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Storm Over ARNHEM 雑感2 「戦術級ゲームの抽象化」

 景 「追想・ブリンクマン少佐」

*注記 本編に入る前に「雑感1の訂正を……」

 失礼いたいします。本来なら「SOA雑感1」を直接訂正すべきなのですが、個人的にゲームプレイを通しての”気づきの変化”をブログ作成中の時間軸にて残しておきたい、と考えました。これからも本編訂正案件がブログ製作半ばで起きましたら、可能な限り都度訂正文を追加掲載したいと考えております。ご了承下さい。

 さて、雑感1にてエリア式マップの戦略的考察を少々お話しています。

 小生はエリア11をゲーム中で大事な争点の一つであること、エリア11をパイプとして独逸軍を英降下兵の占拠する複数のエリアを攻撃可能である、として序盤戦の天王山として表現したかと思います。

 この意見はもう一歩踏み込みの足りない「思慮に欠けた意見」でありました。

 「該当エリアの攻略には隣接する複数のエリアからの同時アプローチがもっとも望ましい」事が「雑感2」を製作中に気付きました。エリア11が部隊を送り込むパイプとして良い地点である事には変わりはないのですが、「英降下兵が占拠するエリア」周辺の隣接エリアをも含めて抑えて行かないと「エリア奪取」に中々至らないのです。雑感1の「エリア突入」のみ的な戦力投射方法だけでは準備不足が露呈する結果に終わる公算が強く、「隣接エリアよりの射撃」という独逸軍には欠かせない戦術的手段を活用しづらいことに理解が至りました。

注・頻発する単語は略語を用います。ご了承下さい。➡ 略語参照表 

異彩を放つテーマ スピンオフ「マーケットガーデン作戦」

 WW2 をテーマにした作品でこれほど人気のあるテーマは他にないのではないでしょうか。かく言う私も、このオペレーションに関するゲームを複数所持しており、当然ながら時折ボードを広げて楽しんでおります。

 SOAはマーケットガーデン作戦における広域作戦範囲の突端で起きた小さい戦闘に焦点を当てています。ですがSOAのテーマはと全くと言ってよいほどにマーケットガーデン作戦と関係が有りません。

 SOAが扱うテーマは「市街戦」。逃げ道の無い「死兵」と化した英降下兵をドイツ軍が火急かつ速やかに市街地から一掃出来るか? そのスピードを問うシミュレーションです。

 ゲームの流れなどはプレイヤーの手腕により様々あるかと思いますが、テーマに沿った基本的な流れは概して同様の筋道を辿り易いと考えます。そこで異論・反論あるのを承知で各ターン毎の「流れ」を想定してみました。

 各ターンの基本的な流れは、以下、このようになると想定されます。

■浸透戦(序盤・1ターン~2ターン程度)

 重火器を中心とした集中砲火班の編成を行うドイツ兵と、それを阻止する英降下兵の攻防。

■奪還戦(中盤・3ターン~6ターン程度)

 強力な火力を背景にしたドイツ兵と英降下兵の白熱したエリア争奪戦。

■掃討戦(終盤・6ターン~8ターン)

 残余の英降下兵を一つ々々除去してゆく「市街戦」の終局面。

 <掃討戦に入った段階(ほぼ6ターン終了時あたり)でソロプレイでは「ドイツ軍勝利」で決着が着く展開が最近多くなってきました。思い返せば「集中砲火」を選択しないゲーム展開の場合は英降下兵の掃討にも結び付かない結果が多く、その大部分は連合軍勝利で幕を引いていました。>

 上記の三段階の局面が見事に描かれ、優勢と劣勢の間で激しく上下するシーソーゲームの展開がプレイヤーを熱くさせます。

独逸軍・ブリンクマン少佐 / 集中砲火(重火器攻撃)

独逸軍第10SS装甲師団・重火器中隊 / SOAユニットでもっとも高い攻撃力「6」を持つ装甲ユニット2部隊が配備されている。
大隊司令部直属中隊  / 左画像の重火器中隊と同じく「6」攻撃値を持つ装甲ユニット部隊がこの部隊にも配備されている。

 独逸軍の序・中盤の方針はVPエリア奪取よりも英降下兵の戦力を削る努力を優先する戦い方が効果的に感じています。

 勿論、早期にVPエリアを手に入れるに越したことは有りませんが、兎に角頑強に抵抗する英降下兵を、集中砲火で纏めて吹き飛ばすくらいの対応をしないと、終盤に凌がれてポイントを取り損なう展開が独逸軍には多く見られました。地道にVPエリアを一つ一つ奪い取るよりもエリアそっちのけで英降下兵ユニットの塊を高火力でバタバタと吹き飛ばし、更地になったVPエリアに進軍する方がよほど楽に感じます。独逸軍にとって時間は味方ではありません。頑強な降下兵相手にエリアを奪い奪われる地道な争奪戦は瞬く間に兵力とターン数を消費してしまいます。

