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【フタリソウサ】天野廿三の事件簿 エピソード2【仮想卓ログ】

・はじめに・

 これは『フタリソウサ』の仮想卓ログです。
 同じキャラクターを継続して扱っている、いわゆるキャンペーン二話目となります。
 一話目の初回(分割投稿のため)はこちら
 全部オレ状態なので、多少のぎこちなさはご容赦ください。
 また、同性同士のキャラクターがかなり近い距離で接触する描写が多々あります。苦手な方は無理せずブラウザバックしてください。
・画像について・
 キャラクターアイコンについては、ぴくるーのメーカーで製作したものを使用しています。
 マップ画像は、フリーで配布されているものを使用しました。
 あわせて記事の最後に、クレジットを記載しております。

・プレイヤーキャラクター・

【探偵】天野 廿三 (アマノ ハタミ) 年齢:25歳 性別:男
探偵クラス:マニア 背景:暴走する知識欲
ファッション特徴:手入れしていない髪 
好きなもの:本 嫌いなもの:人間
職業:在宅プログラマー
詳細:
 引きこもりの延長で在宅プログラマーをしている。仕事関係者と直接会うことは少なく、リモートがメイン。
 地頭の良さが露見して少しずつ仕事と関係ない依頼を受けることが多くなってきた。
 過去のいじめ被害や複雑な家庭環境から、自己否定感たっぷりのひねくれ人間に成長した。しかし絶妙に性格が悪く擁護できない部分もある。
 笑い方が変。軽度のパニック障害あり。
 イメージソング「ただ病名が欲しかった/kyiku」
技能:
 洞察>《嘘》《外見》
 鑑識>《情報》《科学》
 人間>《ビジネス》
 肉体>《追跡》
感情:
 気に入った・なし
 気に入らない・信頼したい 気にかけてくれる 助けてくれる 頼らなきゃいけない
        責任取らせてやる 嫌わなきゃいけない 

【助手】牟田立夏(ムタ リッカ) 年齢:25歳 性別:男
助手クラス:情熱の人 背景:放っておけない
ファッション特徴:ノンフレーム眼鏡
好きなもの:天野廿三 嫌いなもの:天野廿三
職業:前回の最後で無事就職しました。
詳細:
 高校を卒業した後、都会の一般的な大学を卒業し一般的な企業に勤める、かに思えたが、昨今の就職難で内定がもらえないまま二年が過ぎた。現在は都会での就職を諦め、地元に帰ってきた。
 学生時代、中高と天野いじめの主犯だったことを気にしていて、彼との再会は自分を見つめ直す良い機会だと思っている。
 最近の悩みは、当時見下していた天野には手に職があり、一般的な進学をしたの自分が無職なこと。
 追記・前回のラストで地元の不動産会社に就職。
 イメージソング「ロストワンの号哭/Neru」
技能:
 洞察>《現場》
 鑑識>
 人間>《社交》《説得》《流行》
 肉体>《根性》
感情:
 気に入った・やっぱりいじめたい 弱いところ 僕の…
 気に入らない・もどかしい 一人で何でも出来る

たまり場
 表向きの探偵:天野廿三
 たまり場の名前:『淡藤荘 202号室』
 どんなたまり場?
   基本的には、天野が住んでいるアパートの自室。
   あるいは、二人がよく使っているテキストチャットアプリのグループ名。音声通話も出来る。

▼たまり場フェイズ

 小学校の頃、僕は女子からかなりモテた。
 学年で一番顔がよくて、足が速くて、頭が良いの三冠王だったから。
 もちろん、だからなんだって話なんだけど、幼い世界で僕はかなり天狗になっていた。
 中学に入ると、自分より運動ができる奴なんてたくさんいたし、自分より顔が良い奴もたくさんいた。その辺は生まれ持ったモノもあるから、簡単に諦め切れたが、頭が良い、というポイントだけは外さないよう、自分なりに努力をしていたつもりだった。

 初めての学力テストで、学年一位をかっ攫った天野廿三とかいう奴と出会うまでは。

 最初は友人として接したかったんだと思う。
 だけどあいつは、どんなに親しい人間に対しても、一定の距離を取って接する。それが僕を苛々させた。
 まるで、何重にも重ねられた分厚い硝子の壁のようで、向こうの景色が際限なく歪んで見えて。
 あーはいはい、できる奴はそういう風に見下すんですね、なんて腐っていたのだ。
 僕はその硝子を、一枚、一枚、丁寧に、――割り砕いていった。
 気がつけば、硝子の向こうに相手は居なくなっていた。最後に残ったのは、むき出しのコンプレックスと、確かに誰かを傷つけたという虚しさだけ。しかも、結局見下していたのは自分の方だった、という倒錯的なオチまでついて。

