのに。いつまで経っても正しい情報にたどり着ける気がしない。……力を貸してください」
 アラヤは応えない。禅を組んで、じっと目を閉じている。
「アラヤ先輩?…聞こえてます、よね?」
 彼は、考えるような沈黙の後、ようやく口を開いた。
「――…俺は昔から、人より勘が鋭かった。失せ物探しもお手の物だったし、大人の隠し事だってすぐに気がついた。だけどそれは子供の手に余る力だった。おかげで、人じゃ無いものに関わり、しちゃいけない約束をしてしまった。……俺は〈あれ等〉に借りがある。これ以上関わればどうなるか。…恐くないと言えば嘘になる」
 彼の禅定印は震えていた。
「アラヤ先輩、私も言って良いですか?」
「どうぞ」
「私、先輩に死んで欲しくないです」
「うん」
「っていうのも、アラヤ先輩は普段私の周りに居る人たちと全然違う、得がたいご縁だと思ったので。[呪印感染]なんて、訳の分からない恐い物で繋がった縁ではあるけれど、きっと私にとって何か大事な意味がある、そう思うんです」
 ひよりはそこで一旦言葉を句切り、呼吸を整えた。

「私、アラヤ先輩のことが好きです」

「――……ん゛っ!?」
 カエルが喉を詰まらせたような声を出して、アラヤが咳き込む。
「…あのさぁ、生き死にがかかってる状況で、惚れた腫れたの話なんてしてる場合じゃないでしょ」
 しきりに眼鏡を直しながら、視線をそらした。
「だからこそです!だからこそ、私はアラヤ先輩に死んで欲しくない。好きだからこそ、一緒にこの災いを生きて乗り越えたいんです」
 ひよりは、一息置いてから言葉を続ける。相手が耳まで真っ赤にしていることにも気づかず、一生懸命に思いの丈を言葉にした。
「アラヤ先輩に生きてて欲しい。この事件が解決したら、一緒に美味しいご飯を食べに行きましょう!映画を見に行ったり、美術館や水族館でもいいです。私と、生きて、デートしてくださいっ」
「うん、あの…わかった。わかったから。……………………スゥーーー(吸気)…未だ俗世に囚われている気がする。悟りは遠いな…」
「先輩、出家でもするんですか?」
「誰のせいだと思ってるんだろうこの子(小声)――あのさぁ、教えておくんだけど、男は頭の悪い生き物なので、ひよりさんみたいな可愛い子に『好き』とか言われるとすぐ勘違いするし、つけあがるから。たとえ友人としての好意だったり、発破かけるためだとしても、軽率に言っちゃダメだよ。……こんなのドギマギしない男は男じゃ無いので」
「はい、ごめんなさ……え、私…誰にでも言ってるわけじゃありません!こ、こ…告白のつもりだったんです!」
「本気なの? うぅぅー………………聞かなかったことにしたい。気が重いよぉ…」
 アラヤは渋い顔をする。もしかして嫌だったろうか?
「あの、先輩は私のこと、嫌いですか?」
「そういうことじゃ無くて。昔から苦手なんだ、恋愛事が。わあ゛ー…他人事にしたい……」
「えー、他人事にしちゃダメです。――この件を生きて解決したら、絶対に告白のお返事ください。私、待ってますから!」

[シーン:邂逅]終了
【希望】+2
[ 加藤 アラヤ ] 希望 : 2 → 4
[ 石田 ひより ] 希望 : 4 → 6

加藤 アラヤ : 死ぬかと思った。怪異より恐かった。
石田 ひより : えー。可愛い女の子からの告白ですよ!怪異より恐いなんて言わないでください。
加藤 アラヤ : 明日の生死も分からない身なのに、こんなこと言われたら恐くて仕方ないよ。
 ……《伏線》取ります。記入するのは「告白の返事」で。

[シーン:状況]
 状況表(5) > 「危機はすぐそこ」
 得体のしれない<なにか>は、間違いなくそこまで迫ってきている。頼れるのはもはや、自分たちの肉体だけだ……。
 『使用可能能力値』【体力】
[ 加藤 アラヤ ] ダイス : 0 → 2
[ 石田 ひより ] ダイス : 0 → 2

