はじめに
こちらは、『呪印感染』の仮想卓ログ#4です。#1はこちら。
以下の要素が含まれます。
・公式ルールブック掲載シナリオ「最初の災い」のネタバレ
・死体を含むホラーおよび、グロテスクな描写
・凡ミス祭り
・GMとPLの一人多数役
画像について
キャラクターのアイコンで使わせて頂いたピクルーのメーカー、並びに、ココフォリアで使用したマップについては、記事の最後でURLを掲載しています。
PC紹介

名前:加藤アラヤ 年齢:20 性別:男性
出自:職人 容姿:無面目・虚弱・不気味
職業:一般学生 経済力:4
アイテム:[道具]×1 [お祓い]×1
《過去と秘密》
《恐ろしい約束》《霊感》
[願い]《恐ろしい約束》を取り消す。
[大切な人]加藤アンゴ (間柄:従兄弟 職業:刑事)
××大学・民族学部に所属する大学生。
父方の家系は代々仏師を生業にしている。アラヤ自身、本来は家業を継ぐため美術の道を選ぶべきだったが、あまり興味が無かった。
好きな物/民俗学 オカルト フィールドワーク
嫌いな物/色恋沙汰
名前:石田ひより 年齢:19 性別:女性
出目:医師 容姿:可愛い・健康的・明るい
職業:優等生 経済力:3
アイテム:[道具]×1 [防具]×1
《過去と秘密》
《相談者》《無垢な魂》
[願い]誰かを救いたい
[大切な人]松田アスカ (間柄:親友 職業:学生)
××大学・医学部に在籍する大学生。
両親ともに地元の病院に勤める医師で、自分も人を助けられる人間になりたいと思っている。
明るく純粋で清潔感があり、誰からも好かれる性格で、人との縁を大事にしている。おかげで、運命の出会い、のような物もうっすら信じていたりする。
好きな物/少女漫画
嫌いな物/諦めること

GM : このシーン以後、場所は「自宅」「自宅近く」に限定されます。
クライマックスです。張りきっていきましょう。
[シーン:判明]
手番:石田ひより

石田 ひより : ではさっそく「儀式行使」に挑戦していきます。
使えるダイスは…基本の2d 「情報収集」のクリア特典で+1d アイテム[道具]を使ってさらに+1d
そしてここで《伏線》「ラブラブデート」を使って、+4d
同じ[シーン]の《過去と秘密》を使用できる、という効果により《相談者》を使用可能にします!これでさらにさらに+4d
合計12dです。
《相談者》コスト 1D6 > 5
[ 石田 ひより ] 命運 : -1 → -6
ダイス : 2 → 0
石田 ひより : そして、アラヤ先輩にストックして貰った希望、四点消費して、さらに4d。
合計16dですね!
GM : 割り込める《正体》は無いよ。どうぞ。
[ 石田 ひより ] 希望 : 8 → 4
16D6 [3,2,3,4,4,5,1,6,5,5,4,1,2,3,6,3] > 57
石田 ひより : 「事件の法則」と「手がかり」のクリア特典により「1」と「2」を振り直します。
4D6 (4D6) > 21[6,3,6,6] > 21
宿命の「1」と私の「3」を交換して、「1」を振り直し。
1D6 > 5
合計最終数値75です。
[宿命]:5・3・5・3
「儀式行使」の【命運】97⇒22

石田 ひより : 唱えるのはどの真言がいいですか?
加藤 アラヤ : そりゃ、最強と名高い光明真言でしょう。
おん あぼきゃ べいろしゃのう まかぼだら まにはんどま じんばら はらばりたや うん
…そういえば、公式リプレイでネコ先輩が唱えてたのもこれだったね。
[シーン:恐怖]
恐怖表(5) > 「異臭」
生臭い匂い、鉄臭い匂い、花のような芳香など……普段嗅がない異臭が、一瞬だけ鼻孔をついた。[効果算出]PC2体に3+[呪印÷2]d。
4D6 (4D6) > 17[5,2,5,5] > 17
加藤 アラヤ : ここに来て高い!
石田 ひより : 恐怖ダイスもクライマックスですねぇ!
