【ドイツ軍プレイヤーから見るバルジ大作戦】作戦級ゲームのミニマムな補給戦略 .3 最終回

バルジ大作戦・前景

 

 考察1では、両軍の戦力減少差をドイツ軍の兵站事情から解釈してみました。

 考察2ではCRTは「相互損害」の確率が高く設定されており、ドイツ軍の戦力減少が意図的に増幅させられている。

 考察1も考察2もドイツ軍には不利に働くシステム構築をされていることが解ります。

 さらには森林内にうねる道路は装甲車両を隘路に迷い込ませ(特に北方第六装甲軍)、深い森には至る所に伏兵が潜みます(地形の影響は大きく攻勢点を作り辛い)。

 アルデンヌの森の神々は、ドイツ軍には微笑まないようです。

 終盤からは連合軍戦闘機が至る所に出没……制空権も抑えられた状況は四面楚歌そのものです。この状況をお膳立てされて、ドイツ軍に勝利ポイントを手に入れて来い!とプレイヤーにドイツ軍を放り投げられるのですから、デザイナーの要求は厳しいの一言です。

 ドイツ軍が優位なのは序盤の戦力差のみ、切り札一枚で彼らはミューズ河を超えねばなりません。ですが……このゲームのデザイナーは「別にミューズ河を越えなくてもいいよ」と悪戯な笑みを浮かべ囁きかけます。

 ドイツ軍が欲しいのはポイントは60ポイント以上。それさえ達成出来れば、ミューズ河渡河は必要ありません。では何が必要でしょうか?

 まずは勝利ポイントを挙げる為の戦力を大事にすべきでしょう。装甲師団は歩兵連隊と共闘し損害を吸収してもらう。このスキルはゲームの常識と化しています。

 問題は機械化部隊のみが行える「第二次移動・攻撃フェイズ」(歩兵連隊は移動・戦闘不可の為、損害の肩代わりが出来ない)です。このフェイズで大事なのは二つ。「第一次移動・攻撃フェイズ」で挙げた戦果を拡大させる、ことが一つ。二つ目は可能な限り装甲師団に損害を発生させない、これが二つ目の要点です。

 手あたり次第に攻撃しても序盤戦力なら、比較的良い結果が得られるでしょう。しかし神(デザイナー)が構築したCRTを避けて通ることはドイツ軍には不可能です。高確率で相互損害を引き起こし、徐々に戦力と体力(ステップ数)を失う泥沼に嵌ります。

 際どいポイント争いを演じる終盤に、攻める為、守る為に使用する戦力自体が瓦解していると、勝利の目前で連合軍に戦線を破壊、蹂躙されゲームをひっくり返されてしまいます。そうなってはアルデンヌの森を突破した意味事体が無くなります。

 その点を踏まえ、第二次攻撃フェイズは可能な限り、自軍に被害を出さない対策を講じるべきです。長期視点(ゲーム終了まで)に立てば、ドイツ軍装甲師団のステップロスを如何に抑えるか、によって中盤以降のゲームの組み立て方に幅が広がる可能性が有ります。

 ドイツ軍装甲師団の1ステップロスは、勝利から一歩遠ざかる事を意味しています。

 ポイントを獲得することで勝敗に決着がつくこのゲームではミューズ河突破は勝敗に意味を齎しません。たとえ、ミューズ河を突破するほどの戦果を挙げてもその後に残るのは突出し過ぎた装甲師団の孤立、もしくは薄く伸びきった戦線です。連合軍は余裕でドイツ軍の戦線を突破し、背後にまわり補給線を寸断。戦線の先端にいる装甲師団はやはり孤立し、各個撃破の憂き目に遭う。こうなるとドイツ軍の壊滅はいとも簡単に想像が付きます。

 ではドイツ軍の基本方針とは…兵站に余力の無いドイツ軍は攻撃に全てを賭けたくなります。突破に次ぐ突破が唯一の勝利への近道に見えます。連合軍の薄い戦線は一押しで壊滅するように見えますし、実際に突破可能です。だから無理押しに攻め立ててしまい不必要な損害を増やしてしまう。これはデザイナーが用意した、ドイツ軍の陥ってしまう”罠”ではないでしょうか。冷静に自軍の損害を計算すべきです。

「10%の差」の意味。CRT(戦闘比選択)は「4:1」が主軸

 戦闘比が「4:1」と「5:1」では相互損害が10%も少ない「4:1」を活用すべきです。

 米歩兵連隊の防御力は「4」、「4:1」の戦闘比にするなら戦闘力は16で足りますが、「5:1」なら20が必要です。   「5:1」の戦闘を4カ所で行う戦力で「4:1」の戦闘は5カ所と1つ多く戦えます。しかも相互損害(引き分け)の確率は「5:1」が約40%、四カ所の攻撃で相互損害期待値は160%つまり4カ所の攻撃で1.6カ所に戦力減少が生じる計算です。「4:1」はどうでしょうか? 「4:1」の相互損害率は約30%、5カ所の攻撃で相互損害期待値は150%、五カ所の戦闘で1.5カ所の戦力減少…これは驚きです。高比率の戦闘比「5:1」よりも低い「4:1」の戦闘比を利用した戦闘がより戦力温存の期待が持てるのです。