▼思い出の品選定
 前回の事件で獲得した『写真』

 山の死体事件が一応の解決を見た翌日、昼頃に僕が会いに行くと、天野はまだ寝ていた。
 壊れて音が変なインターフォンを何度か鳴らしたが、反応が無かった。天野じゃなかったら普通に留守と思うところだが、あいつの場合一人で倒れてやしないか、と心配になる。
 そこまで考えて、仕方なく合鍵を使って部屋に入る。
 天野の寝所である押し入れを覗くと、丸まって寝息を立てていた。僕が入ってきたことも気づかず。――…ひとまず異常事態では無さそうで胸をなで下ろす。
 わ、っと脅かしてやろうかと思ったが、ガチでビビられて警察でも呼ばれたらこまる。無理に起こす気にもならず、せめて昼食を作って帰るか、と冷蔵庫を開いた。

 適当に鮭を焼きながら、何の気なしに押し入れを振り返ると、確かに閉めたはずの押し入れが細く開けられていた。
 気味の悪さを感じていると、暗がりの奥で落ち窪んだ瞳と目が合った。

「わっ……!」
 驚いたのは僕の方だった。
「…………インターホン鳴らした?気がつかなかった…」
 幽鬼のように、ぼそぼそとしゃべりながら、押し入れから下りてくると、テーブルに置いたパソコンの前に座る。いつもの定位置だ。
「……びびったぁ…心臓止まるかと思った。鳴らしたよ、お前がよく寝てただけで」
 胸を押さえて、文句を言う。
「疲れてたんだろ。別に良いよ、まだ寝てても」
「…いや、来週までの仕事あるから起きる……」
 目をこすりながら、速やかにパソコンを立ち上げる天野を見て、ずっと疑問に思っていたことを尋ねてみたくなった。
「あのさ、なんでお前はあんな探偵まがいのことやってんの?仕事じゃないし、わざわざ疲れるようなことしなくてもいいじゃん」
「…………」
 天野の中でも具体的な言葉が見つからないのか、しばしあいつの動きが止まった。
「……なんだろう…強いて言えば、好奇心?」
 疑問形にされても困る。
 だが、たしかに納得感はあった。
「……知らない分野の本を読んでるときも、分からない時が一番わくわくする」
 ただし、好奇心は猫を殺す。
 分からない物を知りたくて、首を突っ込んだ先がギロチンだったなんてことにならなければ良いけれど。
「再三言うようだが、無理はするな」
 味噌汁と鮭、白飯を並べて出して、天野に釘を刺す。
 そうじゃなくてもこいつは、大丈夫大丈夫、と言って走り続けて、身体が動かなくなるまで気がつかないような男だから。
「あへへっ……ありが、とう」
 曖昧な笑い方が気に食わなくて、けっ、と言ってしまう。
 今回は、白飯と味噌汁を一通りかき混ぜて、何も入っていないと確認していた。
 何もはいってねぇよ、と怒鳴りつけて縊り殺したくなる。
 ……いけないいけない。

▽たまり場フェイズ シーン終了
互いに強い感情を一つ決定 助手は余裕3点獲得

牟田 : 一周回って、ムカつく、に着地するのは何でだろう。
天野 : そのうち牟田くんに殺される、気がする。
 ボクは「起きられなかった」にしようかな。”気に入らない”方においておこう。……他人が部屋に入ってきたのに気がつかなかった。どんなに疲れていても、普段は絶対に気がつくのに。
牟田 : お、絆されてるな。
 じゃあこっちは「暴走する知識欲」を”気に入った”の方に置いておくよ。感服してる、という意味で。
 あ。ここで僕は【アクション:独占欲】を使用します。
 このセッションの間、探偵と二人きりのシーンが終了するたび余裕が3点増えて、そうじゃないシーンが終了するたび1減少する。
 一生懸命デートの口実を考えないとね。
天野 : なんだか恐いな…。

[ 牟田 ] 余裕 : 0 → 3

▼事件発生フェイズ

「面白いモノを見つけた」
 雨の日。
 出かけた帰りに天野はそう言って、地面に落ちた紙片を拾い上げる。
 コレで三度目だ。
 くしゃくしゃになった紙片を広げて、そこに書かれていることを吟味する。
「なんだそれ」
「…れ、レシート」
「は?ゴミじゃん」
「あぁ……うん…」
「どこが面白いのかよく分からないけど…」
 文字の滲み具合や、紙の濡れ方から、かなり新しいものだとは思うが。ただのレシートのどこがそんなに面白いのか、僕は全然分からない。

