Continuing to evolve【AMS】
今回の考察は、第二次世界大戦の終盤、1944年9月に決行されたマーケットガーデン作戦をエリアムーブメントシステム(Area Movement System 以下 AMS)を使用しシミュレートしている「MONTY’S GAMBLE(republished by MMP)」を取り上げます。このAMSは言わずと知れた名作ゲーム「アルンヘム強襲(published by AH)」のエリア方式が基礎となり派生しているシステムであり、この趣味に手を染めてる人に知らぬ人はおられないでしょう。ゆえに説明は省くことと致します。
「アルンヘム強襲」はアルンヘム市街のみを扱う戦術級エリアシステムゲームでしたが、このMONTY’S GAMBLEはマーケットガーデン作戦全体を扱う為、作戦級にまで規模を拡大したエリアシステムゲームとなっています。販売元のMalti-Man Publishingでは先述しましたようにこのスタイルをエリアムーブメントシステムと銘を打ち シリーズ化を図っており当ゲームの他、複数の作品が出版されています。ヘキサタイプのマップ仕様と異なりウォーゲームに馴染みの無いボードゲーマ―諸氏にも親しみやすいのではないでしょうか。
とはいえ、親しみ易さを見せる反面、MONTY’S GAMBLEの裏の顔はかなりの強面でもあります。アルンヘム強襲のシステムよりもかなり複雑なルールを擁し 洗練されたAMSを用いたゲームは規模も違えばエリア数も増えた まるっきり別物感が強いゲームに仕上がっている、というのが小生の初感です。
作戦級規模のウォーゲームにおいてAMSが用いられることで戦史や戦争と呼ばれる事象をどのような切り口で私たちの前に提示してくれるのか? また何を誇張し 何を削り取るのか、そしてマップ上にその何かはどのように表現されてゆくのか、を当考察により焙り出して行ければと愚考しております。
では、本編の概説と参りましょう。
まずはマーケットガーデン作戦の主役とも言える三個空挺師団の各担当戦域を切り取り、登場する独逸軍部隊との数値比較、AMSにより切り取られたマップの戦略的影響度などを考察する記事を三稿。そして、最後に総論考察を一稿添えた合計四部作の予定としております。
考察はMONTY’S GAMBLEにおける基本ルールを用いたゲームを対象としています。 Rulebook22.0 THE EXTENDED GAME / Rulebook23.0 OPTIONAL RULE は考察の範囲外としています。ご了承下さい。
構想は上記の通りですが、予定変更が多い小生のブログ記事でありますので、記事の増減・内容の変更(偏向の間違いかも……知れません)が発生しますことを宣言(笑)して本編に入らせて頂きます。
第一稿の舞台はアイントフォーヘン近郊の運河網。
米合衆国 第101空挺師団の空挺降下から始めると致しましょう。
感謝と謝辞。このブログ記事は小生程度の理解の範疇での分析であり、ゲーム熟練者・及び先達の方々には噴飯物のブログ記事ではあると思いますが、ウォーゲームの一つの楽しみ方として 笑ってお許し下さればと願っております。尚、考察記事を書くにあたり「MONTY’S GAMBLE」の日本販売・及び日本語訳ルールブックの提供元であるサンセットゲームズ様にグラフィックアート掲載の許諾を頂く等のご協力を賜っております。
US.101st Airborne Division / Battle of Eindhoven on September 17
<Region101 > Scramble for bridges
クリックで画像拡大可能。黒枠内がUS.101stの担当戦域。ルールにより空挺部隊は担当戦域(紋章の記されたエリア)から離脱は許されていない。
連合軍にとって、マーケットガーデン作戦における第一の関門はアイントフォーヘン(EINDHOVEN / Area63)とその周辺に流れる運河網の突破でしょう。(少なくともMONTY’S GAMBLEではそのようにゲーム上の表現が為されています。)