 たった10%の差など誤差の範囲だよ、と嘯くプレイヤーもおられるでしょう。確かに確率はただの数値計算で実際の戦闘結果は2D6にかかっています。期待するような戦果は上がらないかもしれません。ですが、全攻撃ターンでドイツ軍部隊は何度の戦いを繰り広げるでしょうか。数十回、いや百幾つもの戦闘回数を数えるかもしれません。戦闘結果は数多くの戦闘結果によって均され確率は平均値に近づいていきます。その10%は勝敗を分けるかもしれない「1ステップの損害」を生じさせない可能性があるのです。私はバルジ大作戦をプレイする以上、この確率は無視できない、と考えています。

 勿論、全ての戦闘で「4:1」の戦闘を推奨するは愚かです。地形の影響や兵力の分散度合いにも関係してきます。過集中せざる得ない場合は「7:1」を選ぶべきです。相互損害率20%強は戦闘比最強です。避けるべき戦闘比は「5:1」と「6:1」ですが、仕方なく使用すべき時もあるでしょうから選択の全否定は愚かです。再度ではありますが、4:1から6:1までのグラフを載せておきます。戦闘に関する判断は十人十色。もしこのグラフがプレイヤーの皆さんの何某かのお役に立つならば、嬉しい限りです。

CRT4;1
CRT5:1
CRT6:1

 他にも歩兵への被害の割振り、二次移動・戦闘時の誰も思いつかなかった特異な戦術も発見されるかもしれません。様々な方法で兵站に余力の無いドイツ軍は戦力を維持しつつ突破を図り、必要量のポイント獲得に成功、若しくは目算が付いたならば、可能な限り戦線を強化して連合軍を迎え撃つ態勢に移行。ミューズ河を突破するのではなく、可能ならばミューズ河を防衛ラインに、それが無理ならば小河川を利用、そしてたった今超えてきたアルデンヌの深い森の地形影響を味方に附けて勝利ポイントを守り抜くのです。

 再び、敢えてまた言いますが、ミューズ河を突破した先にドイツ軍の勝利はありません。そこに生まれるのはギャップの出来たドイツ軍の薄く伸びきった戦線です。アフリカで、ソビエトの凍てついた地でドイツ軍に起きた試練です。電撃戦という たぐい類稀な異常な走破力と攻撃力を有した戦術ゆえのギャップです。その力はドイツ軍将校の血を騒がせたと想像するに吝かではありません。ですが、その全ての戦線でドイツ軍は根本的な問題の解決には至りませんでした。異常なスピードで展開して行くドイツ軍部隊に必要なのは、そのスピードをさらに超える程の展開力を持つ兵站の補充です。量も並ではないでしょう。光のスピードで展開し、溢れるほどの余裕の兵站を持つ補充部隊など存在しません。ガソリンが無くなれば戦車は止まります。弾が無くなれば、兵士は自分の身も守れない。

 デザイナーズノートに鈴木銀一郎御大が”何”をシミュレートするか、について語っておられます。私ごときが口はばったい物言いになってしまいますが、バルジ大作戦で一番シミュレートしたかった事象とは、もしかしたら「電撃戦の弱点」なのかもしれない、とこの考察を書きながら思い至りもしました。勿論、的を得ているはずもありませんし、ただのレベルの低いウォーゲーム好きの世迷言と笑って許して下さると有難い限りです。ただ、私なりに考えた結論でもありますので、これから先もこの「バルジ大作戦」をプレイする度にそのことに関し思索を深めたい、と思います。

支配率(Initiative Line)から見るドイツ軍の攻勢限界。

 レックカンパニー製「バルジ大作戦」の考察もこの章で終了となります。ここでは軽くではありますが、時系列に沿った数値を俯瞰して眺める方法を提示しています。

 謝辞・本来ならば、考察1でお断りをしておくべきことだったのですが、連合軍・第2ターンの増援に指定されている「第82空挺師団」「第101空挺師団」の戦力数値は第3ターンの援軍として集計表には加算をしています。理由は、SW地点へクスと呼ばれる最奥の突破へクスからマップ上に侵入する為、第2ターンでの戦闘参加はおろか戦線構築にも投入出来ない遠距離からの増援である為です。(とは申しましても、重要都市「マルシェ」付近に停滞する両師団は第3ターンのドイツ軍にとって厳しい牽制となっているのも事実ですが…。)説明が後手に回り、大変失礼いたしました。

