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【マモノスクランブル】「アンラッキーランチ」【仮想卓ログ】

・はじめに・

 こちらは『マモノスクランブル』の半小説風仮想卓ログです。
 全部オレ状態なので、多少のぎこちなさはご容赦ください。
 ルールブックに掲載されているシナリオ『アンラッキーランチ』を使用しています。
・画像について・
 キャラクターのアイコンは、ピクルーのメーカーで作ったものです。
 記事の最後にクレジットとして記載しております。

・今回予告 トレーラーとハンドアウト・

トレーラー
 マモノだって腹が減る。
 便利なアプリで配達を頼んだが、何故か昼食が来ない。
 それなら、こっちから行くまでだ!

 マモノスクランブル
 「アンラッキーランチ」
 これもまた〈東京〉の日々。

シナリオハンドアウト
 拠点でのんびりしていたお前たち。
 昼食を取ろうと思ったが、あいにく食材がなく、近くの店も全部閉まっていた。
 やたらと接続が思い配達アプリを使いプレミアランチセットを頼んだものの……来ない!
 位置情報を確認したら、なぜか拠点から遠ざかる配達員。来ないのなら取りに行くまで!
 よくわからない情熱と空腹に突き動かされ、お前たちは走り出した。

・イカれたクランメンバーの紹介・

名前:
分類名:人狼 出身地:北欧
根源:守護 経緯:取引
クランへの感情:安らぎ 住所:都区西ブロック
マギ:《怪力無双》
能力値:身体/6 異質/4 社会/2
特性:《動物耳》 《悪食》 《長兄》
   《大口》

三兄妹の長兄。十九歳。
献身家の母と、奔放な父を見て育った。
冷酷で暴力的。しかし、弟妹に対しては厳しくも甘い一面がある。
高校を出てすぐ働きに出たので、一般教養は怪しい。

名前:鱗太郎
分類名:蛇人間 出身地:北欧
根源:奉仕 経緯:安心
クランへの感情:尽くしたい 住所:都区西ブロック
マギ:《以心伝心》
能力値:身体/4 異質/2 社会/6
特性:《鱗》 《邪眼》 《学生》
   《毒牙》

三兄妹の次男。十三歳。
母を捨てて別の家庭を持った父を憎んでいる。
兄妹の中では頭がキレる方で、ハッカーのような才能もある。ゲーマー。
兄を敬愛し、妹を溺愛している。

名前:冥子
分類名:アンデッド 出身地:北欧
根源:善行 経緯:
クランへの感情:わくわく 住所:都区西ブロック
マギ:《回生の妙薬》
能力値:身体/2 異質/6 社会/4
特性:《冷たい肌》 《不幸の象徴》 《マスコット》
          《ばらばら》

三兄妹の末妹。四歳。
一歳で〈東京〉へ移ったので、父母の記憶を持たない。
心根の優しい少女で、荒事は苦手。兄二人が大好きで、それぞれ「にぃに」「にいちゃ」と呼んで、いつもべったり。

・クランの日常・

日常表 (1D12) > 12 大通り・町の大通りをぶらぶらしている。

 およそ6年前、〈大停止〉という奇妙な現象をきっかけに、世界は百八十度様変わりした。
 人間とマモノが矛盾無く共存する混沌とした世界。マリョクやマギという摩訶不思議。混沌の坩堝と化した実験都市〈東京〉。

「いつものお店、ぜんぶダメだったね……」
 少年と手を繋いだ幼女が、どこかしょげたように言う。
「仕方ない。冥子のせいじゃない」
 二人の隣を歩く青年が呟く。
「でも、困りましたね。このままじゃ昼食を食べ損ねちゃいますよ」
 三人は歳の離れた兄妹だ。
 今日は休日。午前中に、クランで引き受けた案件を片付け、さぁ昼食だ、と意気込んだはいいが、場所は天下の渋谷、大通り。
 店はどこも大混雑で、普段なら入れる店もおり悪く改装工事で閉店。
「家に帰っても食材無いし、コンビニは割高だしなぁ…」
 一食ぐらい抜いても、と考えた直後、ぐう、と誰かの腹が鳴った。

「……悪い」
「にぃに、おなかすいた? めいちゃんも!」
「僕も!」

 長兄の名前は伏、19歳。
 次男の名前は鱗太郎、13歳。
 末妹の名前は冥子、4歳。
 北欧の森深くに巨女の母と暮らしていたが、3年前に〈東京〉へやって来た。後見人は故あって、”あの”オーディンだった。