その第一の関門を突破する為に米第101空挺師団(以下US.101stと表記)はアイントフォーヘンの空へ舞い降りて行きます。彼らの目標は橋梁の奪取と確保を速やかに行う事……地上部隊を可能な限り速やかにライン川北岸に到達させる。一分でも一秒でも早く……US.101stの降下兵たちは作戦に参加した空挺三個師団の中で最も地上軍に近い降下地点での作戦を割り当てられています。それは作戦の成功率と兵士の生存率が他の二個空挺師団よりも高い事を意味します。精強で謳われた空挺師団兵にとって、最もイージーである効果地点に割り振られたことは師団全体の恥と感じる降下兵が存在したかもしれません。で、あるならば誇りに賭けて彼らは作戦行動を完遂させる為に全力を尽くした事でしょう。
余談ではありますが、AMSは一つのインパルスに一つのエリアしか活性化が許されていない為(活性化エリア内のユニットのみ活動が許されるシステム)、ターン性のゲームと違い全てのユニットを複数の課題を処理する為に動かすことが不可能なシステムです。後の章でも取り上げますが、AMSにおけるゲームの心理的圧迫感は非常に将棋や囲碁などのクラシカルなボードゲームに似たものとなっています。両プレイヤーがお互いに考慮する”最重要課題”にしか対応できない。もしくは複数の意図を持った手を探して指さざるを得ない。そのようなプレイアビリティを非常に高める要素、相手プレイヤーの次の手を読む”読み合い”そのもの楽しむ力がAMSにあるように感じます。
話を元に戻します。提示しましたマップは全体の約3/1(Area46 ~Area65)にあたるでしょうか、US.101stの活動エリアを黒枠にて表示しています。考察の為、US.101stの活動エリアに周辺エリアを加えたこの戦域をRegion101とでも呼ぶことにしましょう。
US.101stは活動域内の北上ラインを確保。時を同じくして、マップ下部左のZoneFからこのゲーム第四の主役、地上軍・英 第30戦車軍団(以下、UK.30th Corpsと表記)が矢印のラインを北上しRegion101を抜けて行きます。
US.101stのライン確保に不可欠なのが地上軍をスムーズに進撃させるための運河橋梁の占拠です。Region101に存在する運河橋梁は数えて11(US.101stの活動戦域内のみは9。)に上ります。全ての橋梁を抑える必要はありませんが、迂回するルートが存在しない、または迂回ルートが遠回り過ぎる、等の理由で奪取に不可欠な橋梁はゲームプレイヤーにより選定されて行くことでしょう。この選定は、地上軍の目標到達時間に直接影響を及ぼし、補給の問題とも密接に関係します。ゲームの勝敗を左右しかねない重要な要素でもあるのです。
恐らくは……という表現になりますが、下記の四つの運河橋梁がプレイで重要な占拠橋梁になると思われます。
運河橋梁①「Area63→Area64」
運河橋梁②「Area57→Area54」
運河橋梁③「Area54→Area50」
運河橋梁④「Area50→Area51」
上記4カ所の橋梁の支配を速やかに行う事が、連合軍プレイヤーにとってRegion101での最優先事項になるかと想定します。該当する橋梁にはマップ上に赤○で表示しています。ご参照下さい。
US.101stは降下後、重要攻略地点として橋梁奪取に向かう訳ですが中途半端にアクセスをすると独逸軍に橋梁を爆破する機会を与えてしまいますのでご注意を(RuleBook 19.4 橋の破壊)。さらに注意すべき点は他にもあり、地上軍の進撃路として道路網の確保・活動エリア内に存在するVP獲得エリアの奪取など複数の懸案事項がプレイヤーを悩ませるでしょう。
翻って、第30戦車軍団の進撃に関して強力な縛りがルール上に存在します。ルールブック9.4 道路移動によると、「装甲・機甲・野砲ユニットは道路エリアを1/2MF(移動力)で移動可能……しかし最初から最後までフリーエリア(自軍支配エリア)での移動に限る。」との規定が為されています。この規定によりマップ上端部に記したArea42 には9月17日(第1ターン)には侵入することが叶わないシステムとなっています。Area42はUS.101stと米第82空挺師団のどちらの活動範囲にも収まっておらず、空挺師団には侵入不可能エリアとなっているため、地上軍進撃の露払いが出来ない地域なのです。
結論として、地上軍の進撃初日、9/17(第1ターン)の最高進撃地点はArea47まで、とゲームが始まる前から決定されているのが残念です。
地上軍はRegion101に留まるしかありません……さてゲームデザイナーは9/17(第1ターン)のRegion101にて、何を為せ、と語りかけているのでしょうか?