 重ねて言いますが英降下兵は頑強です。

 局所的に英軍の数的優位がもし確立されたなら質の劣る独逸軍にVPエリア奪取は不可能です。

 では、独逸軍の有利な点とは何でしょうか。

 独逸軍の利点は「数的優位」「装甲車両」。ルールブックには分隊ユニットの他に装甲車両は3ユニットまで攻撃参加が可能と記されています。この攻撃兵力の優位こそSOA内において独逸軍が主張できる点です。

 攻撃参加ユニット数はルール上で上限が設定されている為、AV最大値は重火器車両を中心に据え射撃チームを編成した場合のAV値「17」が最大値となります。これは装甲車両をユニットに持つ独軍の強みです。両軍とも歩兵のみでの射撃チーム編成すると最大AV値は「13」になるようデザインされています。

 AV値「13」も恐ろしい数値です。防御側に不運なダイス№が出ると簡単にエリア内のユニットが複数消えます。非交戦状態のユニットも同様です。英降下兵の反撃能力も脅威なのですが、残念ながら独逸軍に比して兵力が少なく、独逸軍の攻撃に対応する部隊を温存する必要がある為にこういった一斉射撃はなかなか実行しづらいのが現状です。

 独逸軍プレイヤーが「集中砲火」による作戦を指向するならば、東西北のどの方面から攻めるか、攻め口に合わせた初期配置、射撃チーム編成エリアの選定からゲームを始めることになるかと思います。

 AV値「17」の射撃チームを編成するにはゲーム内における最大攻撃値「6」を持つ装甲ユニットを射撃の中心に据えねばなりません。重火器車両はドイツ軍の虎の子です。攻撃力は素晴らしいのですが防御力が低く「対戦車砲」と「盤外砲撃」に最優先で狙われる対象となる事は常々気に留めておくべきと感じます。集中砲火の恐ろしさを熟知している連合軍プレイヤーは隙あらばこの走行車両を潰そうと虎視耽々と狙うでしょう。重火器装甲車両が非戦闘状態で周辺に佇んでいるだけで、英国軍プレイヤーは「盤外砲撃」に慎重になります。大事に使えば必ずあなたの為に力強く働いてくれる装甲ユニットです。おろそかに扱うと罰が当たります。

*特段にAV値「17」にこだわる必要もありません。デザイナーはこの破壊力抜群の集中砲火チーム編成を妨害するユニットもしっかりとデザインしユニットに加えてある為、射撃チーム編成ターンと言えども白熱した展開が約束されています。編成は状況をみて臨機応変に対応することが要求されます。

 既にこの戦術を多用されている独軍プレイヤーは御存知でしょうが、一度射撃チームが完成するとその破壊力の「凄まじさ」に唖然とするほどです。特に「戦術的優位性」を持つドイツ軍は「鬼に金棒」を地で行きます。英プレイヤーの「射撃チーム編成妨害」が失敗し、集中砲火班3班の攻撃が始まると、三か所の市街地エリアが吹き飛ばされて更地になり、二桁以上(しかも非交戦状態のです。)の降下兵分隊が瓦礫の下敷きになることも十分に想定可能となります。

 ブリンクマン少佐はこの集中砲火の効果を痛いほどに知り尽くしています。重火器の火力によって建物を一掃、そして同時に要塞と化した拠点と共に英兵そのものも無力化する……。

 圧倒的な火力で市街地そのものを市街地でない「場所」に変えてしまう。酷く暴力的な判断に感じます。ですが市街戦の対処方法として一つの早急に対応可能な解決策なのでしょう。ちょっとゾッとするほどの解決策ですね。少佐が経験したスターリングラードの市街戦が如何に凄まじかったかを彷彿とさせる状況判断ではないでしょうか。

 重火器による集中砲火が成功し続けると英降下兵陣営は兵力減少が止まらなくなります。特に、3~6ターンの間に絶え間なく続く砲火にフロスト中佐は瞬く間に部下を失い、守備エリアの戦力は極度に薄くなっていきます。

 集中砲火が炸裂すると終盤で英降下兵は全滅することが多々ありますが、凄いことにSOAでは、英降下兵が全滅することはどうやらゲームデザインとして織り込み済みなようです。

 