クラン:〈ハーフ&ハーフ〉
 拠点:都区西・自宅
メンバー
 リーダー/長子 伏
 ブレイン/次男 鱗太郎
 マスコット/末妹 冥子
 目的:……――――。

・事件への介入・

「兄さん、『Uber Witch』にしませんか?」
 拠点――自宅に帰ってきたはいいが、食材はないのである。鱗太郎が空腹に耐えかねてスマホの画面を提示した。
「同じ割高なら、コンビニよりちゃんとしたご飯が食べたいです!」
「にぃちゃ、うーばーうぃっち、ってなぁに?」

「魔女の箒飛行配達で、どんな場所にも出来たてを30分以内にお届け! 早い! 便利! 美味しい! これぞ文明の利器!」
「わぁ、まじょさんがとどけてくれるの? めいちゃんも、ホウキのってみたい!」
「賛成」
「じゃあ、僕の端末で注文しますね!」
 冥子はともかく、伏も機械に疎いので、こういう時はいつも鱗太郎の役目だ。

「色々あるけど…冥ちゃんはどれがいい?」
「めいちゃんねぇ、めいちゃんねぇ…えっとえっと……はんばーぐ!!」
「ハンバーグだね、おっけー。兄さんは?」
「俺は…――」
「あっ! めいちゃん、やっぱりオムライスがいい!」
「……俺は、餡かけ炒飯と高菜炒飯のセット」
「僕はどうしようかな。……よし、焼き肉弁当とサラダボウル! これで注文するからね。冥ちゃん、もう変えちゃダメだよ」
「はーい」

五十分後

「……遅くないか?」
「ねぇねぇ、めいちゃんのオムライスまだ?」
「お、おかしいな? どんなものでも三十分以内、っていうのが売り文句だったはずなのに」
 アプリで配達員の現在地を確認すると、もう自宅の近くまでは来ていた。――が、何故かだんだんと遠ざかっていく!
「何故!?」
「まじょさん、きてくれないの?」
「この距離なら直接確認した方が早いな。――出かけるぞ」
「僕も行きます、兄さん!」
「あー! まってまって! めいちゃんも! めいちゃんも、まじょさんにあいたい!」

・行動フェイズ1 キャトラれたランチ・

 配達員を探すのは容易だった。
 所在確認のアプリもあったし、すぐ近くだった。しかし、その状況を飲み込むのに時間がかかった。
 大きな荷物を抱えた魔女の配達員と思しき娘が、宙に浮いている。だがそれは、箒に乗っているのではなく、淡く光る円盤状の飛行物体に、スポットライトのように照らされ、浮き上がり回収されつつあるようだ。格納される寸前、彼女が此方に気付き、

「た、たすけ…――!」
 手を伸ばしかけた姿勢のまま、円盤状の飛行物体へ収納されハッチが閉じられた。
 未確認飛行物体は、配達員の魔女を収納すると、どこかへ飛び去ってしまった。

「ゆ、…ゆ……UFOだぁぁぁあ!! 兄さん! 冥ちゃん! 見た!? 今の見たよね!? UFOだよ! UFO!! 僕、ちゃんと見たの初めてなんだ! すごい! UFO!!」
「めいちゃんたちのごはんは?」
「UFOにキャトルミューティレーションされた!」
「めいちゃん、オムライスたべられないの?」
 UFOが去って行った方向と、鱗太郎とを見比べて、冥子が落ち込んだ声で訊ねる。
「……ちょ、ちょっとまってね! すぐ町中の防犯カメラの映像をチェックして、今のUFOがどこに行ったか、確かめるから!」
 鱗太郎は手元の端末を操作して、さっそく調べ始める。

「冥子」
 伏が冥子の目の前にしゃがみ、視線を合わせる。
「お前のオムライスは必ず取りかえしてやる」
「ほんと?」
「俺が嘘吐いたことあるか?」
「ない!」
 元気に頷くと、冥子は伏に抱きついた。

「めいちゃんも、いっしょにいく! おうえんする!」
「冥ちゃんが応援してくれるなら、僕たち百人力だよ!」
 かくして、三兄妹はUFOを追いかけることとなった。

マリョク : 1
目標:UFOをなんとかする
必要進行度:
 アクシデント表(1) > 思わぬ対立
  [判定]で10〜12の出目を1個でも出した場合、【耐久値】を2点減らす。
メイン:冥子 サブ:伏・鱗太郎
 汎用エリア:大通り