またまた余談ではありますが、マップ最北端突破(VP獲得以外の勝利条件 「RuleBook 21.1 突破」)に関しては、小生もマップが擦れ切れる程、またはユニットをもつ指先に血が滲むほどに(あくまでジョークですよ。)このゲームを幾度と無く熟したわけではありませんので、「絶対」という強い単語は使いませんが、基礎的な知識や技術をもつウォーゲーマー同士がプレイした場合、どのようにダイス運に恵まれていても9月20日ターンまでに地上軍のマップ最北端突破はかなり難しい、と考えています。その最も強い理由は、Area42 と同様に空挺師団が手を伸ばせない 、いわゆる空白地帯になるエリア(Area18 )がWaal川北岸に一つ存在することを挙げておきます。強く興味を惹かれる方もおられるでしょうが、先の考察に譲らせて頂ければと思います。今はここまで……。
クリックで拡大可能です。
では、UK.30th CorpsとUS.101stはRegion101で何をなすべきでしょうか。僭越ではありますが、小生は3つの処理を推奨いたします。左図はVPエリアのナンバーを白抜き文字で表示しています。
①、アイントフォーヘンを9・17(第1ターン)中に必ず奪取する。マップ白抜きのエリアナンバーがVPのエリア(各1VP)。9月17日中にエリア63を陥落させるとボーナス(追加VP+1)が付与されます。Region101範囲内のVP(ボーナスも含め)を全て押えると5VPを獲得が可能で、これは勝利条件を達成する為の獲得VPの半数に上ります。当然の事ながらRegion101での獲得ポイントが4VPか5VPかで後のゲーム展開に微妙な影を落とします。連合軍プレイヤーはVPのとりこぼしはくれぐれも無きよう注意が必要です。
②、US.101stを展開。効果的な防御線を張る。ゲーム中盤から後半にかけてゾーンG.・H・Iより侵攻するドイツ軍ユニットによりは連合軍の補給線の寸断を狙う可能性が高くなります。とくに、エリア48・49・54・55の西部ゾーンに接するエリアには部隊を展開させ、防衛線を構築しておくべきではないでしょうか。
③、UK.30th Corpsの運用。9月18日ターンに向けて可能な限り部隊を単一のエリアに集中させる。これは非常に大事な案件で、Region101域内へUK.30th Corpsを散開させ過ぎると連合軍は戦力の集中に無駄にインパルスを消費する事態となります。9月18日ターンは、第82空挺師団担当戦域であるナイメーヘン(Nijmegen/Area28)郊外にて部隊の再編成に時間を割かれ、9月19日にようやくナイメーヘンへの第一波の攻勢が始まる、などという事になりかねません。ある程度の部隊の散開は仕方ありませんが、せめて18日ターンにはナイメーヘンへ一撃を加えたい処です。上記の三点は熟練プレイヤーならば、意図せずとも9月17日ターン中に気に掛ける項目ではありますが、より明確に意識することで無駄なインパルスの使用を減らすことに益があるのではないか、と愚考します。
Additional Chapter <Sudden Death Impulse System>
前章にて「無駄なインパルスの使用を減らす」と記載しました。その文意を説明する必要を感じましたので今章を増稿致します。
RuleBook「6.3昼間フェイズ / 12.41日没DRM修正 / 13.7予備の補給」 左記3項のルールに関する雑感とも言える章となります。既知の方々は今章を飛ばして次章にお進みくださってもかまわない内容です。