加藤 アラヤ : でも、今使える《正体》は無いみたい。
宿命ダイスがかみ合わないらしい。
GM : かみ合わないねぇ。もっと狂気チェックさせたかったんだけどね。演出はしておこうか。
「おん あぼきゃ べい――…っけほっけほけほっ…!ひ、酷い匂い…これは……」
「腐臭だろ。玄関の外……だけじゃない。窓からもだ」
ぺた、べたた、ばたっ!ばんっばんっ!
窓硝子を叩くような音が、カーテンの向こうから聞こえる。
この安アパートには、ベランダなんてしゃれたものは無いし、ここは二階だ。例の〈なにか〉がどんな状態で手を伸ばしているのか、もはや考えたくもなかった。
加藤 アラヤ : 狂気チェックは避けたい。
基本の2dと希望を1点使って、3dで。
[ 加藤 アラヤ ] ダイス : 2 → 0
希望 : 6 → 5
3D6 [5,3,2] > 10
「2」の振り直し 1D6 (1D6) > 1
加藤 アラヤ : 《霊感》を使って、「1」を「6」へ。
宿命の「3」「3」と俺の「5」「6」を交、換…していいのか、はたして?
…………ひよりさん、ちょっとひやひやするけど”物語”の盛り上がりが作れるのと、安定はしてるけど盛り上がりに欠けるの、どっちがいい?
石田 ひより : …盛り上がる方ですかね。
加藤 アラヤ : 宿命の「3」「3」と俺の「5」「6」を交換します。
これで最終値は9。
【命運】8点減少ですね。
[宿命]:5・5・5・6
[ 加藤 アラヤ ] 命運 : -8 → -16
GM : わざわざ連番を作ってくれたんですね。取れ高をありがとうございます。
期待に応えて《正体》を割り込ませて貰いますね。
《肉体》ダイス5・6 こちらの[効果算出]+2d
[宿命]:5・5
2d [1,1] > 2
石田 ひより : えっと…ダメージは19か。おーけー。
私は何ダイス振ろうかな。
基本は0d 使える効果は…あ、[防具]がある!これで1d振れます。希望を1点使って、2dで振りますよ!狂気チェックは避けられますように!
[ 石田 ひより ] 希望 : 4 → 3
2D6 [6,2] > 8
石田 ひより : …ここは振り直さず、宿命の「5」と私の「2」を交換して、11にします!
【命運】減少は8点に抑えました!
[宿命]:2・5
[ 石田 ひより ] 命運 : -6 → -14
加藤 アラヤ : ひよりさんにも狂気チェックしてほしかったな…。
石田 ひより : でも【命運】の負債が嵩んで来ました…。

解決フェイズ・5 終了
制限時間2⇒1
[宿命]補充
2D6 [4,5]
2・5・4・5
解決フェイズ・6
[シーン:邂逅]PC2 石田ひより
知己表(2) > 「大切な人」
『内容』PC同士が再会後、事件に関する相談をするうちに、PCが互いに、自身の[大切な人]について語る場面を演出せよ。
『終了条件』いずれかのPCが「なんにせよ、その人のためにも、生き残らないといけませんね」と言う。
二人は部屋の隅に固まり、ひたすら数珠を握って真言を唱え続ける。
部屋の外からは絶えず、異様な臭気と、友人や両親の声、窓硝子や扉を叩く音も聞こえた。
自分たちはこのまま、あの得体の知れない〈なにか〉に呪い殺されてしまうのだろうか。
そう思うとひどく不安で心細く、隣に居るアラヤの腕に手を回し、ぎゅっと抱きしめた。
「――…アラヤ先輩っ!最期になる前に、もう一度だけ言っておきたいことがあります!」
「それ、今じゃ無きゃダメ?!」
外からの物音に負けじと、自然と二人の声は大きくなった。
「ダメです!絶対今じゃ無きゃダメ!私、後悔したくない!」
「じゃあ早く言って何!?」
「やっぱり好きです!もし、もしよしんば、二人で生還できたら…結婚してください!」
「け、結婚はしないッッ!!!」
一世一代のプロポーズのつもりだったが、ひよりの願いは強く打ち砕かれた。恐怖とショックで滂沱の涙が止まらない。
「な、な゛ん゛でです゛か゛ぁ゛ー!!」
「一生記憶に残るプロポーズの光景が、こんな追い詰められた状況で、しかも年下の女の子からなんて絶対ヤダ!」