 冥子は意気揚々と、UFOが去って行った方向へ、大通りを歩き始めた。その後ろをボディーガードよろしく伏がついて行く。
「こんにちはー」
 毎朝幼稚園へ行くのに同じ道を通るので、お店の人や知り合いが声をかけてくる。そのたび彼女の歩みは止まった。律儀に挨拶をして、ぺこ、と頭を下げていく。

「あらあら、冥ちゃん。今日はどうしたのかしら?」
「ゆーふぉー、おいかけてるの! おばさんはみなかった?」
「UFO? ちょっと分からないなぁ」
「めいちゃんたちのごはん、まじょさんごと、さらっていっちゃったの。にぃちゃも、すまほでぴこぴこしてる! いまね、めいちゃん、き…ききこみ? してるんだよ!」
「そっかー、えらいねぇ。UFOは分からないけど、飴ちゃんあげよう。見つかると良いねぇ」
「わぁ、ありがとう! さようならー!」
「はい、さようならー」

 特性:社会《マスコット》 確認
 使用能力値:【社会】 目標値 : 4
2MS<=4 > [3,9] 成功, [マリョク]が1上がる
マリョク : 1 → 2 進行度 : 0 → 2

「めいちゃん、きこ…きき、こみ、できた! えらい?」
「すごいじゃないか、偉いな」
 伏は愛おしそうに目を細めて、妹の頭をくしゃくしゃ撫でた。
「えへへっ」

メイン:鱗太郎 サブ:伏・冥子
汎用エリア:大通り

 鱗太郎は、およそUFOが通ったであろう範囲の監視カメラに、ハッキングを仕掛けていた。
 タブレット端末に、分割された町中の映像が映し出される。
「ええっと、僕たちが見たのがこの辺りだから……あ、いた! この通りをずっと進んでるのか。どこに行くつもりだ?」

 特性:大通り《監視カメラ》 確認
 能力値:【社会】 目標値 : 6
鱗太郎 : せっかくなので、マリョクを使ってダイスを増やします。
マリョク : 2 → 1
3MS<=6 > [3,5,8] 成功, [マリョク]が2上がる
マリョク : 1 → 3 進行度 : 2 → 4

「兄さん! UFOがどこに行ったか分かりました! 今なら、まだ兄さんの足で追いつけます!」
 伏は一つ頷くと、その姿はみるみるうちに姿を変えていった。
 肌は黒い体毛に覆われ、大きな口には鋭い牙。四つ足の先には鉤爪。その姿は巨大な黒犬――ではなく、大狼だった。
「乗レ」
「めいちゃん、にぃにのこれ、すき! もふもふ! ふわふわ!」
「兄さん、失礼します!」
「掴マッテロ」

 巨大な黒い狼は、鱗太郎のナビのもと、町中を駆ける。
 すぐに未確認飛行物体に追いついたが、その様はまさにフリスビーを追いかける犬のようだった。
 最後に飛び上がり、見事フリスビーをキャッチすると、前足を器用に使ってそれを押さえつけた。
「兄さん、ナイスキャッチです!」
 飛行物体の残骸から、荷物と一緒に魔女の配達員も吐き出される。
「た、助かりました…。あのまま未知の惑星に連れて行かれるかと。――さて、気を取り直して! サービスのご利用、ありがとうございます『UberWitch』です! ご注文の品をお届けにあ――」

 その時、目の前を何かが横切り、配達員の姿が消えた。
 巨大な恐竜だ! 大事な兄妹の昼飯…じゃなくて配達員が恐竜に攫われた!
「わぁあーーーー!! なんでこうなるのぉー!?!?」

「今度はティラノサウルスだぁぁーーー!!」
「まじょさん、またさらわれちゃった!」
「コノママ追イカケルゾ」

・行動フェイズ2 ジュラシックにパクられた!・

マリョク : 3 → 4
目標:大恐竜をなんとかする
必要進行度:
 アクシデント表(5) > 関係ない危機
  [判定]に失敗したPCの【耐久値】を2点減らす。

メイン:伏 サブ:鱗太郎・冥子
汎用エリア:裏通り

 復旧が滞った裏町の一帯を、ティラノサウルスが駆け抜ける。
 それだけで既に、積まれたドラム缶や建築資材が倒れ、騒音を奏でているにも関わらず、恐竜の後ろから黒い狼が、その巨大な口で建材を噛み砕き、ドラム缶を踏みつけながら追いかけていく。
 あまりにも剣呑で、不可思議なチェイスだが、これもまた〈東京〉の日常。……なのだろうか?