今章のタイトルはおふざけ半分でつけたタイトルで、実際には存在しないシステム名です。悪しからず。しかしMONTY’S GAMBLEのメインセグメントであるインパルスフェイズ(昼間フェイズ)はある一定の条件を満たすことでインパルス数の増減が意図的に可能であり、また連合軍プレイヤーのDR値によって突然にインパルスフェイズが終了するような偶発性も内包したシステムを採用しています。このシステムは両軍のプレイヤーどちらにとっても”脅威”以外の何物でもありません。なにしろ自軍の想定した作戦行動を完遂させずにターンが終了する可能性が絶えず存在するのです。勿論インパルス数が増える可能性もあり、自軍エリアが想定外の攻撃に晒される、などという場面も増えることになるでしょう。今章のタイトルはMONTY’S GAMBLEのインパルスに絡むシステムの妙を小生なりに一言で喩えるなら……Sudden Death Impulse Systemと表現してみました。あまりセンスが良くなくて、すみません。(笑)
得てして人は何かに取り組む時ほど、熱中すればするほどに時間はあっという間に消えて行くように感じるものです。時間、という概念を”やり残した何か”を用い具現化するならばSudden Death Impulse Systemはプレイアビリティを高め、尚且つ「時感」という観念をシミュレーションとして立派に成立させているのかも知れません。「遂行時間の不足感」を構築するシステムの導入により、連合軍はアルンヘム市街がさらに遠くに感じるようになるでしょう、それは距離の問題ではなく切迫する時間としての焦燥を連合軍プレイヤーに投げ掛けて来るのです。
謝辞・浅学にして、インパルスの増減を伴うシステムの発展の経緯を小生は他に知らずおります。ですのでMONTY’S GAMBLEに関する知識のみでの考察をお許し下されば幸いです。
結果的にプレイヤーは優先度の高い作戦行動にインパルスを割り振って行くことでしょう。最高司令官の立場から空挺部隊の増援を中止させるかも知れません。またある時は、交戦状態の部隊からの空爆要請も震える手で握り潰すこともあるでしょう。時間経過の抽象化であるインパルスシステムは、一定の条件下で日没を迎えターンが終了します。それも恐らく連合軍プレイヤーの想像よりも早く / ドイツ軍プレイヤーの想像よりも遅く……夕闇は訪れます。無常にも多くの問題を残したままターンは終了し連合軍プレイヤーは暗闇の中で道を見失う迷い子のような心持を味わうでしょう。目に付く問題の軽重も考慮せずに適当に処理を重ねていくと 穴の空いた水槽から零れる水のように時間は過ぎ去り、事態は悪化の一途をたどります。先を見据えた、より優先度の高い問題から暫時処理される為に使用すべきで、プレイヤーはマップに展開される状況を的確に捉え、計画的に処理してゆく手腕を問われます。まさにこの辺りが作戦級規模の戦略級ゲームの醍醐味でもあるのでしょう。
ちなみに、ヘッポコプレイヤーの小生はこの計画的な状況把握の才に欠けており、無計画にゲーム展開を壊すことが良く起こります。なかなか一佐には昇格出来ません。(笑)
Army Analysis of Region101
集計A クリックで拡大出来ます。
Region101に関与する両軍の項目別の粗集計表をご覧下さい。ドイツ軍の集計はマース川南岸域(MaasRiver)を東と西に分けて集計しています。連合軍はUS.101stとUK.30th Corpsを表示、計四つの粗集計を用意しました。もともとはブログには記載する予定ではない数表の為、かなり独特な集計となっています。
ゲーム全体のTotalな数値と比べ、よりミクロな意味合いを持つ戦域別Totalとご理解頂ければと思います。尚、数表は部隊の損害を考慮に入れておらず、増援を加算して行くだけの累積表に過ぎないことはお忘れなきよう。
German side / Sacrificial Pawn
集計B *クリックで拡大出来ます。
まずは、両軍の粗集計表をご覧頂きましたが、基礎の基礎となるドイツ軍の戦闘序列も併せてご覧下さい。今章はドイツ軍サイドから光を当てての考察に入ります。戦闘序列は先述しましたようにマース川南岸(MaasRiver)を東西に分け2つの戦闘序列を作成致しました。赤字の集計行は増援日単位の総集計となります。最終行の「集計」行は全体の総集計です。