 夕方に買い物へ出た帰り。急に雨が降り出して、近くのコンビニで傘を二本買った。
 たらたらしていると、靴と靴下がだんだんと冷たくなっていく。
 僕は天野が渡した1枚目のレシートに目を落とした。

 じゃがいも、にんじん、たまねぎ、豚バラ肉、カレールー、鎌、除草剤

GM/フェイズ管理 : 知ってたカード1 獲得
【困難レベル】1 この時点で「障害」「秘めたる想い」を決定。

牟田 : レシートを拾って歩くな。新手の「異常な癖」かよ。
 秘めたる想い…どうしようかな……。
天野 : 悩んでるね。
 先に障害を決めようかな。

調査の障害表(34) > 世間の眼が厳しい

天野 : は、はぁ…。そうですかぁ……。
牟田 : レシートを拾って歩くのは世間的にも変なんじゃないか。
 ……秘めたる想いも決まったよ。始めよう。

<初動捜査>
使用技能:《天気》
探偵:有利 助手:――
天野 : 有利 3DT(3,4
,7 ) > 成功
牟田 : AS(
5 ,2) > 成功(余裕1点と、探偵から助手への感情を獲得)

[ 牟田 ] 余裕 : 3 → 4

→キーワード①「ビニール傘」

▽シーン再開

「1枚目のレシートは、街のスーパーのもの。…牟田くんはどう思う?」
「まぁ、簡単に見るなら。今晩の献立はカレーで、明日は庭の手入れをする予定なんだろう」
「じゃあこれは?」
 そう言って渡してきたのは、2枚目のレシート。
 これは、近所のホームセンターのものだ。

 ビニール傘、包丁、皮むき器、まな板
 カーテンのランナー、ドライバー、歯ブラシ数点

「……は?なんだこりゃ――……いや、まて。ビニール傘だけはわかる。僕らと同じで、急に必要になったんだ。夕方から夜に掛けて、予報に無い雨が降り始めたから」
「うん。…でも果たして、急に必要になったのは、傘だけかな」
 謎めいた言葉を残して、天野は雨の中を歩き始めた。

▽事件発生フェイズ 終了
天野 : 判定成功分の感情を決めないとね。……「従順」を”気に入らない”に入れよう。
牟田 : ダメなのか、従順。
天野 : ダメ。

▼捜査フェイズ サイクル1 シーンプレイヤー・助手

天野 : 異常な癖 (1D6) > 3 爪を噛む。噛みすぎて血が出る。
牟田 : これはあれが使えるんじゃないか?
”探偵をおとなしくさせる捜査”の6。[異常な癖キャンセル]!
 そういえば、事件発生フェイズは、二人きりのシーンとして【独占欲】の余裕上昇処理をしていい?
GM/フェイズ管理 : どうぞ。

[ 牟田 ] 余裕 : 4 → 7

▽シーン開始

 天野が言うには、この三枚のレシートはどれも関連があるらしい。
「何でそう思う?」
「……なんとなく。カン、みたいなモノだよ。根拠があるわけじゃ無いんだけど…」
 と、伸びてきた右手の人差し指の爪を気にするそぶりを見せる。
 そのまま口元へ持って行くので、僕はその腕を――

<行為判定> 助手のみ
使用技能:《防御》《捕縛》
牟田 : AS(
4 ,3) > 成功(余裕1点と、探偵から助手への感情を獲得)

 ――僕はその腕を掴んだ。
「ん……」
「こら」
「ご、ごめん」
 爪を噛む癖は一向にやめられなかった。
 これから寒くなると、乾燥した唇の皮も剥ぎ始めるので、目が離せない。
 手のかかる子供みたいだ。それとも、わざとやっているのか。僕の気を引くために。
 また爪を囓らないよう、手を繋いでしまう。左手は傘で塞がっているから、今のところは大丈夫だろう。
 天野の手はひどく冷えていた。
「……で、急に必要になったのは、傘だけじゃないって、どういう意味なんだ?」

<行為判定>
使用技能:《家事》
天野 : DT(
10 , 9 ) > 成功
牟田 : ゲスト技能 有利 3AS(
6 , 5 ,2) > スペシャル(余裕2点と、探偵から助手への感情を獲得)

→キーワード②「皮むき器」

「……――もしかして、皮むき器か」
「何故そう思うの」
「2枚目のレシートの中で、これだけ少し浮いている、気がするんだ…特に急いで買いそろえる様なモノでもない、というか……」
 考えながら、横目で天野の表情を盗み見る。
 とたんに、すっと背筋が冷えた。
 まるで、虫かごをのぞき込むような瞳。それが観察なのか、愛玩なのか判然としなくて、底知れなく恐ろしい。
 僕は慌てて、視線をレシートへ戻す。