「ふ、振り落とされるぅー…!」
「うぎゅ〜〜…!!」

特性:裏通り《ドラム缶》《建築資材》 身体《大口》 確認
使用能力値:【身体】 目標値 : 6
伏 : マリョクを使ってダイスを増やす。
マリョク : 4 → 3
3MS<=6 > [3,5,5] 成功, [マリョク]が3上がる
マリョク : 3 → 6 進行度 : 0 → 2

「すごい! もうこんなに追いつきましたよ、流石は兄さん!」
「めいちゃん、はやすぎて、おめめ、あかないよぅ~…!」

メイン:冥 サブ:伏・鱗太郎
汎用エリア:裏通り

 黒い毛皮を掴みながら、冥子が恐る恐る顔を上げると、建材や段ボールの破片が頭上をかすめていく。その前方を、巨大な恐竜の後ろ姿が駆けている。
「わぁ……にぃちゃ、このまえ見た、えーがみたいだね!」
「冥ちゃん、危ないから頭下げて!」
 鱗太郎が頭を抑える直前、何かが冥子の顔面に激突した。
「うぶっ…!」
「冥ちゃん!? ほらもう、……言わんことじゃない」
「いたかったよぅ~…!」
「怪我してない? 血は出てないみたい。痛かったね。――ぶっちゃけ、冥ちゃんは何故かいつもタイミングが悪いから、絶対何かぶつかると思ったよ……」

特性:異質《不幸の象徴》 確認
使用能力値:【異質】 目標値 : 6
冥子 : マリョクを使ってダイスを一つ増やします!
マリョク : 6 → 5
3MS<=6 > [4,6,6] 成功, [マリョク]が3上がる
マリョク : 5 → 8 進行度 : 2 → 4

「にぃちゃ、ぶつかったこれ、なに?」
「これは……建材のロープ! 奴を捕まえるのに使えるかも知れない!」
「いいこと? めいちゃん、おてがら?」
「うん、お手柄もお手柄! さすがは僕たちの妹だ!」
 鱗太郎はそのまま、伏の背からその立ち耳に話し掛ける。
「兄さん、このまま恐竜の横に付けてください! このロープでふん縛ってやりましょう!」
 かくして鱗太郎の想定通り、黒い狼は恐竜の横を併走し、その間に背に乗った二人が力を合わせ、ヤツに縄をかけることができたのだった。

「あ、ありがとうございますぅ…!」
 ようやく落ち着いて地上に降ろされた魔女の配達員は、泣きながら頭を下げた。
「なんとお礼をしたらいいか。本当に、これでようやく私も配達を終える事が――」
 どっと疲れたが、これでようやくランチにありつける……といいのだが。

マリョク : 8 → 9

・解決フェイズ ゲットバックランチ!・

「再三の仕切り直しです。――サービスのご利用、ありがとうございます『UberWitch』です! ご注文の品をお届けに上がりました! お品もの、確認させていただきますね」
 魔女の配達員は大きなリュック――岡持を脇に置いて中身を確認する。
「あ、来るとき保温の魔術をかけておいて良かった。崩れてないし、まだ暖かい」
「めいちゃん、オムライス!」
「はい、お子様ランチのオムライスが一つと、焼き肉弁当とサラダボウルですね」
「やれやれ、これでようやくお昼ご飯ですね!」
「それから…メガ盛り餡かけ炒飯のランチセットが一つ、同じくメガ盛り高菜炒飯が一つ――あれ? 注文間違いかな? ……そうか、シェアするんだね! 取り皿要るかな、紙のしか無いんだけど」
「間違ってない。二つとも俺の分だ」
「あ…(察し) 失礼しました。では、お間違いないようでしたら、お支払いは……――」

 その時だった。
 爆音と共に周囲が光に包まれ、すさまじい風が押し寄せる。
 土煙が晴れると、そこには体中にタトゥーを入れた男の姿があった。男は配達員の娘を捕まえ、

「ハーッハッハッハ! 都合良く人質が手に入るたぁ運が良いぜ!」

 魔術テロリストである。
「しかも、飯がたんまりありやがる! ちょうど腹が減ってたとこだ、これは俺が食ってやるよ!」
「ちょっ…! ダメダメダメ! これ、お客さんのだから」
「あ゛ぁ? 人質が呑気に喋ってんじゃねぇよ! ぶち殺されてぇのか?」
「ひん……(泣)」