※凡ミス発生中※
加藤 アラヤ : ……《相談者》って強いよね。[判定]はひよりさんに任せた方が良いのかな?
石田 ひより : だけど、コストが命運1dって、ちょっと高いんですよね。
加藤 アラヤ : 《恐ろしい約束》で希望ストックすれば取り返せるかな?
 と言うことで早速《恐ろしい約束》を使わせて貰う。

[ 加藤 アラヤ ] 希望 : 4 → 3
[ 石田 ひより ] 希望 : 6 → 7

[シーン:判明]

 手番:アラヤ
加藤 アラヤ : D-3を[名前記入マス]として、D-4「十の災い」の情報を開けさせて貰う。
 関係性を結ぶのは《恐ろしい約束》だ。

・十の災い・
 〈十の災い〉とは、〈呪印感染〉の犠牲者に訪れる災いだ。
 災いはいずれも怪奇現象や猟奇事件ばかりで、〈十の災い〉が降りかかるごとに、[呪印]は一画ずつ数が増えて行くらしい。
 なお、災いには退ける手段が存在するらしく、怪事件を詳しく調べれば、戦わずに撃退する方法が見つかるかも知れない。

加藤 アラヤ : 指定イベントは「事件の法則」にします。

 手番:石田ひより
石田 ひより : 前のイベントが残ってますけど、どうしますか?
加藤 アラヤ : 「1」を振り治せるのは非常に美味しいんだけど、宿命的に交換でなんとか出来そうなんだよね。「2」をふり治せた方がありがたいかも?
石田 ひより : では、新しいイベントの「事件の法則」を狙って[判定]を試みます。
 一個はダイス残しておきたいから基本の1dと、《相談者》を使って、判定ダイス+4d クリア済みのイベントから+1d これで6dです。
22点ならいけそうですかね?
 ※凡ミス発生中※
加藤 アラヤ : 今回、宿命に4無いから、《恐怖が好物》は使ってこないはず。
石田 ひより : まず、コストの命運-1dを振ります。
1D6 > 3
 [ 石田 ひより ] 命運 : 3 → 0
  6D6 [5,2,6,5,6,3] > 27

石田 ひより : 《肉体》を使わせないために、連番を避けたいから…宿命の「5」と私の「6」を交換します。
 これで数値は26。イベントクリアですね!
[宿命]:6・6・2・6

[シーン:恐怖]

 恐怖表(9) > 「接触」
 つい先ほど……なにかに触られたような、あるいは服を引っ張られたような気がした。
 [効果算出]PC3体に3+[呪印÷2]d。
 4D6 [3,4,2,5] > 14

加藤 アラヤ : 《霊感》を使う。
 そろそろ【希望】残量を考えた方が良いかもしれない。あんまり使うと生還が心配になっちゃうな。ロストしても美しい画が見られそうだけど、生き残る努力はしよう。
 使えるダイスは2d で、クリア特典で「2」をふり治せるんだよね。
 よし…いきます。

[ 加藤 アラヤ ] ダイス : 2 → 0
2D6 [2,5] > 7
 「2」の振り直し 1D6 (1D6) > 5

加藤 アラヤ : 計10。ここから入れ替えるから…ごめん、ひよりさん。
 宿命の「6」「6」と、俺の「5」「5」を交換する。
 これで軽減は12。俺が受ける命運ダメージは2点。
[ 加藤 アラヤ ] 命運 : -4 → -6
[宿命]:5・5・2・6

石田 ひより : え、ごめんって……あっ、連番!
GM : 連番の「宿命」を使用して、《肉体》の正体を表します。
 こちらの[効果算出]+2d
2D6 [5,6] > 11
 計25点

石田 ひより : ひ、非常に高い……。
 分かりました。
 現在使えるダイスと、【希望】を5点消費して、減少0を狙っていきます。
 まだ【命運】の負債はないので、使い得なはず…。
 ということで、7dです。いきます。
[ 石田 ひより ] 希望 : 7 → 2
 ダイス : 2 → 0
7D6 [3,2,1,5,6,3,4] > 24

石田 ひより : 宿命の「2」と私の「1」を交換して、クリア特典の「2」の振り直しをします。
 この時点で23。この「2」二つが、両方「2」以上になってくれれば私の勝ちです。
[宿命]:5・1
 「2」の振り直し 2D6 [1,4] > 5