 思い出した。昔、初めて会った頃も、こいつはこういう目をしていた。この目がずっと僕を見ていた。悪意は感じない。むしろ何か、奇妙な好意すら感じるような視線で、ただ見ているだけ。
 この目で見られると、捕獲された昆虫のような気分になる。
 首筋を嫌な汗が伝った。

 こいつは僕を試しているんだ。

▽シーン終了
GM/フェイズ管理 : 助手⇒探偵へ感情を獲得
 【独占欲】の余裕3点上昇
 二回の判定の内、二つとも助手が判定に成功したため、探偵⇒助手へそれぞれ感情を獲得

牟田 : そうだな。「めんどくさいヤツ」を”気に入らない”に入れておこうか。
天野 : 手を繋がれたのをどう解釈すべきか…。
 癖キャンセルの時の奴は「温い手」を“気に入った”に入れておく。
 その後の行為判定は「頑張ってる」を”気に入らない”に入れておくかな。
 次は、【アクション:フタリソウサ】を使用したいな。重要キーワード『③』を開けたい。
 ”強い感情”に昇華するのは……「温い手」かなぁ…。
牟田 : 珍しく僕の感情が少ないな。
 昇華できるのが「めんどくさい奴」しかない。

[ 牟田 ] 余裕 : 7 → 12

▼フタリソウサシーン

「…つまり、2枚目のレシートから読み取れる人物像は?どんな人だと思う?」
 傘を肩に掛けて、レシートを見直す。
「カーテンのランナーを買っているところを見ると、引っ越したばかりで、おそらく一人暮らし。自炊をする気はあるようだ」
 繋いだ天野の手がぎこちなく固まっている。
 繋いだときは、振りほどかれるかと思ったが、そんなことは無かった。
 こいつのこういうところが分からない。僕を受け入れるようなそぶりを見せたり、かと思えば冷たく突き放したり……。
「おそらくそれであってる。でももっと言うなら、物品は足りているけれど、食品が足りてない。……仕送りでもらえるのが、主食だけみたいなタイプよく居るだろ」
「ウチそれだったな。米だけだった」
「ひひっ…」
 何の気なしに言ったことがちょっとウケた。
「何でそんなことが分かる?」
「さて……何でか、牟田君にはわかる?」
 天野はそう言って、左手で3枚目のレシートを取り出した。

 高枝きりばさみ、取っ手が長い虫取り網

キーワード→③『引っ越しをして一人暮らしを始めたばかりの人間』

▽シーン終了
GM/フェイズ管理 : シーン処理として、互いに対する感情を1つ獲得
【独占欲】の余裕上昇。
牟田 : そうだなぁ、「ぎこちないところ」を”気に入った”に入れておく。
天野 : 悪かったね、ぎこちなくて。
 「分かってない」を”気に入らない”方に入れておく。
牟田 : 相変わらず基準がよく分からん。

[ 牟田 ] 余裕 : 12 → 15

▼捜査フェイズ サイクル1 シーンプレイヤー・探偵

天野 : 異常な癖 (1D6) > 4 喜怒哀楽表
 喜怒哀楽表(2) > 急に怒る
牟田 : 情緒不安定か。
 でも怒りの発露は初めてかもしれないな。
天野 : 怒る。怒るのか……。苦手なんだ、はっきりわかりやすく怒るの…。