「…なんだこいつ」
「きっと魔術テロリストですよ! 今朝から街が騒がしかったのは、この人のせいに違いありません!」
「めいちゃんたちのごはん、たべちゃダメなの! とどけてくれたまじょさん、困らせるのもダメなんだよ!」
 冥子はそう言いながら、てちてち、と配達員とテロリストに近づいていく。
「なんだぁ、このクソガキは。よほど死にたいらしいな」

「冥子!」
「冥ちゃん、危ない!」
「ふぇ?」

 テロリストの男が手をかざすと、中空に魔法陣が展開され、振り返りかけた冥子目掛けて、紫の光線が照射された。
 破壊光線がコンクリートを砕き再び土煙を巻き上げる。その刹那、冥子の小さい身体がちぎれ吹き飛ぶのが見えた。
「俺様の名前は、ヨッコドル! 泣く子も黙る超弩級魔術テロリスト、ヨッコドル様とは俺のことだ! この街を更なる混沌に陥れてやるぜ! ヒャーッハッハッハッハ!!」

「……いたい」

 啖呵をきったヨッコドルを後目に、土煙の中から幼女の声がした。
「いたいよぅ…めいちゃん、まだなんにもしてないのに、なんでこんなことするのかな……? もしかして、おじさん、わるいひと、なの?」
 土煙の中に、彼女のシルエットだけが浮かび上がる。
 左腕がちぎれ、胴体に大穴が空き、脚はおかしな方向へ歪み、首が皮一枚で肩のあたりからぶら下がっている。
「ひっ…! な、なんだコイツ!? ば、ば、バケモノ!」

「……お前、〈東京〉に住んでいるんだったら、アンデッドぐらいでガタガタ喚くな。――そんなことより、ウチの妹泣かせた落とし前、どうつけてくれるんだ?」
 重く低い声で凄む伏。
「お前、生きて帰れると思うなよ」
 狂気的な怒りに目を見開く鱗太郎。
 土煙の残滓が漂う中、2人の輪郭が不気味に揺れた。次の瞬間そこに居たのは、巨大な黒い狼と、車さえ飲み込んでしまえそうな大蛇だった。
 実のところ、これで慌てるのは冥子のほうだ。
「にぃに! にぃちゃ! やりすぎ、いくない! めいちゃん、いたいのも、いたくするのもヤダよぉ!」
 残った手を一生懸命振って、兄二人を制止しようとしている。そのたび身体が揺れて、皮膚と筋でかろうじて繋がっている首が、ぐらぐらと揺れた。

「はは…あははっ! わかったぞ、お前等の正体が! 狼に大蛇、半死半生の娘。まさしく神話に語られる、黄昏をもたらす神の兄妹! 〈東京〉に来ているとは聞いたが、ここで会えるとはな。相手にとって不足無し! かかってこいや、ガキ共ォ!!」

――――――――――――――――――――――――――

「はい、もしもし、雷門。……――は? すまん、もう一回言ってくれ」
 雷門透は、〈東京〉のいわゆる神企業の一つ、ネットワーク管理会社〈フギン・ムニン〉に勤めている。
 彼がこの電話を受けたのは、ちょうど取引先との打ち合わせを済ませ、遅めの昼食を取るためにコンビニへ立ち寄った時だった。
「……アイツらがぁ、町のど真ん中でぇ、魔術テロリストとドンパチぃ? え、なんで…? ――はぁー……。わかった、あとはこっちがなんとかする。とにかく、今すぐ周囲の住民に注意を呼びかけてくれ。あの二人がやたらめったら暴れたら〈東京〉が潰れかねん」
 電話を切ってから、移動してる間に食べられるものを買ってコンビニを後にした。
「これ、無視して帰ったら俺の監督不行き届きになるんだよな。……だぁーっ! ちくしょー! トラブル起こす頻度だきゃあ親譲りなんだからもー!」

――――――――――――――――――――――――――

ロケアクション
終了条件:ヨッコドルのノックアウト
エリア特性:電柱・自販機・通行人
マリョク : 9

イニシアチブロール
ヨッコドル : 固定 7
伏 : (ころころ) 9
鱗太郎 : (ころころ) 10
冥子 : (ころころ) 10

行動順
鱗太郎、冥子→伏→ヨッコドル

――ラウンド1 鱗太郎――
サブ:《攻撃のヒラメキ》 特性:《電柱》
メイン:《得意技》
鱗太郎 : 1D12+5 > 11
[ ヨッコドル ] 耐久力 : 70 → 59

 道中の電信柱を引きずり倒しながら、大蛇がヨッコドルに肉迫する。大きく口を開いてまさにその毒牙を突き立てようとしたが、標的の小ささが仇となったか、鱗太郎の鋭い牙は致命傷を与えることは出来なかった。

エリア特性:電柱 破損 マリョク : 9 → 10
――ラウンド1 冥子――
冥子:〈手番放棄〉します!