「なんの意地を張ってるんですか今更!」
「だって俺は告白の返事もちゃんとしてない!」
「じゃあ今して!大好きな人と赤の他人のままでなんて死にたくないよっ!」
「………………」
「なんで黙るの!?意気地無いしっ!私がヤならヤダって言ってよぉ!」
「や……嫌じゃないから困ってるんだろぉっ!」
一際語気の強い言葉に、一瞬呼吸が止まる。アラヤは続けた。
「――生まれてこの方恋愛なんてこれっぽっちも縁が無いし、オカルトオタクの変人で通ってきてるんだから、モテたことだって一度も無い!女の子の扱いなんて、この世で最も分からない!いくら好かれてても、ド100%泣かせる自信があるのに、女の子となんて付き合えるわけないでしょうがぁ?!???!?!」
アラヤの絶叫の直後、ばんっっ!!と一際大きく玄関扉が叩かれた。
「ひぃっ!」
ひよりは思わず、安心を求めてアラヤに抱きつき、彼も咄嗟に守るように抱きすくめた。
[シーン:邂逅]終了
【希望】+2
[ 加藤 アラヤ ] 希望 : 5 → 7
[ 石田 ひより ] 希望 : 3 → 5
加藤 アラヤ : 長引けば長引くほど生還は難しくなるから、削れるならここで削りきってしまわないと。
石田 ひより : 無理はしないでください。私はアラヤ先輩にも生きて帰って欲しいです。
加藤 アラヤ : ……正直言って俺は、ひよりさんの《無垢な魂》を大変当てにしています。
石田 ひより : えっ…。あんまりダイス運に命賭けない方が良いと思いますよ。
加藤 アラヤ : 無問題。
生きて帰るつもりでは居ます。……最悪のパターンになっても、フラグは立てておいたので、お話的には美味しいはず。
[シーン:状況]
状況表(1) > 「不運の連鎖」
事件が関係しているのか、PCたちの周囲で次々と不幸が起こり始めている。なんとかして、この連鎖を止めなければ……。
『使用可能能力値』【幸運】
加藤 アラヤ : いつもの《恐ろしい約束》を使います。
ひよりさんの希望+1ですね。
石田 ひより : やはり希望…アラヤ先輩は私の希望なんです。
加藤 アラヤ : 恥ずかしいから辞めてってば……。
[ 石田 ひより ] 希望 : 5 → 6 ダイス : 0 → 2
[ 加藤 アラヤ ] ダイス : 0 → 2
[シーン:判明]
手番:加藤アラヤ
加藤 アラヤ : 「儀式行使」の[判定]に挑みます。削りきりたい。
基本の2d 「情報収集」分が+1d アイテム[道具]を使って+1d
で、《伏線》「告白の返事」を使って、+4d
以上の8dで。
GM : 割り込みで《正体》を表します。
《恐怖が好物》ダイス4・2
判定ダイス-2d 残りは6dですね
[宿命]:5・5
加藤 アラヤ : そう来ると思った。
【希望】を2点消費して、変わらず8dで振ります。
[ 加藤 アラヤ ] 希望 : 7 → 5
8D6 [6,1,3,1,3,1,6,4] > 25
加藤 アラヤ : 振り直しはせず、宿命の「5」「5」と俺の「3」「3」を交換する。
これで29点。
[宿命]:3・3
★「儀式行使」
【命運】:22⇒クリア済み
内容:状況の打開に必要不可欠な儀式を行使する。
クリア特典:[クリア]後、[追加ボーナス]が発生。PC全員が[シーン:恐怖]終了後、[結末フェイズ]へ移る。
[シーン:恐怖]
恐怖表(2) > 「不気味なモノ」
血液、人骨のようなもの、大量の粘液など……奇妙なモノが突如、足元に落ちてきた。[効果算出]PC全員に5+[呪印÷2]d。
6D6 [6,4,2,3,1,2] > 18
窓硝子を突き破り、なにかが投げ込まれた。
それは、生臭い匂いを発しながら床を跳ね、粘性のある赤黒い液体を撒き散らした。
毛が生えていて、尻尾と耳があることだけは確認したが、それ以上は考えない方が良いだろう。
「な、なにが…っ」
「ひよりさんは見ないほうがいい!」
大きな音に振り返りかけたひよりだったが、咄嗟にアラヤに頭を抑えられた。
GM : 窓が割れて、猫の死体が投げ込まれるんですよ。
二人 : こわいよーっ!