▽シーン開始

 3枚目は、2枚目と同じくホームセンターのレシートだった。

 高枝きり鋏に、虫取り網。

「…………え、まったくわからん。ヒント」
「面白い冗談だね」
 天野が目を細めて笑う。
 こんな簡単な問題にヒントなんて無いよ。まるでそう言っているように。
「天野、良い機会だから言っておくけど……お前は人と違うことを自覚したほうがいい。僕はお前と同じモノが見えてるワケじゃ無い。ヒントぐらいはくれても良いんじゃないか?」
「……ダメ、ヒントは無し」
 僕の手の中から、冷たかった天野の手がするっと離れていく。
 傘を持っていた手と併せて口に寄せると、息を吐きかける。
「手厳しいな」
「君だって、1+1にヒントを出せって言われたら困るだろ。――わかんないならもういいよ」
 天野は冷たく言い捨てて、歩みを早める。
「怒ってんの?」
「…………」
「『こんな簡単なこともわかんないのか』って苛々した?…そうだよ、仕方ないじゃん。僕はお前よりずっと頭悪いんだから」
 昔はそれが認められなくて、天野のことが心底気に入らなかった。
 何をやっても見下されてる気がして。
「別に、………」
「じゃあなに?」
「だから…もういいって。……こんなの止めよう。雨の中で…ばかばかしい……意味なんて無いのに…」
「はぁ?お前が始めたんじゃん。急にやる気なくして、もういい、って言われても納得できない」
 数歩前を行く天野の右手を掴んだ。
「痛いっ、放して…!」
 時々天野の言葉と行動はちぐはぐだ。
 今も、痛い、と身じろぎする風だけど、結局本気で振りほどこうとはしてない。
 ずるくて、めんどくさい奴だ。そういう風に言えば、僕が下手に出ること、理解してる。それは正解だよ。
「ははっ…ごめん。……でも、お前が僕を試してるのは分かってるんだよ。だから、せめて答えが出るまでやらせろ。試験官が途中で投げ出して終わりなんて、納得できるわけ無いじゃん」
「…………まだ間に合う、のかな?」
「なにが?」
「……――なんでもない」
 天野はそう言ったきり、目を伏せてまた僕の横を歩き始める。
「――…まぁ、いいよ。ノーヒント上等。それじゃあ、もう一度1枚目から整理して見ていくから、聞いててくれ」

<行為判定>
使用技能:《変化》

牟田 : 良い感じのRPしといてなんだが、技能は持ってない。
 ところで、何が「間に合う」だったの?
天野 : それについては……考えがあるからちょっとまって。ちな、《変化》は持ってないです。

天野 : DT(2,7) > 成功
牟田 : AS(4,2) > 成功(余裕1点と、探偵から助手への感情を獲得)

→キーワード④「1枚目のレシート」

▽シーン再開

「正直言って、この3枚目は意味不明なんだが……。お前の反応を見るに、他の二枚と無関係じゃない。特に1枚目」
「それは何故?」
「この家には、庭があることが確定してるからだ。多分、何か木が植わってるんじゃないか?」
 天野を見ると、続けて、とでも言うように肩をすくめた。
「……残念だけど、今のところ僕が分かってるのはここまで、です…」
「虫取り網は何に使うの?」
「虫を捕まえるためだろ」
「……」
「あんまり露骨にがっかりした顔するなよ、分かっちゃ居るけどやっぱり傷つく」
 多分今の発言は、天野なりのヒントなんだろう。
 それを軸に考えれば何かが見えてくるはずだ。
 ……こいつの目に見えているモノの一端が。

▽シーン終了
GM/フェイズ管理 : 助手⇒探偵へ感情の獲得。
 助手の判定が成功してるので、探偵⇒助手へ感情の獲得
 判定成功で+1 【独占欲】の効果で+3の余裕上昇

牟田 : 「天邪鬼」を”気に入らない”ところ、で持っておく。
天野 : 「がっかりさせないで」を”気に入らない”で。
 追加で【アクション:奥手】を使用したい。
 「はじめての友達」を”気に入ったところ”、で。
 ……多分、最初に声をかけてくれたのは、牟田くんからだと思うんだ。それが嬉しかっただけに、だんだん関係性が変質してしまったのがショックだった、というか。それを思い出して、ね。
牟田 : ぐぅっ、そういう……。
 言ってくれればいいのに。
天野 : 【奥手】だからね。言えないんだ。

GM/フェイズ管理 : 探偵・助手、どちらも行動済みにつき、サイクル1 終了
 余裕-1 困難レベル+1
[ 牟田 ] 余裕 : 15 → 19 → 18 → 17

▼捜査フェイズ サイクル2 シーンプレイヤー・探偵

天野 : 異常な癖 (1D6) > 4 喜怒哀楽表
 喜怒哀楽表(7) > 急にニヤニヤし始める
牟田 : 情緒不安定が過ぎる。
天野 : ごめんね。

▽シーン開始

 天野は、自宅には戻らずに、静かな住宅街の方へ歩き始めた。
 このあたりは戸建てが多く、庭持ちの家も多いようだ。
 内心、答え合わせだ、と思ったモノだが、そこで天野が人差し指を立てて、
「庭持ちで、木が植わってる家なんてどこにでもある。どんな家を探す?――加えて、何故探す?」
 いかにも意味ありげに、にやりと笑った。

<行為判定>
使用技能:《追跡》

牟田 : 追跡は持ってないな。
天野 : ボク、持ってるから、有利とれる。

天野 : 有利 3DT(5,1,9) > 成功
牟田 : AS(3,1) > 失敗

牟田 : ここは僕が成功しなくちゃ意味が無いので、【アクション:食らいつく】を使用して振り直す!
 強い感情にするのは……「天邪鬼」を。
 【食らいつく】使用の振り直し DT(7,9) > 成功(余裕1点と、探偵から助手への感情を獲得)