9/17(第1ターン)は初期配置の部隊のみです。9ユニットが存在します。全戦域との部隊数の割合は23.68%、東部にも1ユニットが存在し2.63%、東西纏めて26.31%の兵数がRegion101に駐留しています。総兵力のほぼ4/1はそう悪い数値ではないように感じますが、皆様の目にはいかが映るでしょうか。3基据えられている高射砲台も内訳に入っていますので地上兵力は7個大隊が最前線を守っている計算です。ただ、東部の1ユニットは主戦場エリアから外れており、どこかのタイミングで西部の部隊と合流するか単独による効果的な作戦行動を起こさないと、無駄になってしまう懸念があります。
そしてMONTY’S GAMBLEにおける……いやマーケットガーデン作戦に巻き込まれたドイツ軍の担当参謀たちの最大の利点は、巨大な河川と運河による天然の要害が味方に付いている、と言えることです。しかしながら最大の問題もまた巨大な河川と運河……この地形影響により軍の集中運用が酷く妨げられてしまうのも事実です。まるで全軍が孤軍と化している、という奇妙な状態が常時発生します。
Region101においても有機的に戦力を集中運用する機会も可能性も少ない中で、時間差による援軍(孤軍が寄り集まる、が正しいでしょうか。)が無計画に集まるばかりです。作戦行動を起こした連合軍が兵力の集中運用を効果的に果たしているのは当たり前ですが、これほどの差がはっきりと付いているのもマーケットガーデン作戦の特徴でしょう。連合軍との彼我の戦力比較は次章にまとめるとして、ドイツ軍の課題は、戦力を如何にまとめるか(「一つのエリアに集める」という意味では無く、バラバラであっても有機的に繋がりがある、という意味合いです。)、に尽きると思います。9/18(第2ターン)以降に西部では都合8ユニットの増援がありますし、東部からも5ユニットの援軍が有ります。特筆すべきは東部9/19(第3ターン)に機甲部隊と機械化歩兵が大隊規模1ユニットずつですが増援されて登場します。強力、とまではいきませんがドイツ軍においては最大級の火力を有する部隊です。
部隊の効果的な運用方法の一つとして、「部隊を適宜に浸透移動(Rulebook8.22浸透移動インパルス)を敢行させる」程度しか活用方法が見いだせないのも事実です。地形が峻嶮、あるいは戦略的に重要な市街の地形影響度は高く設定されていますので(TEM+3や+4など)、浸透を成功させる確立もある程度は高くはなりますが、平地エリアなどは軒並み地形影響度は低く、天候が「晴天」では侵入不可能なエリアも発生します。浸透移動はプレイアビリティの高い優秀なルールです。しかしRegion101の平地の多いエリアでは(運河も多い為、恐らく地形の多くは田園地帯なのではないでしょうか。)活用しきれない、のが現状と言えます。天候が「曇り」になれば多少状況は変わりますが、天候変化の可能性はインパルスを経る度に1/36(約2.8%)~1/6(約17%)と基本的に上がって行きますが、基本的に低確率であり、とても軍事行動を戦略的に計画する段階ではあてにして良い数値では有りません。
残存部隊 Area65に初期配置された空挺兵大隊は本隊から外れ、戦略的にあまり意味のない単独部隊に映ります。しかし連合軍には無視出来ない部隊かも知れません。9/17(第1ターン)はドイツ軍の移動力に制限が掛けられていますので目立ちませんが、その部隊は9/18(第2ターン)のドイツ軍のスタートインパルスにArea42に投入が可能なユニットでもあるのです(ゲームルール的に少々トリッキーな動きにはなるのですが、可能なのです)。ただし、このメインラインから外れたたった1ユニットではArea42を守り切る事は出来ませんしこの単隊の動きでゲームの流れが変わる筈も有りません。しかしこの動きは戦場全体のドイツ軍の行動とリンク出来た時、連合軍にダメージを与えるのに有意な作戦行動に昇華する可能性があるのではないでしょうか。
Allied Side / Queen’s Gambit