英国軍・フロスト中佐 / 遅滞・妨害戦

英第一空挺師団麾下第二落下傘大隊A中隊。ユニット下部の数字は左から攻撃力‐防御力‐移動力。右記の独SSよりも防御力が大きいのが特徴。
独第10SS装甲捜索中隊。表示数値の説明は左記と同じ。市街戦における経験値を加味された移動力を持つ。市街戦経験値が加味されていても攻め手である独逸軍の防御力が英降下兵より低い、障害物の多い市街戦では攻め手はかなりのリスクを背負っていることが解る数値処理と感じます。

 英降下兵のフロスト中佐の立場ならどのような戦略をもってブリンクマン少佐と対峙するでしょうか? 

 この段落を書くにあたり、様々愚行しましたが彼らは“死兵”である事に思いが至りました。

 大河橋を24時間守り抜けば地上軍が橋を渡り助けてくれる、と一昼夜戦い、ドイツ軍の集中砲火により防衛拠点ごと仲間がすり潰されて行く……いくら頑強な精神を持つ兵士でも気持ちが持つとは思えません。

 なまくらな人生を送る私のような者には想像すら不可能です。だから、いつの間かに彼らは“死兵”と化した、と考えることにしました。神風特攻隊のような己の死と引き換えに戦う、ことは日本人のみの行動ではない、と思います。死地においては将も兵も、己を将棋の駒のように見做せてしまえるのかも、と愚考します。ドイツ軍のエリア内への侵攻を防ぐ為にたった一個分隊が盾となり全滅するまでそのエリアに留まる……現実にはあり得ないだろうな、と想像してもSOAのシステムでは成立します。もしかしたら現実もそうだったのかもしれません……。

 ブリングマン少佐は、人を人と思えないような攻撃方法で街を灰塵に帰してゆき、片やフロスト中佐は部下に、集中砲火に吹き飛ばされた兵を後目に分隊全滅覚悟の遅滞戦術を敢行させる。人がする所業じゃないですよね。第二次世界大戦で現実に起きた戦闘ですし、戦争という過酷で異常な環境下だから仕方がない、のかもしれません。己の持つ民族性・宗教・国家などの背景がお互い譲れない立場を形成してしまうと個人の命や尊厳など簡単に吹き飛んでしまう…そう感じる恐ろしい話です。

 話が逸れてしまいました。上記でも多少触れましたが、ドイツ軍の重火器が放つ火力の前に、部下を慮りエリアを簡単に撤退すると、早い段階でVPを積み重ねられてしまいます。

  最前線エリアは「集中砲火」により崩壊。英降下兵により要塞化された建物は瓦礫と化し、一帯は何も残りません。凄まじいドイツ軍の攻勢はオーバーキルを発生させ、負傷兵すら残らない場合が生じます。更地と化したエリアには一瞬 空白地帯が生まれたりします。フロスト中佐は攻撃を受けることを承知しつつも該当エリアに兵を投入しないと、さらに奥のエリアまでドイツ軍が浸透してしまう危機に晒されてしまう。などという状況が良く発生します。

 その状況でまま有効な対処法は、一個分隊だけ該当エリアに振り向ける事が効果的なようです。交戦状態になった一個分隊などすぐに除去されるのではないか? と不安に感じるでしょう。ですが、ドイツ軍は英降下兵の執拗な妨害を排除して射撃チームを編成します。たった一個分隊に対してAV「17」は勿論ですが、高火力にまで高めた「集中砲火」の使用は勿体なく、なかなか使えるものではありません。

 先に多少述べましたが、 SOAをプレイしてみて他にも「酷いなぁー」と個人的に感じる設定が一つあります。それは、英降下兵が全滅しても、英国側プレイヤーが勝つ状況が存在する、事です。各ターンにドイツ軍が獲得可能なVPの最大値は「9」、これは英降下兵が全滅・あるいはほぼ盤上に存在しない状況にならないと手に入らないポイント数です。VPを「22」以上獲得しないとドイツ軍は勝利となりませんので、終盤6ターン終了までにドイツ軍VPを「2」に抑えることが出来れば(ドイツ軍が「21」ポイントの場合は引き分けとなります。)7ターンに英降下兵が全滅しても英国側プレイヤーは勝利を得ることが出来る設定になっています。このあたりが英降下兵が最後の一分隊が除去されるまで勝敗が判らないゲーム展開になる所以でしょう。

紙数が尽きてしまいました。今回はここまでとさせて頂きます。

次回は「SOA・CRTを使わないウォーゲーム」と題して語りたいと考えています。

最後までお読みくださり有難うございます。

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