→キーワード⑤「近所にあるカレーの匂いがする庭付きの家」

天野 : ここでボクも【アクション:膨大なデータベース】を使用する。キーワード⑥も開けてくれ。

→キーワード⑥「何らかの果実を実らせた木」
[ 牟田 ] 余裕 : 17 → 16 → 17 → 15

▽シーン再開

「探すのは、カレーの匂いがする家だ。……木には、木の実か、果物が成っているんじゃないか。この季節で、皮むき器が必要な…もしかして、柿?」
 そういうことか、ようやく繋がった。
 だが、高枝切り鋏はまだしも、自分の家の柿を「虫取り網」を使って採ることなんてあるだろうか?おそらく無いだろう。
 そして、引っ越したばかりで一人暮らしの人間が、庭付きの戸建てに住んでいるとは思えない。
「それじゃあ答え合わせだ」

 閑静な住宅街を歩いていると、雨は小降りになり、やがて止んだ。
 天野は、通りかかる家々の塀によっていって、夕食の匂いがしないか確認していた。
 まったくどっちが不審者なんだか……。
 そのうち一つの家の前で立ち止まると、ぐるりと庭に回り込んで、案の定柿の木を見つけた。
 たわわに実った柿は、いくつかが塀を乗り越えて道路にさしかかっている。これを高枝切り鋏と虫取り網で、という寸法か。

「あっ…」

 天野の声に振り返ると、庭を挟んで向こう側に、リビングのおおきな窓が見えた。カーテンが開きかけて、奥さんか娘かわからないが、女性が立っているのが見える。たぶん、目が合ってしまったんだと思う。
 彼女は、怪訝な表情でそそくさとカーテンを閉め切り、部屋の中へ。
「……ど、どうしよう…」
「どうするも何も……とりあえず、柿泥棒が現れるまで離れて見張るしか」
「警察でも呼ばれたら大事に……」
「それは仕方ないだろ、僕らどう見ても不審者なんだから」
「……」
 天野は、渋い顔で僕の言葉に頷いた。
 僕たちはそのまま、少し離れた角のあたりで柿の木を見張ることにした。
 これで柿泥棒が現れれば、答え合わせも出来て、僕たちの嫌疑も晴れる。

 天野は、3枚目のレシートを拾った時点で、ここまでのことが全て見えていたんだろうか。だとしたら、もはやそれは千里眼だ。
 あいつは自己評価が低すぎて、『他人は誰でも自分より優れているから、自分が出来ることはすべからく誰にでも出来る』という認知の歪みがある。
 冗談じゃない。
 その辺を行き交う人たち全員が、天野と同じ芸当ができるなら、日本はこんなに不景気ではないし、世界大戦など起きなかっただろう。
 それでいて、期待したほど結果が得られなかった時、天野は露骨にがっかりする。――さっきも、何でか怒っていたし。

 やれやれ…、と息を吐いてから、何の気なしに天野の手に触れた。
 さっきまで繋いでいたのに、もうこんなに冷えてる。
 というより、どんなに暖めても、指先から冷えていくような感覚がした。こっちがどんなに温かな情を持って接しても、欠片も伝わっていない様な気がする。
 僕はなんで彼の横に立っているんだろう。本当は要らないのかも。こいつは一人でやっていけるのかも。
「天野」
 呼びかければ振り返る。当たり前だけど。
「ずっと聞きたくて、聞けなかったことがある。――僕は、お前にとってどういう存在なんだろう」
 とっくに日の落ちた暗い雨上がりの夜道。周囲の家屋から漏れる明かりだけが、天野廿三の横顔を照らしていた。

「はっ、へへへ……。なんだ今更」

 それだけ言って、柿の木の家に視線を戻す。
「…実は、ボクにもよく、わからない。憎いと思うときもあるし、恐いと思うときもあるし、許せないと思うときもあるし、嫌いなときもある。……不思議なことにね、最近は暖かいと思うこともある。でもボクは、君を信じたいと思う自分も許せないんだ。……――人間はおかしいね。君は、どうしたいの?」
 人間はおかしい。僕自身も、時間を置いて顧みることでしか、自分の愚かさに気がつけなかった。
「僕は、お前の【隣にいて当然】の人間になりたい。……居ないと逆に居心地が悪いぐらいの。…はは、好かれなくても、信じてもらえなくても良いんだ」
「……全部やり直そうとは言わない。ボクはたしかに傷ついたから。それでも、許さなくても、信じられなくても、…隣にいたいと、思ってくれる……?」
 声が震えている。繋いだ手が、ぎこちなく握り返された。