「ダメダメ! ふつうの人とか、お店やさんをこわすのはダメ! またトールくんに怒られちゃうよ! ……で、でも悪い人は、やっつけたほうがいい、の? あれ? あれあれ? ぅう~っ…! めいちゃん、どうすればいいかわかんないよぅ!」

――ラウンド1 伏――
サブ:なし
メイン:共通マギ《得意技》
伏 : 1D12 > 4
[ ヨッコドル ] 耐久力 : 59 → 55
マリョク : 10 → 11

 鱗太郎の攻撃を避けたヨッコドルに追撃が迫る。しかし、第二の牙もあっけなく避けられてしまった。
「…っと! あぶねぇあぶねぇ。やっぱただのガキじゃねぇよな。油断してたらかすり傷じゃすまねぇぞ! 蛇の坊主の毒は、常人なら普通に掠っただけで死んでるし、狼の兄貴の方は、普通に厄災レベルじゃねぇか! だが、こっちもやられてばかりは居られねぇなぁ!」

――ラウンド1 ヨッコドル――
サブ:《二段作戦》 マリョク:-2
メイン:《全力攻撃》 標的:
マリョク : 11 → 9
ヨッコドル : 1D12+9 > 18
伏 : 《防御のヒラメキ》 特性:自動販売機
[ 伏 ] 耐久値 : 20 → 7

《二段作戦》
 メイン:《全力攻撃》 標的:鱗太郎
ヨッコドル : 1D12+9 > 17
鱗太郎 : 《防御のヒラメキ》 特性:通行人
[ 鱗太郎 ] 耐久値 : 20 → 8

 ヨッコドルは、口の中で呪文を唱えると、冥子を吹き飛ばしたのと同じように手をかざして、伏と鱗太郎に魔術砲を発射した。それは、容易に蛇の鱗を貫き、狼の脚を千切った。
「ハーッハッハッハ! 見たか、ガキ共! いくら図体がデカかろうが、統率の取れていないお前たちに後れを取る俺様じゃねぇってことだ! 大人のやることに口を出すからこうなるんだよ! 覚えときな!」

「……今の、めいちゃんにやったのと、おなじ魔法?」

「あ? だったらどうした、お嬢ちゃん(笑)」
「ねぇ、おねがい、あやまって! めいちゃんたちにあやまって。あれ、とってもいたかったの。だから――」
 冥子は、服を結んだりありものを使って、ばらばらになった身体をどうにか支えて、一生懸命に訴えた。だが、もちろんそれは受け入れられない。
「はぁ?? 何言ってんだ、このガキァ! また魔術砲喰らいてぇのか? いくらアンデッドとはいえ、そう何度も喰らって”生きて”居られると思うなよ?」
「そうなんだ。おじさん、やっぱり悪い人なんだ……」
 首を支える布が緩まって、頭が前方に傾く。あたかも、落胆したように表情に影がさした。
「めいちゃん、いたいのヤダけど、――……にぃにたちが痛いのは、もっとイヤなの」

――ラウンド終了/開始――

――ラウンド2 冥子――
サブ:共通マギ《ベースチェンジ》
冥子のイニシアチブ:9 マリョク:10
メイン:共通マギ《得意技》

「みんな、おきゃくさんだよ」
 魔術砲でひび割れたアスファルトから、無数の手が這い出してくる。それらの肌は全て土気色で、まさしくゾンビ映画さながら。腐臭を撒き散らす無数の手は、次第にその実態を露わにしながら、ヨッコドルに取り憑き始めた。
「くそっ! …くそったれ! 何度蹴散らしても切りがねぇ! なんなんだこいつら!」
「ハハハッ…コノ時代、”ヴァルハラ”モ”ヘルヘイム”モ、死者ノ魂デ満杯ダ! 少シバカリ溢レモスルダロウ!」
 大蛇が大口を開けて笑った。
「めいちゃん、ほんとはこんなことしたくない。みんな、たたかうためにいるんじゃないのに……」