集計C *クリックで拡大出来ます。
Region101には、9/17(第1ターン)・米 第82空挺師団(9個降下兵大隊)が降下と同時に地上軍 英 第30戦車軍団(12個大隊相当)の兵力がゾーンFより侵攻を開始します。
合計ユニット数は21、空挺部隊は軽装備の1個師団、地上部隊は機甲、機械化歩兵を含めた4個連隊 1個旅団に軍団・師団規模の砲兵部隊という陣容です。
US.101stは空挺降下を行うために恐らくは軽装備、しかし精強な一個師団です、対する地上軍の陣容は機甲部隊を中心に約一個師団と連隊に旅団と砲兵部隊。地上軍の兵数が些か少なくも感じます。ただしこれは二日目以降、機甲部隊を主軸とした約2個師団規模を超える部隊が後発で登場しますので、分散された地上部隊の増援は道路網混雑による遅延を表現しているのでしょう。陸路移動部隊の総数が総勢3~4個師団規模とは……当時の連合軍がいかに楽観的な予測をしていたのかがわかる気がします。
Where is the focus of the game?
9/17(第1ターン)のRegion101における両軍の戦力比較(下部図参照)を見て頂きましょう。
軽い説明で留めますがタイトル「9/17 Region101」表は当地域の西部域の部隊とUS.101st。
「9/17 Region101+30」表はUK.30thを加算した集計表です。
集計Aより9/17(第1ターン)の数値を抜粋した両軍比較表となります。4色の色分けを用い種別の合計数値を比較する試みです。尚、ドイツ軍東部の集計は省いています。理由は登場部隊数の少なさと西部のドイツ軍部隊とは、「ユニットの意味」について少々ずれがあるのではないか、という小生の判断からです。説明は以降の考察にて。
集計D *クリックで拡大出来ます。
A. Unit’s Count「ユニット数」、B. Attack Value「攻撃値」、C. Defence Value「防禦値」、D. Exhousted Defence Value「疲弊状態時の防禦値」となっています。軽く数値を比較しても連合軍の圧倒的な戦闘力が判るというものです。詳細を述べるよりもさらに見やすくしたグラフを用意しましたのでこちらをご覧ください。左のグラフはドイツ軍とUS.101st。矢印の先、右手のグラフはUK.30th Corpsを加えた数値でドイツ軍と比較しています。
右列のグラフは「9/17 Region101+30」
グラフA *クリックで拡大出来ます。
圧倒的です……とりあえずAttackValueの数値を見ても愕然とします。正直申しますと、これほど戦力比較の数表作成が無意味に感じたゲームデザインも他にありません。
たしかに登場するユニットは戦史と突き合わせても同じような戦力差であるのかもしれませんし連合軍にRegion101を突破させる為に圧倒的戦力差が必要と感じたデザイナーの判断かも知れません。それにしてもこの戦力差のありようは、全くと言って良いほどにドイツ軍プレイヤーにユニットの個々の戦闘におけるシミュレート性とプレイアビリティ性の提供を無視しているのではないでしょうか。AvallonHillクラシックのCRTなら完全に”除去”対象の戦力比ではないか、とも思いました。ゲームデザイナーは何故 これほどまで両軍の戦力に差をつけたのか? 何か意味があるのでしょうか?
もしかすると、両軍のこの戦力差は意図的に抽象度を強めた結果なのかも知れません。つまりMONTY’S GAMBLEにおいては個々のユニットの持つ力の強弱に焦点を合わせていないデザインを採用している……だとすれば、MONTY’S GAMBLEというゲームにおけるもっともフォーカスされているポイントとは一体何処なのでしょうか?
紙数が尽きました。
今回はここまでとさせて頂きます。
最後までお読み下さり、有難う御座います。
次稿では”米 第82空挺師団”の担当戦域「ワール川南岸(Waal River)」を考察致します。