「お前が、それで良ければ、僕は……」

▽シーン終了

GM/フェイズ管理 : 助手⇒探偵へ感情を獲得
 助手の判定成功で、探偵⇒助手への感情を獲得
 告白の効果により、探偵は「秘めたる想い」を強い感情として獲得。
 そして、お互いに一つずつ感情を獲得。

牟田 : では秘めたる想いを公開します。
 「当然の隣人」
 天野廿三の隣に居ることが当然だと思って欲しい。嫌っていても、信頼されてなくても、隣に居ることが普通で、当然なんだって思って欲しい。
天野 : そうかぁー…どうしようかな。
 まず判定分の感情は「上出来」を”気に入らない”に。
 「当然の隣人」はァ……、そうねぇ…“気に入った”の方においておこうかなぁ……。
牟田 : 僕は「冷たい手」を”気に入らない”方に入れておく。
 告白の効果で獲得する感情は…「自己否定感」も、”気に入らない”に。
天野 : そうか、告白でもう一つ感情がもらえるんだ。…それじゃあ、満を持して「嫌わなくてもいい」を”気に入った”の方に入れておくよ。
牟田 : 今回、”気に入った”方が多くて嬉しいな。
天野 : で、[余裕]を+1d10して、知ってたカードを公開するね。

天野 : (1D10) > 4
[ 牟田 ] 余裕 : 15→19

〇知ってたカード
 1枚目のレシートは推理しなくてもわかる。
 カレーを作るつもりだろう。鎌と除草剤も、家の庭を整備するためのものだろう。何かを庭で育てているのかもしれない。
 2枚目のレシートの内、今日の天気から「①ビニール傘」は急に必要になっただけだろう。急に必要になったのは「①ビニール傘」だけでなく「②皮むき器」もだろうか。
 「①ビニール傘」を除いて「②皮むき器」と残りのモノを見れば、『③引っ越しをして一人暮らしを始めたばかりの人間』だろう。
 3枚目のレシートは不可解だが、「④1枚目のレシート」を会わせ、「⑤近所にあるカレーの匂いがする庭付きの家」を探すことで理解できるはずだ。
 「⑤近所にあるカレーの匂いがする庭付きの家」には「⑥何らかの果実を実らせた木」があるはず。

▼真相フェイズ

「ちょっと君たち」
 張り込みを初めて、十五分ほど立ったかと言う頃。
 背後から突然、声を掛けられた。
「は、はいっ!?」
 驚いて振り返ると、制服姿の女性警官が厳しい表情で立っていた。
「このあたりで、不審な二人組が家の周りをうろうろしてるって通報を受けたんだけど、それって君たちかな?」
「あー…」
 問い詰められて、天野が固まる。
「済みません。僕たち実は……」
 僕は、ここまでの経緯をかいつまんで説明する。
 三枚のレシートを拾ったこと、そこから導き出される人物像と、柿泥棒の存在。
「――だから、僕たちは怪しいモノでは……」
「いや、十分怪しいよ。……でも、害意が無いことは分かりました。念のため、名前と住所を控えさせてもらえますか?」
「牟田立夏です…」
「そっちの顔色が悪いあなたは?」
「……天野廿三」
 天野の名前を聞いた途端、婦警さんは首をかしげた。
「ハタミ?廿三…って、林河山から死体が見つかった事件をたった2日で解決した、”あの”天野廿三?」
「あぁ、軽躁状態だったときの……」
 または、首を突っ込んで引っ掻き回した、ともいう。
 しかし、僕も一緒だったのに、名前さえ伝わっていないとは……。
 それだけで信頼に足るとは言えなかったようで、それぞれ住所は、と聞かれて対応していると、
「牟田くん、あれ…」
 天野が僕の肩を軽くたたいた。
 視線を例の庭木に戻すと、キョロキョロと周囲を伺いながら、柿の木に近づく不審な人影が目に入った。
 年の頃は20かそこらの男性。僕らの読み通り、高枝切り鋏と柄の長い虫取り網を担いでいる。

 柿泥棒!!