石田 ひより : あ……合計減少24点。…命運、-1です。対戦ありがとうございました……。
 アラヤ先輩、やっぱり「1」の振り直しは必要ですよ。都合良く「1」が「6」に変わるのは先輩だけです。
加藤 アラヤ : 別にそういう風に思ってたワケじゃ無いんだけどな…。
[ 石田 ひより ] 命運 : 0 → -1

解決フェイズ・3 終了
制限時間4⇒3
[宿命]補充
2D6 [4,3]
 5・1・4・3

 その晩、石田ひよりは自室で調べ物をしていた。
 ネットで古新聞などを探し、[呪印感染]が関係していそうな怪事件を調べていたのだ。
「うーん……」
 あまり収穫が無くて、焦りを感じ始めた時、不意に足下に違和感を覚えた。
 机の下に荷物などを置くこともあるし、足先になにかが触れたのだろう。
 しかし――……。

「きゃぁ……っ!」

 どたばた、と慌ててベッドへ上がり、足先が床に付かないよう膝を抱える。
(気のせいなんかじゃ無い。今、絶対に誰か、私の足を掴んだ……)
 机下を覗き込むが、暗くてよく見えない。
 別の部屋に居た父が、叫び声を聞いて心配したのか、ノックの音と共に声をかけてくれる。
「ひより?大丈夫か?」
「あ、だ……大丈夫!躓いて転びそうになっただけ。心配かけてごめんなさい」
「なんだ。びっくりしたじゃないか。気をつけなさいよ」
 ドアの外を、父の声が遠ざかっていく。

「――ひぃぃよぉりぃ……」

 今のは、ドアの向こうから聞こえた物では無い。……例の机の下から聞こえて来た。
 父の声に似ていたが、変に引き延されクラッシュした音声データのようで、どう聞いても人間の声では無かった。また叫びそうになるのを、両手で口を押さえてぐっと飲み込んだ。
 誰かに助けを求めたくて、部屋の中に目を走らせる。スマホが充電コードに刺さっていた。
 机から距離を取ったまま、コードを引っ張ることでスマホを引き寄せる。
「も、もも…もしも、もし……もしもし先輩ですか!?」
『……もしもし?誰?…ひよりさん?』
 欠伸をかみ殺す様な音と、寝ぼけたような返事が返ってくる。
「へ、部屋に出たんです!どうしよう私、…自分の部屋は安全だと思ってたのに!机の下で足を触られたんです!」
『ファブして寝ろ』
「ふぁっ????」
『そう言った物は、良くない空気が滞留していると湧く。塩を撒くか、ファブリーズでもして空気を浄化してやれば居なくなるよ』
「でも、ふぁぶ…アラヤせんぱっ……」
『ひよりさん、落ち着いて。ファブリーズある?』
「あり、あ、……あります!」
 部屋の掃除や換気の時に使うスプレー型の消臭剤を手に取る。
『よかった。じゃあ部屋全体に吹きかけて、出た所を確認がてら重点的に。――…何か居た?』
「も、もう何も居ません。さっきは声も聞こえたんですけど……」
 改めて机の下を覗き込むと、そこには何も無かった。足下にゴミ箱と、普段使いの鞄が置いてある。
「……あの、ファブリーズ除霊って効くんですか?」
『洋の東西を問わず、塩は魔除けとしてよく使われているよね。それは殺菌効果があるからだ。同じく除菌・殺菌効果のあるファブが、現代除霊では一番効率的なんだよ。…塩撒くと後片付けがめんどくさいしね。実際俺も、台所の戸棚で手を握られたから、ファブしておいた』
「……わ、…分かりました!私もファブリーズして寝ます!」
『はいはい、おやすみー』
「おやすみな――…あ、もう切れてる」
 集中していて時計を見て居なかったが、時間を確認するともう夜中の一時を回ろうとしている。
 アラヤは、こんな時間の着信に、律儀にも対応してくれたのか。
 LINEで、お騒がせしました、とお詫びを入れて、自分も寝に入る。
 布団にくるまってからもどこか背筋が寒く、頼れる先輩の『ファブ除霊は効果がある』という強い格言を胸に抱いて目をつぶることにした。
(ファブ除霊は効果がある!ファブ除霊は効果がある!ファブ除霊は効果がある…!!)

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エンドクレジット

 加藤アラヤ……色んなタイプの男の子
 石田ひより……つつじメーカーβ

 マップ……首塚首子様

                                             ⇒続

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