加藤 アラヤ : まてまて、考えろ考えろ。
…【命運】ダメージ結構高いが、ここで4d振れれば生還ワンチャンある。どっちに転んでも物語的には美味しい、…と言い聞かせて前に進むしか無い!
[ 加藤 アラヤ ] 希望 : 5 → 1
4D6 [3,2,1,6] > 12
加藤 アラヤ : 《霊感》を使う。
ノーコストで「1」を「6」に。これで17。
ここは交換せず、2を振り直そう。
1d6 > 1
加藤 アラヤ : 《霊感》の効果で、「1」は自動的に「6」になる。
これで21点。宿命の「3」と俺の「6」を入れ替える。
これで18点、ぴったんこカンカンだろ!
[宿命]:3・6
石田 ひより : 次は私の番。
基本の2dは残ってるし、「1」「2」は振り直しが出来る。それに、先輩が[宿命]に「6」残してくれてる。この「6」で救われるかも知れない!
…希望を1点使って、3dで頑張ります!
[ 石田 ひより ] 希望 : 6 → 5
3D6 [2,1,6] > 9
「1」「2」の振り直し 2D6 [5,2] > 7
「2」の振り直し 1D6 > 2
「2」の振り直し 1D6 (1D6) > 6
石田 ひより : これで6・5・6…。
す、救われた!私、また先輩に救われました!
宿命の「6」と私の「5」を交換して、18!命運減少0です!

[宿命]:3・5
GM : さて、結末フェイズに移る前に、やり残したことはありますか?
加藤 アラヤ : …ひよりさん、アレの使いどころはここじゃない?
石田 ひより : はっ!《無垢な魂》を使って、アラヤ先輩の【命運】を+4dします!
4D6 [6,5,4,5] > 20
加藤 アラヤ : 全部半分以上出てんじゃん。高い高い。想定してたんと違う……。
石田 ひより : あ、愛じゃよ、愛……(困惑)
[ 加藤 アラヤ ] 命運 : -16 → 4
[ 石田 ひより ] 希望 : 5 → 4
[結末フェイズ]
【命運】の上昇。【希望】d点分、【命運】を上昇させる。
加藤 アラヤ : 1D6 (1D6) > 4 命運 : 4 → 8
石田 ひより : 4d6 (4D6) > 11[4,2,2,3] > 11 命運 : -14 → -3
石田 ひより : ごめんなさい。3、足りない。
加藤 アラヤ : 自分が死ぬ事は想定してたけど、ひよりさんが死ぬとは思ってなかった…。っていうか、《無垢な魂》の出目から想定外すぎて動揺してる。
え、嘘でしょ…、置いてかれるの?俺。
GM : 「儀式行使」の追加ボーナスで、【希望】を+αできるけど、どうしますか?
石田 ひより : えーっ…どうしようかな。でも思い入れのあるキャラがさくっと死ぬ感じも、『呪印感染』って気がするんですよね。
加藤 アラヤ : わかる、わかるよ。[大切な人]って形で、「次のPC」を作ってあるから、もう早から「どう死ぬか」を考えてしまうんだよね。ひよりさんの【命運】だから、最期は君が決めなさい。俺個人としては、物語の芸術点が高い方を期待してるよ。
石田 ひより : はい、じゃあ決めました!