 その場に居た三人全員が、あわてて死角になるよう身を低くする。
 僕たちの視線の先で男は、柿に鋏を当て虫取り網で受け止めた。
「おまわりさん、見ましたよね?現行犯ですよ!」
「はっ、そうね?!…――ちょっとそこの君!」
 男は慌てて退散しようとしたが、高枝切り鋏と虫取り網を両手にしばしもたついたおかげで、あえなく確保されていた。

▽真相フェイズ 終了

▼終了フェイズ

「……ボクら何やってるんだろう」
「さぁ。ちょっとした世直し?…なんにせよ、これは善いことだ」
 その後、柿泥棒は名前と住所を控えられ厳重注意、被害者宅にも一応の警告がされた。
 僕たちはというと、お礼として泥棒が盗むつもりだった柿を、いくつかちょうだいした。
 しかし、たった三枚のレシートから柿泥棒を捕まえてしまうとは……。
「天網恢々疎にして漏らさず…」
「なに?」
「天野の前で迂闊なこと出来ないと思ってさ。僕の昨日の晩ご飯さえ、お前にはお見通しなんだろ」
「ボクは、……特別なことをしてるわけじゃない。ただの考察だよ。妄想、と言換えてもいい。――魔法が使えるわけでも、超能力があるわけでもない。誰にでも出来ること、だ」
「でも現に、僕はあのレシートがゴミにしか見えなかった」
「……」
 何故か天野は酷く悲しそうにしたきり、帰路で口を開くことはなかった。

▽エピローグ

「以前君は、ボクのやってることを『探偵まがいの』と言っていたけど、言い得て妙だとおもってさ」
 後日様子を見に行くと、天野はそいういって、こんなの作ってみましたけど、と二枚の名刺を差し出した。
 それは、僕と天野の名刺で『アマチュア調査人/探偵』『アマチュア調査人/助手』と書いてある。裏を返せば、それぞれのSNSアカウントのID。
「ちょっと待て。お前が探偵なのは良いけど、なんで僕が助手なんだ?」
「探偵が良かったの?」
「そういうわけじゃ無いけど……」
 紙質はよく、デザインもシンプルでわかりやすい。
「コレ使うなら、具体的な価格設定とかしないとな。今、金取ってないだろ」
「アマチュアだし…一律五百円ぐらい?」
「よーし、そこに関しては僕が考えておく」
 こいつに任せておくと、小学生の小遣い程度で命を張る羽目になる。
 結局こいつは、やりたいとこだけやっただけで、あとは考えていないのだ。他人任せ、というのもちょっと違う。こいつが放り出したのを僕が勝手に拾ってしまう。
 ……いつかちゃんと、任せた、と託して欲しいけれども。それはどうやら、まだまだ烏滸がましいようだ。
「――っていうか僕、お前にTwitterアカウント教えたっけ?」
「お、…教えたんじゃない?かな?……ちょっといつ聞いたか、忘れちゃったけど。知ってるって事は、教えて貰ったんだよ」
 天野は、あへへっ、と誤魔化すように笑って、視線をそらした。
「…………天野、お前…」
 当然ながら、教えた記憶は欠片もない。どこから割れたんだ?スマホのアドレスか?
 全くこいつは。…油断も隙もあったもんじゃないな。

▽エンド処理
 ・思い出の品/ゲストの獲得
 ・異常な癖の変更
 ・リセットと持ち越し
 ・レベルアップ

牟田 : 思い出の品は柿がいいな。
天野 : 食べたら無くなっちゃうのに……。
牟田 : 種を洗って取っておこうぜ。――今回名前があるNPCが一人しか居なかったから、自動的に金山桃香をゲストにすることになるね。技能はビジネスか。
 異常な癖は…拾い癖、かな。
天野 : …二番の『あの、すみません…嘘吐くのやめてもらって良いですか』と入れ替えるよ。固定台詞って使いづらいな、ってRPしてわかってきたから。
牟田 : じゃあ、次は感情の整理。
天野 : 「はじめての友達」をリセットするのはもったいないけど…仕方ないか。
 強い感情だけ残して、あとは削除するよ。
牟田 : 僕も強い感情…「暴走する知識欲」「めんどくさいヤツ」「天邪鬼」の三つを持ち越しにして、あとは削除。
天野 : 思い出の品が三つだから、今回は技能を一つ取れる。何にする?
牟田 : 僕は肉体技能を取る。…《突破》なら腐らないかな。
天野 : ボクは洞察か鑑識を伸ばそうか。……うーん、《変化》で。

GM/フェイズ管理 : 以上をもちまして、シナリオ『レシート』…あるいは『探偵、拾い喰い』を終わります。おつかれさまでした。
天野 : さまでした。
牟田 : おつでした。

・エンドクレジット・

マップ……おばけの神秘堂
キャラクターアイコン……海ひつじ屋めーかー
本作は、「平野累次」「冒険支援株式会社」及び「株式会社新紀元社」が権利を有する『バディサスペンスTRPG フタリソウサ』の二次創作物です。
(C)平野累次/冒険企画局

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