冥子 : 1D12 > 9
[ ヨッコドル ] 耐久力 : 54 → 45
マリョク : 10 → 11

――ラウンド2 鱗太郎――
サブ:なし メイン:《得意技》
鱗太郎 : 1D12 > 9
[ ヨッコドル ] 耐久力 : 46 → 37
マリョク : 11 → 12

 死者がのたうつ海の中を大蛇が泳ぐ。
「オ前、足下ニバカリ気ヲ取ラレテイルナ! 隙ダラケダゾ!」
「ぐっ……!」

――ラウンド2 伏――
サブ:共通マギ《マリョクで回復》
耐久値→19(7+12) [ 伏 ] 耐久値 : 7 → 19
メイン:同《得意技》
マリョク : 12 → 10
伏 : 1D12 > 7
鱗太郎 : マギ《以心伝心》宣言 ダメージ+7

「テメェ等、この程度で調子に乗りやがって! ナマいってんじゃ――」
 手をかざし、魔術砲を放とうとしたヨッコドルだったが、それは叶わなかった。
 右手の手首から先がなくなっていたからだ。
「あ、…が………手、てぇ……俺の手、――俺の手がぁっ!」
 歪な断面からは真っ赤な血が噴き出し、体中に掘られた魔方陣のタトゥーを濡らしていた。

「知ラナカッタカ? 強者ノ右手ハ、俺ガ喰ウ事ニナッテイル」

 血生臭い吐息にヨッコドルが顔を上げると、皮肉げに血塗れの牙を剥いて嘲笑する狼と目が合った。
「ひぃっ……!」

[ ヨッコドル ] 耐久力 : 37 → 25
マリョク : 10 → 11

――ラウンド2 ヨッコドル――
サブ:《二段作戦》 マリョク:-2
メイン:《全力攻撃》 標的:冥子
マリョク : 11 → 9
ヨッコドル : 1D12+11 > 22
[ 冥子 ] 耐久値 : 20 → 0 [ノックアウト]

《二段作戦》
 メイン:《全力攻撃》 標的:
ヨッコドル : 1D12+11 > 18
[ 伏 ] 耐久値 : 19 → 1

「てめぇら、よくも…――! よくも! よくもォ!! 死ね! 全員しねやぁ!!!」
 恐慌状態に陥ったヨッコドルは、残った左手で魔術を行使し、例の魔術砲を乱射した。それは今度こそ冥子の肉体を粉々に吹き飛ばし、伏の頭を打ち抜いた。

――ラウンド2 終了――
冥子 : マギ《回生の妙薬》 宣言
 耐久値 : 0 → 20

「また…? またなの? もうみんな、ぼろぼろだよ? ね、もうやめよ?」
「なんで、なんで生きてんだよ!? もう喋んな!? 死んどけよ! この…化け物がぁぁあああ!!」

伏 : 《スクランブル!》 宣言!
マリョク : 9 → 2
伏 : 1D12 (1D12) > 4
鱗太郎 : 1D12 (1D12) > 11
冥子 : 1D12 (1D12) > 3
[ ヨッコドル ] 耐久力 : 25 → 9

――ラウンド3 開始――

――ラウンド3 鱗太郎――
サブ:なし メイン:《得意技》
鱗太郎 : 1D12 > 12
[ ヨッコドル ] 耐久力 : 9 → 0

「ははっ、ばけもん……ばけもんだよ。てめぇら三人とも、生粋の化け物だ! この〈東京〉にも、破滅をもたらしに来たんだろ!? 女神達の予言――『神々の黄昏』を!」
 死者達に取り押さえられたヨッコドルは、三兄妹を口汚く罵ったが、状況は好転しなかった。
「〈東京〉に来たとき、俺たちはかつての名を捨てた。もう予言の通りに生きるつもりはない」
 人の姿に戻った伏が、コートのポケットからナイフを取り出し、ヨッコドルの首筋にひたと当てた。
「俺たちの平穏を邪魔するなら、死んでもらう」