永遠とも思える長い時間、一千回は光明真言を唱えようか、という頃。
窓の外が一瞬、ちか、と光った。
いや、街並みに刺した日の出が、矢のように〈赤い影〉を貫いたのだった。
怪異は、この世のものとは思えぬ悲鳴をあげ、その場に居た者たちの耳を劈いた。
二人は咄嗟に強く目をつぶり、耳を塞いだ。
「勝ぁって嬉しい、はないちもんめ!」
「負けぇて悔しい、はないちもんめ!」
(…あれ?ここはどこだろう。私、確かアラヤ先輩と…。これは、昔の記憶……?じゃ、ない)
「隣のおばさん、ちょっと来ておくれ」
「鬼が怖くて行かれない」
「お釜かぶって、ちょっと来ておくれ」
「お釜底抜け行かれない」
(何で私…子供の姿なんだろう。……何でここにいる子はみんな、和装なんだろう…)
「鉄砲かついで、ちょっと来ておくれ」
「鉄砲玉無し行かれない」
「お布団かぶって、ちょっと来ておくれ」
「お布団びりびり行かれない」
(これは…はないちもんめ、だ。――…でも、はないちもんめ、ってこの後どうするんだっけ…?)
「あの子が欲しい」
「あの子じゃ分からん」
「その子が欲しい」
「その子じゃ分からん」
「相談しよう、そうしよう」
「きぃーまった!」
「アラヤお兄ちゃんが欲しい!」
(だめっ!その人は連れて行かないでっ!大事な人なの…!ね、お願いだから……)
「そうなの?じゃあ仕方ないね。代わりに……」
少女の唇は、にっこりと弧を描いて、ゆっくりと開いた。
「――ひよりちゃんが欲しいっ!」
「――……えっ」
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
「……夜が明けた?」
アラヤの声に、ひよりはぎゅっと閉じていた目を開ける。
先ほど見たのは白昼夢だろうか? 一体何だったのだろう。無関係とも思えないが、目の前の情景は希望の夜明けと言ってあまりある光景だ。
「――…助かった? …助かったんですよ、私たち!全部アラヤ先輩のおかげですっ! …きっと私一人じゃなにもできなかったっ……!」
ひよりは、素直に喜びを表し、遠慮がちに彼女を支える青年へ飛びついた。
「いや…俺だけの力じゃない。どちらが欠けても、この日の出は拝めなかった」
まずは一つ…。
アラヤは、右手の甲に浮いた勾玉の痣が、次第に黒くなっていくのを見た。
(あと九つ……)
「――…ふふっ。先輩、そろそろ良いんじゃないですか、告白の返事、くれても」
「あ、あぁ……」
抱きついたひよりに答えを促されて、赤くなった頬をかく。
「俺は…出来た人間じゃない。取り柄らしい取り柄も無いし、顔がいいわけでも無い。……そんな俺でも、良ければ。……~~っあまり気の利いたことは言えないんだ。告白なんて、されたことも無いし」
「じゃあ、ただイエスと。私はそれだけで幸せですっ!…そ、れ、か、らぁ、私が大好きな人のこと、あんまり悪く言わないで。たとえ本人でも、許さないから!」
「わ、わか……っ」
応えようとしたとき、乾いた唇に、暖かく柔らかい感触が押し当てられた。
「えへへっ……ファーストキスは、心から好きって思える人のために、取っておいたんです。私、幸せっ」
ひよりの笑顔に、アラヤも一瞬幸福を噛みしめるように目を細めた。しかし、彼は目の端に映った物を見逃さなかった。
「………………ねぇ、ひよりさん。〈呪印〉を見せて。ひよりさんの物も、ちゃんと黒くなってる?」
「……」
「っ黙ってないで、応えてよ……っ!」
アラヤは彼女の利き手を取って、その甲を確かめる。
そこにあったのは赤く染まった勾玉の刻印だった。
「――…アラヤ先輩は本当に勘が良くて困っちゃう。一緒になっても、隠し事出来ないなぁ。……幸せなまま、サヨナラしようと思ったのに」
石田ひよりは、今にも泣き出しそうになりながら、それでも懸命に笑顔を作った。
「……っ」
赤く染まった[呪印]を前に、アラヤは唇を噛んだ。
「…助け、られなかった」
女の子一人救えず、自分だけただのうのうと生き残った。彼女のおかげだ。それなのに……。
自分は誰一人、助けられなかった。
「大丈夫です。そんなに気落ちしないで。――あ、部屋をかたづけましょう!ほら、硝子も危ないし、…猫ちゃんの遺体が投げ込まれたせいで、床も汚れちゃってる。私も、手伝いますから!」
部屋をかたづける内、ひよりは覚悟が決まった様だったが、アラヤはまるきり逆のことを考えていた。
自分が片時も側を離れなければ、彼女はまだ助かるのではないか?