 さて、話を元に戻します。バルジ大作戦のようにマップ広域に勝利ポイントが点在し、両軍戦力が全域に渡り対峙するゲームにはこのような指標が最適ではないか、とこの数値計算を考案してみました。

 数値換算についての詳細は、下記リンクの別紙に譲りますので、この項では割愛させて頂きます事をお許し下さい。「戦況支配指数」と名付けたグラフを用意しました。

レックカンパニー製「バルジ大作戦」戦況支配率について。

 青がドイツ軍攻撃時の支配率。赤が連合軍攻撃時の支配率です。ドイツ軍の作戦行動、特に初動時の64%強が最大の支配率を示しており、連合軍の膨大な援軍の到着と共に支配率は下降してゆきます。

当然のごとく連合軍の増強はドイツ軍戦力の相対的低下を招き、反比例するかのように連合軍の支配率が高まってゆく……ターニングポイントは第五ターン、英国軍のミューズ河到着による戦力逆転でしょう。支配率から見るとこの当りがドイツ軍の攻勢限界と言えそうです。リエージュを基点とする英国軍がどのように戦線を構築するのか、それもまた一局の将棋ならぬウォーゲーム、いうところでしょう。

 

 では、ドイツ軍が5ターンまでに為すべき作業とは何でしょう? 端的に言いますと、可能な限り連合軍ユニットを除去していく事、これに尽きるでしょう。連合軍の構築する戦線を弱く、薄く延ばすことを強制させる意図があります。それは更なる戦線突破を容易にし、連合軍戦力の減少を促します。連合軍は寸断された戦線の再構築の為、戦線を後方に下げる。戦略的撤退を強制させることにより、勝利ポイントを獲得してゆく。この点は攻勢に出る軍とそれを迎え撃つ軍の対立を描く類のウォーゲームの展開とほとんど同じだと思います。それ以前にどの程度連合軍に損害を負わせるか、によって、またはどの程度の勝利ポイントを獲得し、そのポイントを維持可能かを考慮に入れられて初めてドイツ軍は勝算が立ってきます。

 バルジ大作戦は初期ドイツ軍の持つ「戦力差」というアドバンテージを増幅させない限り、第5ターンで戦線の拡大は止まるように設計されているように思います。ドイツ軍が連合軍前線部隊に無双可能でしたら戦況支配率の数値を変えられる可能性もありますが、あくまで可能性があるだけで、現実的には連合軍の損害値よりも多くの援軍がミューズ河を越えてドイツ装甲軍の前に立ちはだかります。問題は、“その時“が来た時にドイツ軍が守勢の戦線を構築可能かどうか、です。まずは勝利ポイントは稼げているか、もしくは数ターン後には60ポイント以上の上積みが達成できる目算がたつかどうか。そして、手に入れた勝利ポイントを維持可能な戦力が残っているかどうか…ここにかかっています。

 第八ターン以降のサドンデス方式の勝利ポイントはドイツ軍は最終ターンまで同数「60ポイント超」ですが、連合軍は八ターンの勝利条件「35ポイント以下」から各ターン5ポイントから3ポイントの上昇を見せ、勝利ポイントが60ポイントに近づくようになっています。この点も連合軍有利に働きます。侵攻が停止したドイツ軍がポイントを獲得する機会はほとんどない、と言って良いと思います。残念ながら、時間(ターン)すらもドイツ軍の味方ではないのです。

 私見ですが、第五ターンドイツ軍攻撃ターン終了時までに北方第六装甲軍がミューズ河北端の東岸まで辿り付ければ(スパ、ヴェルヴィエを陥落し、N方面の突破へクスを全て抑える),南方のバストーニュ、マルシェ、ヌシャトーを陥落させなくてもドイツ軍の勝利もしくは終盤をかなり有利な状況で展開できるのではないか、と考えています。追加で南方第四軍がしっかりと防御に徹しジークフリート線を連合軍に超えさせなければ、と条件がつくかもしれませんが…。

ただし、全ての結果はダイスの出目次第であることも、バルジ大作戦の考察の纏めとして申し添えておきます。

最後までお読み頂きありがとうございました

 追記。考察2と同様に使用した集計表を下記にてダウンロード可能にしてあります。ご興味のある方はご参照下さい。

 戦況支配率などともっとらしく命名しましたが、計算などしなくともバルジを熟知されているプレイヤーならば感覚的に理解されいることと思います。ですのでおまけとして、一つプラスαをファイルに残しておきました。

 ドイツ軍の希望支配率(例えば50%を維持したいなら”50”を指定セルに入力すると、各ターン終了毎に連合軍に与えなければいけない累積損害(カウンター除去数)を表示する計算式をファイルに同梱してあります。ご興味がありましたら触って頂けると幸いです。

新しいご意見やご感想が有りましたら、小生にフィードバックを頂けますと嬉しいです。今後の参考にさせていただきます。

資料ダウンロードはこちらをクリック ➡ バルジ大作戦・考察3

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