「あー…、待って待って!」

 騒動の間、物陰に隠れていた配達員の娘が顔を出し、慌てて駆け寄る。
「まじょさん!」
 冥子の生首が表情を明るくする。鱗太郎が回収した他の部位と一緒だった。
「……誰?」
 伏が鱗太郎を振り返る。
「『Uber Witch』の配達員ですよ。ほら、最初に人質にされてた」
「あぁ…」
「規模はともかく、そいつがやってる事ってケチなチンピラと変わんないし、君たちが手を汚す必要ないよ。もうあとは警察とかに任せてさ、せっかく無事に届けたんだし、お昼──って、もう晩ご飯のほうが近いかな? みんなで食べなよ! ほら、まだ暖かいからさ!」
 配達員の魔女は、大きなリュックのような岡持ちを軽く叩いた。
「めいちゃん、さんせい!」
「…」
 兄たちは顔を見合せた。
 もちろん、姫の言葉に逆らう理由もない。決まりだった。

・終幕&クローズ・

 かくして、三兄妹は自宅に帰り着き、ようやく落ち着いて食事にありつくことが出来る。
「ただいまー!」
「冥ちゃんの身体を繋ぐの、三人でやると結構早かったですね。いつも兄さんと二人だから、少し手間取っちゃうんですよ。手伝ってくれて、ありがとうございました」
「いえいえ、それほどでも~! バラバラになったままなの、可哀想だったからねー」
「ね、ね、まじょさん。ご飯たべるとき、めいちゃんのとなりにすわって」
「えー、冥子ちゃんの隣、座って良いの? やったー! 一緒にご飯食べようねー♪」

「――おい、お前。何勝手に人ん家、上がり込んでんだ」
 険のある声で威嚇するのは、長兄の伏だった。

「…はっ、僕としたことが! めちゃくちゃ自然すぎて違和感を覚えられなかった!」
「まぁまぁ、細かいこといいじゃん。私も被害者なんだよ? お弁当用意してたのに、食べ損ねちゃったんだ。一仕事終えて気分よく食べようと思ってたのに」
「めいちゃん、まじょさんといっしょにご飯たべたい!」
「やだ、かーわーいーいー! 私も冥子ちゃんと一緒にご飯食べるー!」
 宅配員の娘――魔女の灯火は、冥子を抱きしめて頬ずりした。

「……くっ。どうしますか、兄さん。あの女、僕らのテリトリーで、僕らの冥ちゃんに無遠慮にべたべたと! 処します!? 処しましょうか!?」
「ちょっと待て」
 伏は、しばし鼻の頭にしわを寄せて、灯火を睨み付けていたが、
「冥子が気に入ってるんじゃしょうが無い。追い出すのは辞めてやる。ただし、二人に何かしてみろ。……命は無いと思え」
「シスコン、こっわ……。いや、この場合ブラコンも込みなのかな? ――分かってるよ、大丈夫! 別に、軒先借りて母屋まで、なんて思ってないからさ。しばらくは近場にいるつもりだから、困ったことがあったらなんでも言ってよ。対して何も出来ないけど、命を助けて貰った恩ぐらいは返したいんだ」
「あれ? 思ったより、いい人、なのでは……?」
「簡単に信用するな、鱗太郎」
「ごめんなさい、兄さん!」
「ねーえー、はやくご飯たべよ? めいちゃん、おなかとせなかがくっついちゃうよー!」
「じゃ、さっそく広げよっか。テーブル借りるねー」
 やがて、それぞれが注文したメニューと、カトラリーが全員の手元に行き渡った。

冥子 : 「いただきまーす!!」
鱗太郎 : 「いただきます!」
伏 : 「いただきます」
灯火 : 「いっただきまーす!」

クラン:〈ハーフ&ハーフ〉
 拠点:都区西・自宅
メンバー
 リーダー/長子 伏
 ブレイン/次男 鱗太郎
 マスコット/末妹 冥子

 目的:…… 天命に抗うこと。

 これもまた〈東京〉の日々。

――セッション終了:リザルト――

GM : マリョク、耐久値のリセット
 セッションに参加した各PCと、クランは強度+10点

PCの成長
 新しい[特性]を一つ獲得、5以下の能力値を+1
クランの成長
[特性]を一つ増やす


 追加特性:異質《反骨精神の塊》
 上昇能力値:異質(4+1)5

鱗太郎
 追加特性:身体《毒牙》
 上昇能力値:身体(4+1)5

冥子
 追加特性:異質《死者の主》
 上昇能力値:社会(4+1)5

エンディング

アイコン
 伏…禄の男子メーカー
 鱗太郎……おさむメーカー
 冥子……(し)ょうじょめ~か~

おわり

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