いっそこの部屋から出さなければ……。
「粗方片付きましたね。――私はこれから帰って、遺書でも書こうと思います。それだけの時間があれば、ですが……」
空元気のように明るく言って軽く伸びをし、ひよりは自分の荷物を片付け始める。
「……行かないでっ!」
青年はようやくそれだけ絞り出すと、彼女の手を引いて自分の腕の中に抱き留めた。
「あのさ、……絶対、幸せにするから。ずっと、側に居てよ!」
「っアラヤ先輩……。だけど、この呪いからは逃れられない、ってアラヤ先輩もしってますよね?――それに、一緒に居たら巻き込まれちゃうかもしれないのに…っ」
ずっと聞きたかった言葉なのに、今はこんなにも遠い。
この憎たらしい呪いなんてなければ、二つ返事だったのに。それでも、彼女と彼を結びつけたのは、この「呪い」だった。
堪えていた涙が頬を伝った。
「いいよ巻き込まれたって!ひよりさんが連れて行くなら、俺はどこだって……っ」
「…っありがとう。だいすき。――でも、ごめんなさいっ」
割れた窓から、初春の肌寒い風が吹き込んでいた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
石田 ひより : ええっと、終焉表を振るんでしたっけ。
加藤 アラヤ : エンディングの演出する前に決めて欲しいな。ひよりさんの最期ぐらい知りたい。
終焉表(6) > 「行方不明」
その後、PCは行方不明となった。家族はPCの捜索届を出したが、結局、最後までPCが見つかることはなかった。
加藤 アラヤ : 死体は見つかって無いのか。だったら、最後の願いを叶える時に希望がある。
石田 ひより : でも、あと九つの災いを経て、アラヤ先輩が生きてる保証はどこにも無いですよね。
加藤 アラヤ : それなぁ……。
GM : そんなに相方のロストがショックなら、【命運】のマイナス分を肩代わりする[呪印感染]をすれば良かったのに。
加藤 アラヤ : ……この状態で「置いて逝かれた方」って存在に旨味を感じてしまったんですよ。
石田 ひより : わかる。この生き残り方は美味しいよね。
GM : では、エンディングでもその旨味成分をしっかり味わっていきましょう。
[エンディング]
松田アスカは、大学内のとある資料室を探していた。
この棟には、民族学部や文化人類学部が扱う資料が保管されている。医学部のアスカにとっては、普段なら全く縁の無い場所だ。しかし、親友の謎の失踪と、左手の甲に現れたおかしな痣について知るには、ここしかなかった。
目当ての資料室は、廊下の奥まったところにあった。照明が切れかけているのか、薄暗い。
部屋の前で、スーツ姿の男二人とすれ違った。明らかに生徒では無いし、教員でも無い。
(……警、察?)
四階の四番資料室。
手元のメモと表札を見比べて確認した。ここだ。
軽くノックをすると、ドアの内から「どうぞ」と声がかかる。
扉を開け、まず耳に入ってきたのはテレビの音声だった。
「××市××大学の女子生徒、行方不明事件。その続報です。――失踪したのは、石田ひよりさん19歳。警察の懸命な捜査にもかかわらず、現在もその足取りはつかめていません。その姿が最後に確認されたのは、自宅マンションのエレベーター内。現在流れているのは、その監視カメラ映像です」
あれから三週間。
ニュースでもバラエティでも、何度も何度も繰り返し流された映像だ。
大学生の女の子が、一人でエレベーターに乗り込み、ノイズが走ったかと思ったら次の瞬間、忽然と姿を消している。
ネットに流れているフェイク映像が流出したのだとする番組も多いが、松田アスカはそれが真実でないことを知っている。
石田ひよりは本当に跡形も無く消えてしまった。
番組が、失踪当時の服装を確認します、と始めた時、ばち、とテレビの電源が切られた。
部屋の半分は本棚で埋まり、もう半分にテーブルとソファーが置いてある。折りたたみ式の机と椅子も、隅に置いてあるのが見えた。もしかしたら奥に給湯室もあるのかもしれない。
ソファーに座った青年が、テーブルにリモコンを戻す。彼は右手に革製の指ぬきグローブを嵌めていた。
(なんて片方だけ。中二病か…? いや、傷でもあるのかもな)
「――[呪印感染]ってのを調べてる二年の加藤アラヤ、ってアンタ?」
「松田アスカさん、だね。実は、俺は君を待ってた。ひよりさんから、一番の親友だと聞いていたから、きっと〈つぎ〉は君だと、アタリをつけていたんだ」
「待ってた、だって?ちょっと話が見えないんだけど?…てか、アンタひよりのなんなの?」
青年は、手袋をしていない方の左の指で、何故か軽く自分の唇をなぞった。
「……恋人、かな?」
改めて、青年の頭から爪先まで観察する。
肌は青白く、目の下に隈も出来ている。眼鏡の奥の澱んだ眼と、引き結んだ唇のせいで表情は硬い。
あのひよりが、こんな陰鬱な男と付き合うとは思えない。
「…あぁー、わかった!失踪する前、ひよりに付き纏ってた勘違いオタクだ。だから警察も話を聞きに来てたんだろ」
「どちらかと言えばつきまとってたのは、ひよりさん。俺じゃ無い」
「イカれてる。信じらんない。……あの痣のこと聞けるって言うから、わざわざ来たってのに――」
「ひよりさんを探すつもりなら協力してもいい」
踵を返しかけたアスカの言葉を遮り、青年が言う。振り向くと、彼は右手の手袋を外した所だった。
「それに、[呪印]のことを聞きに来たなら、俺であってる。――…俺が『加藤アラヤ』です」
彼の右手の甲には、アスカと同じ勾玉の痣が刻まれていた。
「……アンタ、それっ!?」
アスカ自身も、左手の甲を見せる。
「み、見える、よな…?これ、同じ物だよな!?それじゃあ、アンタもメールをっ!?――…この変な痣が出来てから、妙なことばかりだ!こいつは一体何なんだ!?ひよりが消えたことと、なにか関係があるのか!?…全部、教えてくれ!」
「『[呪印]は感染する』――まず、この仮説は立証されたわけだ。とりあえず、好きに座りなよ。詳しく話そう。…珈琲でいいかな?」
―――――――――――――――――――――― [エンディング] 終了
加藤 アラヤ : お、美味しい~っ……!(号泣)
GM : 『呪印感染』っていうドラマの第0話って感じするね。
それでは[成長]の処理をしていきましょう。
【命運】最大値+5
【能力値】の一つを+1
(SNSでの生存/感染報告は、後日ログを公開した後)
加藤 アラヤ : はい、GM!
[願い]の内容は変えられますか?
GM : 可能です。どう変更しますか?
加藤 アラヤ : 「石田ひよりを取り戻す」
これしか無いでしょう。
GM : 「死んだ恋人を蘇らせる」じゃないところに、狂気を感じる…。
加藤 アラヤ : 俺のひよりさんを勝手に殺さないでもらえるかな?(グル目)
GM : アッハイ。
残念ながらロストしてしまったPCは、今後シナリオに参加することは出来ません。
代わりに、PC製作時に[大切な人]と記入したNPCが、次のPCとなります。
ひより…PL2さんは、次回までに「松田アスカ」のキャラクターシートを作成・成長しておいてください。
PL2 : はーい!
GM : それではこれにて、
呪印感染『最初の災い』
シナリオクリアとなります。おつかれさまでした。
石田 ひより : おつかれさまでしたー!
加藤 アラヤ : おつかれさまでした。
エンドクレジット
加藤アラヤ……色んなタイプの男の子
石田ひより……つつじメーカーβ
マップ……首塚首子様
終